隠れ家の不良美少女 25 心の部屋
一日まったり友希さんと過ごして家へ帰ってきた。
「ただいま、お母さん」
「お帰りなさい、どうだった?」
「うん、友希さん元気になったよ」
「そう、良かったわね」
「うん………」
「どうしたの?」
「寝言で『桜』って言ってた」
「そう…………」
「桜、来てくれたのかって…………泣いてた」
「そうなの」
「でも、誰なのか聞けなかった」
「そう、聞かなくて良かったかもしれないわね」
「そうなの?」
「人に入ってきて欲しく無い心の部屋を持ってることもあるわ」
「そうなんだ……」
「相手に求めるばかりじゃなくて、広い気持ちで受け止めることも必要よ」
「よく分かんない」
「そうね……何も言わないで、寄り添うことも大切なのよ」
「うん………」
私はお母さんにも心の部屋があるのかなあと思った。
「ほら、見てごらん」母さんは作りかけの衣装を見せてれくれた。
「すごい!綺麗!」
鱗のような戦闘服が作られている。
一枚一枚丁寧に鱗が光沢のある布で縫われていて、中にビニールの芯が入れてある。とても手間がかかっている。
「お母さんすごいなあ……衣装ってすごいね」
「うん、でも衣装は着ている人を引き立てるものよ、だから希和も歩き方やポーズとかしっかり頑張った方が良いわよ」
「そうだね、頑張る」
翌日コスプレサークルに行った。
作っている衣装や剣と盾などをスマホに撮っていたので見せる。
「ごめんなさい、勝手に何のコスプレをやるか決めちゃって」
「良いのよ、好きなのをやるのが楽しいんだから」美奈さんが微笑んでくれた。
「凄い!『マリン戦士アクア』をやるのね」詩織さんがスマホの画像を覗き込んで驚く。
「えっ!『マリン戦士アクア』のコスプレ?」慌てて美奈さんも覗き込んだ。
「「うわっ!!」」
作っている途中でも明らかに完成度の高さが予想できる状態だ。
「さすが、関東衣装から仕事が来る訳だ」
「お母さんが衣装は着ている人を引き立てるものだから、歩き方やポーズをしっかり教えてもらいなさいって言ってました」
「う…………私達も頑張ってサポートしなきゃあね」
「うん、責任重大になってきたね」美奈さんと詩織さんは腕を組んで頷いた。
「それから、近くの公園で二人にレッスンを受ける。
「じゃあ早速歩き方の練習よ、この線の上を真っ直ぐ歩いて、そうモデルさんみたいに」
「はい」
「そう、そこで泊まってこっちに微笑んで」
「はい……難しいなあ」
私はフラフラしながらひたすら歩く練習をした。