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隠れ家の不良美少女 144 ブルース

高崎から奏太くんと本庄のKKステージへ移動する。
奏太くんはコスプレサークルの子達と軽く打ち合わせして本庄早稲田駅から帰って行った。俺は児玉の希和の家へと辿り着く。
車からギターケースを引っ張り出す。
「友希さん、おかえりなさい」希和がいつものゆるい笑顔でむかえてくれた。
「ただいま……」俺の自宅じゃ無いんだけどなあと何となく思っている。
「あっ、ギターだ」希和は嬉しそうにケースを見た。
「随分弾いて無いから弦が錆びてると思うぞ」
「そうなの?」
ケースを開けてみた、やはり弦は少し錆びている。
俺はケースのポケットから予備の弦を出して張り替えチューニングした。

「ジャラーン」Gibson J-45は久々にいい音を響かせる。
「いい音だねえ」希和は何度も瞬きした。

「これが普通のコード、『ジャラーン』そしてこれがセブンスコード『ジャラーン』どんな感じだ?」
「なんか不安な感じ」
「そうだな、ブルースは黒人達の辛い労働歌だったから圧迫感があるんだ」
「そうだね、なんか重たい感じがする」
「そして3っつのコードで繰り返される」俺はブルースのスリーコードを弾いてみせた。希和は眉を寄せて聞いている。
「そしてブルースで使える音階がブルーノートさ」俺は弾いて聞かせる。
ゆっくり弾くと、希和はその音を声で出す。
俺はブルースの3っつのコードを弾きながら、ブルーノートで「らららら〜」とアドリブで歌った。
希和はしばらくすると音階を理解したようで、声を出し始める。
希和と二人でしばらくブルースセッションをした。

そこへ希美子さんが帰ってきた。
ニッコリ微笑むと『ルルラ〜』アドリブで参加してくる。
しばらく3人でセッション大会になった。

「友希さん、何となくだけどブルースの音階が分かったような気がする」
「流石、和也さんと希美子さんの娘だね、普通はすぐに飲み込めないが、感じ取ってしまうんだね」俺は感心した。

「ブルースではクラシック音楽で使っちゃいけないことをやってる、だから重たく、しかも繰り返される、でもそこからポピュラーな音楽に変わると、凄い解放感があるんだ、それも音楽の醍醐味だと思うんだ、最もこれは叔父さんからの受け売りだけどね」俺は少し笑った。

「そうね、和也さんもそんな事言ってたわ」希美子さんは頷く。

「希和もギターを教えてほしい」俺を見た。
「そうね、ギターが弾けるようになったら楽しいかもね」希美子さんも頷いている。

俺は希和にギターを教えることにした。

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