星降る夜のセレナーデ 第96話 突然のメール
自宅に帰ってもなんか落ち着かなかった。
携帯にメールが届く、見ると清水アリサちゃんだ。
『こんばんは、まだ起きてますか?』
『はい、起きてます』
『実は困った事になってて……』
『どうしたんですか?』
『電車で寝てしまって、高崎なんです』
『大丈夫ですか?』
『もう熊谷まで戻る電車は無いんです』
『よかったら、迎えに行きましょうか?』
『本当ですか?凄く助かります』
『すぐに出るけど、一時間ほど掛かるかもしれません』
『ありがとう、待ってます』
俺は急いで着替えると、高崎へ向かってロードスターを走らせた。
アリサちゃんからはたまにメールが来ていた。アリサちゃんのDVDは、合計3枚、音楽を作った。俺にとって、とても大切な仕事となった。
部屋の壁にはサインが入ったDVDが3枚飾ってある。
俺が初めてプロの作曲家として、仕事した作品だ。
最近アリサちゃんは女優も目指しているらしく、ドラマなども出演しているらしい。俺はテレビを見る暇がないので、どんな感じか見たことがない。
高崎に到着したので電話した。
「もしもし、今駅前のロータリーにいます、オレンジのオープンカーです」
「はい、すぐに行きます」
アリサちゃんが車へ小走りでやってきた。
「ありがとう、助かります」
「とりあえず乗ってください」アリサちゃんを助手席に乗せるとドアを閉め走り出す。
「真人さんって、こんな車に乗ってたんですね」アリサちゃんは車を繁々と見ている。
「普段は軽トラックですけどね」俺は笑った。
「そうなの?」アリサちゃんは何度も瞬きした。
「今日は慣れない女優の仕事で疲れちゃったんです、そしたら寝過ごしてしまいました」唇に力が入っている。
「そうですか、お疲れ様です」俺は微笑んだ。
しばらくアリサちゃんは仕事の話をしていたが、ふと俺の方を見てポツリと言った。
「いつもメールするのは私からですけど……………もしかして………迷惑してます?」心配そうに聞いて来る。
「そんなことはないです、迷惑なんてしてません、嬉しいです」
「そうなんですか?……………でも…………積極的じゃないんですね………」
「えっ?」
「私にはあまり興味が無いってことですよね?」
「えっ?」
「御免なさい、変なこと言って」
「…………………」俺は何と言って良いか分からずにいる。
「最もすぐに食事とか誘われたら困るんですけどね」そう言って笑った。
「ごめんんなさい、俺、そういうの苦手なんです……………」
「そっか、やっぱり真人さんは真面目なんですね、安心です」こちらを見て微笑んだ。
自宅近くへ到着したので、彼女を下ろす。
「ありがとうございます、助かりました」アリサちゃんはペコリと頭を下げた。
「また俺で協力できる事があったら、いつでも遠慮なく言って下さい」
そう言って手を振り、車を走らせた。アリサちゃんがずっと手を振っているのがバックミラーに映る。
俺は誰かの役にたつということは嬉しい事だと思った。そして志音ちゃんも手伝って俺の役に立っている事を嬉しいと思っているんだろうかと思った。