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星降る夜のセレナーデ 第65話 流れるメロディ

先生は映画の台本を見ながら、リビングで作曲を始めた。電子ピアノをリビングへ置いてヘッドフォンをしたまま譜面を書いている。

「るるるら〜♪………………」メロディを口ずさみながら、ピアノで音を確認してサラサラと譜面を書いていく。俺はその姿がカッコイイと思った。

「俺もあんなにできたらなあ…………」つい心の声が漏れる。

「すぐ出来るようになるわよ」美夜子さんが優しく微笑んでくれた。

「俺、頑張ります!」そう言ってスタジオへ入る。

次のDVD用BGMを作り始める。今度は少しセクシーな感じだ。夜、ベッドでの撮影シーンらしい。

「爽やかだけど少し色気が感じられて…………」そう思いながら思いついたメロディを打ち込んだ。ピアノでコードを打ち込み、ストリングス系の音も入れて見る。

「う〜ん……………」何かメロディに力がない。少し変えてみたがやはり大差なかった。

先生がスタジオへ入って来た、おそらく心配なんだろうと思う。

「真人くん、セブンスコードを使って見なよ」ニッコリと俺を見た。

「そうか、最近習ったセブンスのコードで曲の雰囲気を出すのか」俺は何度も頷く。

「響きが変わればまたメロディーの感じも変わってくるよ」先生はそう言い残してスタジオを出て行った。

「ありがとうございます、やってみます」俺は先生に聞こえないかも知れないがお礼を言った。

コードを4和音にして作り替え、メロディもそれに似合うように変えてみた。
かなり雰囲気が出てくる。俺は嬉しくなってメロディを口ずさんだ。
すると、頭の中にもっとメロディが浮かんできた。
まだ直ぐには譜面に書けないので、そのままコンピューターに打ち込む。
再生しながら修正して、何とか思うようなメロディになってきた。

「良い感じじゃん」志音先生が学校から戻ってきた。

「先生、こんな感じのメロディで大丈夫でしょうか?」

「良いと思うよ、私がピアノを弾いてみようか?」

「お願いします」俺は深々と頭を下げる。

志音先生は少し色っぽいジャズ風のピアノを弾いた。すごくおしゃれになっていく。ドラムもワイヤブラシで良い雰囲気に叩いてくれた。
俺はストリングスを入れる。さらにメロディをサックスの音に変えてみる。

「うっぷ………なんか変」志音先生は吹き出した。

「そうですね……………変な色気が出てしまいました」俺は音色を変えてみる。

結局シンセサイザーの音になった。

先生がニコニコとスタジオへ入って来た。

「う〜ん、最後の方のメロディを少し変えてみたら?」そう言って先生は打ち込んだメロディを少し変える。

聞いてみると、とても感じが良くなった。

「メロディの終わり方が重要なんだよ、次にまた聴きたくなるように終わると良いのさ」ニッコリ頷く。

俺はまた目からウロコ状態だ。

「そうですよね、終わり方が重要なんですね」何度も頷く。

それからもう少し音を加えて全体を仕上げた。

「良いんじゃない」志音先生も納得してくれた。

2曲目も何とか完成だ。

美夜子さんがコーヒーを入れてくれた。志音ちゃんはラスクをニコニコと食べている。
先生はまだリビングでピアノを弾いている。俺は邪魔しないように静かにコーヒーを飲んだ。

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