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隠れ家の不良美少女 61 希和の父

翌日指定された喫茶店へ父の車を借りて向かう。
希和は不安そうだ。
お店に入ると、髪に白さが少し見える紳士が強張った笑顔で手を振っている。
「「こんにちは」」二人で挨拶をした。
コーヒーとジュースを注文してその紳士の前に座る。
「達也くんの息子さんだって?」
「はい、父を知ってるんですか?」
「ああ、昔ライブで異常なフアンに絡まれた事があって、助けてもらったよ」
「そうなんですか……」

しばらく沈黙が有って、彼は思い切ったように言葉をかけた。
「希美子さんはお元気ですか?」
「はい、母は元気です」
「希和子ちゃんか……」彼は優しい目で見ている。
「勝手に歌ってごめんなさい、でもあの歌を歌いたかったんです」希和は涙をうかべる。
「ごめんよ、こっちこそ何もしてやれなくて」彼も涙を浮かべた。

また、しばらく沈黙が過ぎる。
「もしかしたら……希美ちゃんは産んだかも知れないと思った、しかし確かめられるような状況になかったんだよ、本当にすまなかった」彼は深々と頭を下げた。
「私は最近まで知らなかったんです、でもやっと母が話してくれました」
「そうですか……」
「お母さんはいつもあの歌を聴いてました…………」
「………………」
「愛美ちゃんから連絡があって、動画を見たよ、声を聞いて直ぐに希美ちゃんの娘だと分かった」
「そうなんですか?」
「ああ、声がそっくりだったからね」
「えっ?希美子さんの歌声がそっくりなんですか?」
彼は不思議そうに俺と希和を見た。少し頷くと。
「彼女も昔は歌手を目指してたんだ、でも曲が作れるわけじゃ無いから上手く行かなかったらしい」
「そうなの?」希和は不思議そうに瞬きしている。
「いつか二人で歌おうって言ってたけど、実現しなかった……」
「そうなんですか……」
「だから彼女の作る衣装はとてもアーティストの気持ちを理解した衣装だったよ」
「なるほど……分かるような気がします」
「お母さんが希和の歌を聴いたら、私の子供だと分かるって言ってたのはそう言う事なんですね」
「ああ、とてもいい声だったからね」
「俺はお父さんの声をもらったのかと思ってました」
「私はそんないい声じゃないよ」少しだけ笑った。
「でもC Dはいい声ですよね」
「随分加工された声だからね」
「じゃあ、私の声はお母さんに似たんですか?」
「ああ、そっくりだよ」微笑んだ。
「そうなんだ……」希和は少し嬉しそうだ。

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