星降る夜のセレナーデ 第80話 二人乗り
食事が終わると、彼女は少しだけかしこまった。
「今から秩父へ帰るんですか?」
「はい、今日バイクで来てるんで」
「私、実は実家が熊谷なんです、送ってもらったり出来ませんよね」少し俯く。
「別に構わないけど、ヘルメットが無いですよね」
「事務所にあります、持ってきても良いですか?交通費が節約出来るんで助かります」嬉しそうだ。
「あ〜………そういう事」俺は納得した。
「俺のハーレーでよかったら送ります」俺はニッコリと視線を送る。
「ありがとうございます」彼女は急いでヘルメットを取りに行った。
着替えてヘルメットを抱え、彼女は小走りに帰ってきた。
「じゃあ出発します」そう言ってエンジンを始動させると、彼女は嬉しそうに後ろに乗って抱きついた。
俺は都内を抜けて高速道路へ入る。風が変わって気温が下がったのでサービスエリアにバイクを止めた。
「寒く無いですか?」
「大丈夫です」
暖かい飲み物を買って少しだけ休憩した。
「あのう…………連絡先聞いても良いですか?」彼女が不安そうに聞いてくる。
俺は「良いですよ」そう言って携帯の番号を表示して見せた。
おそらく彼女は変な事はしないだろうし、出来ることは協力したいと思っている。
「ありがとう」彼女は嬉しそうに微笑む。
高速道路をぬけ、彼女を無事に熊谷の実家へ送り届けた。ログハウスへ辿りついたのは夜の11時を過ぎだった。
志音ちゃんが、心配そうに玄関のドアを開けて俺を見ている。
「モヒくん遅い〜!心配したんだぞ」少し怒った表情だ。
「ごめんなさい、色々とあって……………」
「遅くなった時のパパみたい」志音ちゃんは唇を尖らせている。
リビングへ案内されると、俺はバッグから書類を差し出す。
「先生、遅くなりまして、これが預かった書類です」
「いやあ真人くん、悪いねえ」先生はニッコリ受け取った。
「ありがとうございました。DVDを販売してる所へ、小池さんに案内され状況を見ました。すごく参考になったし、また頑張ろうと思います。」
「そう、よかったね」先生はにこやかに頷いている。
「清水アリサちゃんに会った?」美夜子さんがチラッと見た。
「はい、記念にこれを頂きました」俺はサインが入ったDVDを2枚出差し出す。
「じゃあ、1枚は会社に置いておこう、もう1枚は初仕事だから真人君が大切に保管しておいたら?」
「はい、では記念に1枚頂きます」俺は1枚をバッグに入れようとした。
「モヒくん、志音にも見せてよ」志音ちゃんがスッと手を出す。
「はい、どうぞ」俺は手渡した。
「ふ〜ん…………綺麗な人だね…………胸も大きい……………」じっと見ている。
「そんなに見ると穴が空いちゃうわよ」美夜子さんが笑った。
「……………………」志音ちゃんは少し拗ねた表情でDVDを俺に返した。
「じゃあまた明日よろしくお願いします」俺は挨拶して自宅へ帰った。
ベッドに横たわるとメールが来た。
アリサさんからだった。
『今夜はありがとうございました』
俺は『どういたしまして』と返した。
その後志音ちゃんからメールが来た。
『本当に心配したんだからね』
『ごめんなさい』と返した。