星降る夜のセレナーデ 第106話 受験
『潮騒のシンフォニー』は発売されると直ぐにヒットチャートを駆け上った。
いろんな所で曲が流れ、由美香ちゃんは寝る暇もないくらいになっているらしい。
ヒットさせると志音ちゃんに約束したから頑張ってるとメールが来たようだ。
「由美香ちゃんは数少ないお友達だからね」と言ってメールを嬉しそうに見ている。俺も先生や美夜子さんの作品が評価されるのはとても嬉しい。
「私も頑張らなくちゃあね」志音ちゃんは拳を握った。
「ん…………」俺は一瞬何を頑張るのか分からない。
「志音は受験なんだよ、モヒくんの行ってた高校を受験するの!」
「そうか、もうそんな時期なんだね」俺は頷いた。
「モヒくんは志音の事に興味が無いの?」少し不貞腐れている。
「ごめん…………もう志音ちゃんを中学生と思えなくなっていて…………」俺は俯く。
「そうなの?……………じゃあ許してあげる」志音ちゃんはニッコリした。
「ごめんね、俺、仕事のことで頭がいっぱいで……………」
「いいの、モヒくんが一生懸命なのを私は分かってるから」肩を寄せた。
「ありがとう志音ちゃん」俺は志音ちゃんの笑顔を見て嬉しくなる。
「高校に入れたら、モヒくんの初恋の先生に会えるよね」
「えっ、相川さんの事?」
「うん、中学生だったモヒくんの事をいっぱい聞いちゃおう」そう言って口角をあげた。
「それは………………」俺は眉を寄せて志音ちゃんを見た。
「へへへ…………」満面の笑みで俺を見ている。
俺は志音ちゃんが可愛いとしか思えなくなっている、しかし先生の事を思うと少し心が痛い。
リビングで休憩になりコーヒーを飲んでいると電話が鳴った。
「はい、白河です」美夜子さんが出た。
しばらくして美夜子さんは眉間に皺を寄せて電話を置いた。
「どうしたんだい?」先生は心配そうに聞いている。
「由美香ちゃんのマネージャー、松宮さんからなんだけど………………」
「由美香ちゃんどうかしたの?」志音ちゃんが心配そうに聞いた。
「そうじゃ無いの……………社長から言われたらしいのよ……………」
「「何を?」」先生と志音ちゃんは首を傾げた。
「志音を所属させて欲しいんだって、スフィンクスへ……………」
「「「え〜!!!」」」みんな固まった。
「この前由美香ちゃんのレコーディングの時、松宮さんが志音を見て優さんにそっくりだって言ってたの、そのことを社長に話したらしいのよ」美夜子さんはかなり嫌そうな表情だ。
「志音は、アイドルにはならないよ!」志音ちゃんは首を横に振っている。
「もし万が一志音がアイドルを目指したとしても、スフィンクスはあり得ない」先生もかなり不機嫌になった。
「勿論よ!」美夜子さんも強く頷く。
その話は直ぐに断ることになった。俺もその方が良いと思った。