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星降る夜のセレナーデ 第91話 ゲームパソコン

先生の車で到着すると、いつものように秋葉原の駅で小池さんが待っていてくれた。しかし、今回メイクした志音ちゃんを見て固まった。

「優様!………じゃ無いよね…………志音ちゃんだよね…………」

「こんにちは、志音です」志音ちゃんはニッコリ会釈した。

「こんにちは……」小池さんは言葉に詰まっている。

「毎回アドバイスをお願いしてすみません」俺は頭を下げる。

「機材のことは何も問題ないんだけど、やっぱり血の力ってすごいねえ」

小池さんは何度も瞬きして志音ちゃんに見とれた。しばらくして我に帰った小池さんはまた的確なアドバイスをしてくれる。予定していた機材やソフトなどを買い込んで、志音ちゃんのノートを探す。

「志音ちゃんはどんなパソコンがいいの?」小池さんが聞いている。

「志音はお兄ちゃんの手伝いをしてるから、スタジオに使ってる音楽ソフトが使えるのがいいです」

「そうなんだ、じゃあ最新型の薄くて軽いやつがあるけどどう?」

小池さんはそのパソコンが展示してある場所へ案内してくれた。
志音ちゃんは一眼で気に入った。しかし値段を見て眉を寄せた。

「薄いし可愛くていいけど…………志音のお小遣いじゃあ買えない………」

「大丈夫だよ、足りない分は俺が出すから」俺は志音ちゃんを見た。

「本当?……いいの?………」志音ちゃんは切なそうに俺を見た。

小池さんはその様子を見て、何度も頷いている。

志音ちゃんのパソコンも無事に購入し、皆んなで食事した。

「設置とテストには私も手伝うよ」小池さんがまた秩父まで来てくれる事になった。

「ありがとうございます」俺は何度も頭を下げた。

帰り道で志音ちゃんは不安そうに俺を見ている。

「モヒくん、いっぱいお金を出してもらってごめんね」

「いいんだよ、志音ちゃんは俺の曲作りに協力してくれるため買ったんだろう?」

「うん、だってモヒくんが大変そうだから…………」志音ちゃんは俯いた。

「ありがとうね、志音ちゃん」

「志音はモヒくんのお手伝いするのが嬉しいの」顔を上げてニッコリしている。

俺は志音ちゃんがとてもいじらしくて抱きしめたくなったが、慌てて思いをかき消す。

ログハウスへ戻ると志音ちゃんは早速パソコンを開いて自慢した。

「お疲れ様真人くん」先生が迎えてくれた。

「真人くんごめんね、志音のパソコンを買うのに協力してもらって」美夜子さんが申し訳なさそうに言った。

「いつも曲作りを手伝ってもらってるんですから、当然のことです」俺はニッコリ頷く。

「志音のパソコンは薄くてかっこいいなあ、とーたんのと交換しない?」先生が志音ちゃんへ擦り寄っている。

「だめ!このノートはモヒくんが志音に協力してくれたから買えたの、だからダーメー!」何度も顔を横に振った。

「小池さんが言ってましたけど、ここにあるパソコンの中で一番早くてパワーがあるのは志音ちゃんのノートパソコンだそうですよ」俺は口角を上げた。

「そうなの?」美夜子さんは何度も瞬きして志音ちゃんのノートパソコンを見ている。

「日進月歩、パソコンの進化は早いねえ」先生は少し残念そうに自分のノートパソコンを開いた。

「パパも新しいのを買っていいのよ」美夜子さんが優しそうに先生を見ている。

「まだ何も問題ないからいいよ」先生は微笑んだ。

「そうなの?」

『ピコピコ……バーン…………』志音ちゃんは最速ノートパソコンでゲームを始めている。

「我が家の最強パソコンは志音のゲーム用なのね」美夜子さんが笑った。

「そうですね」俺も笑った。

「…………ん………………」何も話を聞いていなかった志音ちゃんが、顔を上げてキョトンとした。

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