星降る夜のセレナーデ 第81話 テーマ曲
今日は日曜だったが、ログハウスへ来ている。そしてお願いされたテーマ曲の事を相談した。
「そうなんだ、小池君からもお願いされたなら協力しないとね」先生は頷いている。
「何かアイデアはあるの?」美夜子さんが俺に聞いた。
「いえ、まだ何も考えてなかったんで」俺はただ頭をかいた。
「良くあるパターンだけど、アルファベットで叫ぶとか?…………」先生は明後日の方を見ながら考えている。
「そうね、それに名前の特徴を活かしたらどうかしら?」美夜子さんがポツリと言った。
「たとえば?」先生が一瞬食いつく。
「夢もアリサ…………とか、名前のアリサと有りさをかけるのよ」
「なるほど、それカッコいいですね!」俺はアイデアに思わず拍手する。
「『A R I S A |《エー・アール・アイエスエー》♪ A R I S A ♪ 夢もアリサ、希望もアリサ、ハッピーアリサ!』とか………」美夜子さんが手を叩きながらリズミカルに声を出した。
「いいねえ、真人くんはどう思う?」先生が口角を上げて俺を見た。
「いいです、とてもいいです」俺はすでにウキウキと嬉しくなっている。
「もう………うるさい〜……」志音ちゃんが部屋から出て来る。
「ごめんね」俺はピコっと頭を下げて謝った。志音ちゃんはどかっと椅子に座ると口を開く。
「ハイハットの代わりをフロアタムにして、ドドドタンドドドド♪」みたいに叩いたらお祭りみたいでカッコいいんじゃない?」
俺は呆気に取られて何度も瞬きする。
「いいねえ志音、それはカッコいいぞ」先生もノリノリだ。
「じゃあ早速録音しようよ」志音先生はグッと背伸びして体をほぐしている。
皆んなでスタジオへ入ると、すぐに録音が始まる。
先生がブラスで短いファンファーレのような音を入れると、すぐに志音先生がドラムを叩く。
その後美夜子さんが「『A R I S A ♪ A R I S A ♪ 夢もアリサ、希望もアリサ、ハッピーアリサ!』掛け声のように声を入れた。
「多い方が良いね」美夜子さんの意見で先生や志音先生、そして俺も「『A R I S A ♪ A R I S A ♪ 夢もアリサ、希望もアリサ、ハッピーアリサ!』と声を出して録音した。
その後ハンドクラップも皆んなで入れる。先生がエレキギターで『グイーン』と効果音的に入れた。
俺は最後に強調したいところだけベースを入れる。そして何度も繰り返せるように最後を工夫する。ほんの一時間ほどでテーマ曲が完成した。
「ありがとうございます、お金にならないお願い事に協力していただいて」俺はモゾモゾと恐縮している。
「大丈夫よ真人くん、DVDの売上で帰ってくるから」美夜子さんが社長らしく微笑んだ。
「白河バンドのパワーだね」志音ちゃんが笑っている。
俺は、早速出来上がったテーマ曲のデータを小池さんへ送った。