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水の生まれる夜に 43 絶景のBBQ

土曜日の昼にはレンタカーで先輩と瑠美さんが天空カフェへとやってきた。僕は天空カフェのBBQ場で炭をおこしている。

「先輩、瑠美さん、お待ちしてました」ほほについてしまった炭を拭きながら挨拶した。

綾乃さんはバーベキューの食材を運んでくると「私はお店の方があるので三人で始めていてください、落ち着いたら合流します」おじぎをしてもどっていく。

「おい新、綾乃ちゃんって美人で可愛くてアイドルにも全然負けてないなあ」

「ホント……目の前で本人を見て絶句したわ私」留美さんは大きく瞬きしている。

「ですよねー、僕も美人だと思います」

「なんだよ、他人事みたいに言うなよ」

「とりあえず肉を焼きましょうよ」食材を網に乗せて焼き始める。

「飲み物どうします?温泉まで行くならノンアルですけど、そのまま別荘に行くならアルコール入りです」

「そりやあアルコール入りでしょう、別荘でお風呂も入れるんだろう?」

「はい大丈夫です」

「仁ちゃん飲みすぎないでね」瑠美さんにたしなめられながらも缶ビールをプシュッと開けた。

「なあ新、なれそめを聞かせろや」肉をほうばりながらにらむように聞いてきた。

「あの別荘の前の持ち主だったお祖父さんのお孫さんなんですけど、訪ねて来た時に風邪で倒れちゃったんです、それで看病しました。お粥とかぜ薬がとても役に立ちました。瑠美さんのアドバイスのおかげです」

「そうなの、でもよく新君の良さが分かったわね」

「そうだよな、ふつうは暗いとか言って逃げてく女の子が多いのになあ」

「はあ、僕もよくわかりません」シイタケを食べながら言った。

「そういえばこのシイタケは原木シイタケだから美味しいですよ、お店の千草さんからの特別サービスでたくさんあります」

「美味しいなあ」先輩は次々に口へ放り込んでビールを飲んだ。

「お待たせしました」お店が落ち着いて綾乃さんも合流する。

「ねえ綾乃ちゃん、新のどこが気に入ったの?」不思議そうに先輩が聞いている。

「はい全部です」

「うっぷ……」先輩と僕は食べていたものを吹き出しそうになった。

「綾乃ちゃんはとっても美人だからたくさんのアピールが今まであったでしょう?」瑠美さんも不思議そうだ。

「そうでもないんですよ、パパが社長だと気軽に声がかけづらいらしくて」

「えっ、パパは社長なの?」先輩は食べていた肉をのどに詰まらせそうになった。

「はい小さい会社ですけど」

「じゃあ、付き合うきっかけはどっちからなの?」

「えっ、僕らはまだ付き合ってないですけど」

「何それ……」二人は驚いて僕らを見ている。

「付き合ってないのに二人で暮らしてんのか?」

「はい、まだ告白されてないいんですよお」綾乃さんは頬を膨らした。

「おい新どうなってんだ?」

「どうなってるって言われても…………」下を向くしか出来ない。

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