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隠れ家の不良美少女 145 そっと離れた。

一通りブルースの講習が終わると、希和がじっと見ている。
「友希さん、何か忘れてない?」
「えっ、何だっけ?」
「もうっ!桜子さんに聞かせたブルースの歌は希和には聞かせてくれないのね」希和はブスッと頬を膨らす。
「ああ、それね……やっぱ歌わないとダメ?」
「「ダ〜メ!」」希和と希美子さんは二人で首を横に振った。
「期待されるとやりずらいんだよね……」俺は渋々ギターケースのポケットからブルースハープ(ハーモニカ)とボトルネックを出す。
ギターのチューニングをオープンEにしてボトルネックで弦をスライドさせた。
『グイ〜ン♪』スライドギター独特の音が室内に響く。
ハーモニカスタンドを首にかけて、ギターを弾きながら歌えるようにした。

希和も希美子さんも大きく瞬きしながら見ている。
「♪You’re walking ♪ down the street♪」ブルースの名曲を歌う。
間にブルースハープを入れ、スライドギターをかき鳴らした。
「♪Oh my baby ♪♪♪〜〜」

緊張の5分間が終わった。

二人からの力強い拍手が部屋に響く。

「友希さん凄い!日本人じゃないみたい」希和が溢れそうに目を見開く。
「凄いわ、本物のブルースって感じ」希美子さんも頷く。
俺は背中に嫌な汗をどっぷり掻いた。

「桜子さんが好きになったのもわかる気がする、だって新鮮な衝撃だもん」希和が何度も頷いた。
「そうね、インパクトが凄いわ」希美子さんも深く頷いている。

「叔父さんがアメリカでブルースにかぶれたお陰だけどね」俺は少しだけ笑った。

それから三人で食事をする。当然のようにお酒とつまみも用意された。
「ギター弾けるようになったら楽しいだろうなあ」希和はニコニコしている。
俺は背中の嫌な汗をお風呂で流した。

希和はいつもの様に布団の中で抱きついてくる。
「桜子さんもきっと聞いてたと思うな」
「そうかな?」
「きっと天国から来て聞いてたよ」
「じゃあ、まだここにいたらどうする?」
「えっ………」希和は俺の体からそっと離れた。
俺はクスッと笑った。

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