見出し画像

隠れ家の不良美少女 182 希和の報告

久々にアートシンクの立道さんから電話があった。
「今度発売するゲームのコスプレをキナコさんにお願いしたいのでお会い出来ませんか?」
「現在キナコには新しいマネージャーが付いていますので、紹介します」
「そうですか、それは楽しみです」
「来週の空いてる時間をメールで下さい」
「了解しました」

俺は友里香さんに報告する。
「そう、じゃあまた年間契約を頂けるかしらね」
「どうだろうね」
「資料を見たけど………今回はあの金額じゃあ無理よ、他の会社との事もあるし……」
「ただ……アートシンクさんの協力があったから今のキナコがある事も考慮して欲しいな」
「そうね、それもわかってるわ」友里香さんは頷く。

ウイングは急遽引っ越しした。
新しいオフィスはかなり快適だった。
希和はすぐに喫茶オータムへ行き、プリンちゃんにデザートをねだっている。
匠真くんは「まいど」そう言ってにっこり出してくれた。
希和のデザート代は経費として上がってくるようになる。
友里香さんは「必要経費よね」そう言って了承してくれたようだ。

明日は配信の日なので児玉に帰ることにする。
「友希さん、なんか落ち着かないね」希和は車の窓から外を見ながら呟く。
「そうだな…………」
「ねえ、武道館が終わったら私を彼女にしてくれる?」
俺は少し考えたが断る理由は既に無くなっている。
「ああ、そうしよう」
「やった!じゃあそれまで頑張る!」希和は元気になった。

希和は児玉に帰ると早速希美子さんに報告する。
「お母さん、武道館が終わったら私友希さんの正式な彼女になるの!」満面の笑みだ。
俺は「やっぱりか…………」心の中で呟く。

「そうなの?友希さん大変ねえ」希美子さんは苦笑いする。
「どうして友希さんが大変なの?」希和は不思議そうな顔をした。

「だって…………秘密にしてあげたらよかったのに」
「えっ?…………ああ…………」希和は自分が言ったことの意味を今わかったようだ。

「友希さん…………」切なそうに俺を見た。
「なんだよ…………」
「怒ってない?」
「………………」
「希和、友希さんが優しい人でよかったね」
「うん…………」希和は眉を寄せて俯く。

その夜、希和は珍しく抱きつかないで、俺に背中を向けて眠った。

いいなと思ったら応援しよう!