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水の生まれる夜に 53 恋の奴隷

「ねえ土鈴さん、もう寒くなってきたから一緒に和室で寝ましょう?」

「えっ、……カラカラ……」顔を横にふって土鈴の真似をしながら不安そうな顔をする。

「大丈夫、おそったりしないから」

「いや、その台詞は男が言うはずの……」

「もう付き合ってるから二人で寝てもいいでしょう、お布団は別だし」

「そうですよね……付き合い始めたんですよね」

「そうよ、一分一秒を忘れちゃいましたか?、時間は無駄に出来ませんよ」

「そうですね、美人薄明って言いますからね、綾乃さんは美人だから心配です」

「じゃあ今夜から和室で一緒に寝ますよ、お布団こっちに持ってきてください」

「はい」リビングの畳の上から、布団を抱えて和室へ持ってきて、少し離れて敷いた。

それを見た綾乃さんは自分の布団を押して僕の布団にくっ付ける。

「近づかないとあったかく無いでしょう!」口をとがらせた。

「はい……でも……」

「聞き分けがないとお風呂も一緒に入りますよ!」

「はい分かりました、横でくっついて寝ます」

「じゃあ、お風呂を先に入ってきて」

「はい、行ってきます」すごすごと下へ降りていく。

僕がリビングへ戻ると綾乃さんがお風呂へ降りていった。
和室に並んだ布団を見て緊張してしまう。
室内に僕の心臓の鼓動が響き渡っているような気がする。
おいわずパソコンを立ち上げ、キスのエチケットを検索した。

「何やってんだ僕は…………」我に帰ってパソコンを閉じた。

リビングに戻ってきた綾乃さんは可愛らしいパジャマで、少しだけ顔が熱っている、それを見て僕はぶるっとふるえてしまう。

「寒いしお布団で話そう……」綾乃さんは身支度を整え布団に入る。

「はい……」僕も布団に入った。

しばらくこれからの事を話していたが、綾乃さんは「寒い」そう言って僕の布団へ入ってきた。

「えっ……おそわないって言ったじゃないですか」心細そうな声を出してしまう。

綾乃さんは低い声を出して、おっさんのモノマネで「こうして欲しいんだろう」と僕の胸をさすった。

「やめて!くすぐったい……」僕は布団の中で身悶える。

「ほれほれ」さらに続けた。

「分かりました……分かったから」肩で息をする。

綾乃さんはまるで指図するように目を閉じた、僕は決心して目を閉じ唇に少し力を入れ綾乃さんに近づく。柔らかい綾乃さんの唇にたどり着くと思わずうっとりした。
髪や肌から香る甘い香りに誘われるように綾乃さんの肩に手を回した。彼女は少しだけピクッとしたが、唇を少しだけ強く押し付けてきた。

「…………………」

僕は限界を感じて離れ、大きなため息をついた。

「よく頑張りました」そういうと僕の胸に顔を埋めた。

「すみません………………」

「いいの………………」

外でフクロウが「ホー」と鳴いた、何故か少し恥ずかしい。

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