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隠れ家の不良美少女 180 お引越し

ウイングのオフィスではみんながひしめき合っている。
バンドのメンバーや未来ちゃん、俺とキナコ、匠真くんとプリンちゃん、そして友里香さん。

奏太くんは頭を抱えている。
「どこかもう少し広いとこへ引っ越すしかないか、これじゃあ編集どころじゃないよ」

「そういえば、うちのマンション広めの3LDKが1つ空いてるよ」匠真くんがポツリと漏らす。
「えっ、マジ!」奏太くんが食い付く。
「うちならバンドのメンバーとか喫茶の方で打ち合わせとか出来るんじゃない?」
「いいねえ」奏太くんは何度も頷いた。
「勿論飲食代はキッチリ頂くけどね」匠真くんはニッコリしている。

「最近匠真のパパやママを見ないけどどうなってるの?」奏太くんが不思議そうに聞いた。
「両親は今伊豆にいるんだよ、俺と凛とアルバイトでお店はなんとかなるから」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「伊豆で父親の夢だったワインを作るために葡萄園を始めたんだ、将来お店の名前が入ったワインを出したいらしいよ」
「なるほど…………だから最近見なかったんだ」奏太くんは納得した。

「友希さん、うちなら喫茶の駐車場に車を停められるからいいんじゃないですか?」
「それは凄く助かるなあ」俺はニッコリ匠真くんを見る。
「それに、こうして打合せに来なくても良くなるし」匠真くんはニヤリとした。

「いいわねえ」友里香さんも置き場のない書類の山を見ながら言った。

「じゃあ、匠真の所へ引っ越そう」奏太くんは決断した。
「「「「やった〜!」」」」全員喜んだ。

「プリンちゃん考えてくれた?洗剤のCMの件」
「はい………」決めかねているようだ。
「匠真くんは今夜の一品は考えてくれた?」
「はい、いつもやってる事なんで良いですよ」
「えっ?何それ?」凛ちゃんは匠真くんをチラッと見る。
「いつも凛に作ってる一品の料理を写真に撮ってレシピをやるんだ、出版社が決まったら本になるかも」ニッコリした。
「ええ〜!ユーチューブでも匠真さんの人気が上がってるのにますます人気が出たら心配」不安そうな顔になった。
「問題ないんじゃないの?匠真くんは凛ちゃん一筋だし」友里香さんはすまし顔で言った。
「そうなの?」凛ちゃんが不安そうに匠真くんを見た。
「もう凛を一人にしないって言ったじゃないか、信用してないのか?」
「そうだよね…………でも忙しいのにもっと仕事を増やすの?」
「ああ………まだ大丈夫さ」

「そんなにお金には困ってないよね」凛ちゃんは不思議そうだ。

「凛ちゃん、相続税ってわかる?」友里香さんが聞いた。
「いえ?」
「もし匠真くんのご両親からお店やマンションとか相続したらすごい額の税金が請求されるのよ」
「そうなの?」凛ちゃんは匠真くんを見る。
匠真くんは何も言わずにただ頷く。

「私、洗剤のCM頑張ります」凛ちゃんは唇を噛んだ。
「ありがとう、じゃあ話を進めるね」友里香さんもニッコリ微笑んだ。
俺は友里香さんをマネージャーにして正解だったと思った。

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