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水の生まれる夜に 73 ポチった物

 夜遅くになってハイヤーで送られ、別荘に帰ってきた。
綾乃ちゃんは起きて待っている。

「お帰りなさい!ねえパパと何を話してきたの?」

「うーん……綾乃ちゃんのヘタレを今後どうするかって話」

「えっ、ウソ」

「はい、嘘ですよ」

「もう!!!それでなんの話?」

「ああ、綾乃をよろしくって」

「そうなの、で、なんて答えたの?」

「無理ですって」

「え〜……ウソ!」

「もちろん、頑張って幸せにしますので見守ってくださいって言って来ましたよ」

「良かったあ〜」綾乃ちゃんは両手を広げて抱きついた。

「ねえねえ、いつ頃結婚するう」俺の胸の中で綾乃ちゃんが聞いて来る。

「そうだなあ…………それは今後ゆっくりと考えよう」

「パパと具体的な話をしなかったの?」

「そんなすぐには無理だよ、会社のことや色々とあるから」

「それもそうか」綾乃ちゃんも頷く。

「そうだ、ネットでポチった物が今日届いたの、だから明日楽しみにしてて」

「何買ったの?」

「内緒」綾乃ちゃんは嬉しそうだ。

「そうですか、じゃあ明日を楽しみにもう寝ます」

「ええ、もう寝ちゃうの、お風呂は?」

「明日でいいです」

「なんだ残念!入浴剤の北海道シリーズが届いたのに」残念そうな表情だ。

「おやすみ」

外でフクロウが「ホー」っと鳴いた。

朝起きるといい匂いがした。煮物としじみの味噌汁で、飲んだ翌朝には嬉しい朝食だ。

「美味しい」ニッコリと食べた。

「今日はあったかいし、外で日向ぼっこしますよ」綾乃ちゃんは俺を外へ連れ出す。

「さて、これが届いたんですよ」見ると子供用の床屋サンセットだった。

「ん……何それ???」

「床屋さんセットですよ、新さんはいつも髪がボサボサにしてるから、私がカットします」

「へえー、綾乃ちゃん髪も切れるんだ、すごいね」

「ううん、やった事ないよ」

「えっ!大丈夫なの?」不安そうに綾乃を見る。

「ほら、カットのやり方の本も付いてるから大丈夫」

小学生くらいの男の子が写っている本が見える。俺はひきつった。
早速椅子に座らされ、首からシートをかけられると、遠慮なく綾乃ちゃんはハサミを動かした、足元には髪の毛がバサバサと落ちる。
俺はひたすら耐えた、一時間程でカットが終わった。
シャワーで流した後、恐々と鏡を見る。

「ふーん…………なんとかなってる」

俺はほっとした。

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