星降る夜のセレナーデ 第101話 相性
俺はスタジオでミックスの作業をしていると、志音ちゃんが入って来た。
「おかえり志音ちゃん」俺はニッコリした。
「今日はテストだったから早く帰ってたの」
「そうなんだ、テストはどうだった?」
「うん、何とかなったよ」微笑んだ。
「それは良かった」俺は口角を上げる。
「志音にも聞かせて」モニターの前に座った。
「いいよ」俺は録音した歌を再生した。
志音ちゃんはじっと聞いている。
再生が終わると、何度も頷いて納得したようだ。
「由美香ちゃん歌上手だね」少し微笑んだ。
「そうだね」俺はただ頷いた。
「志音も練習したら上手になるかなあ……………」遠い目をしている。
「志音ちゃんなら絶対上手くなるよ、だって才能すごいから」俺はゆっくり頷く。
「そうかなあ……………自信ないなあ……………」
「いつかモヒくんの作ったメロディを歌えるかなあ……………」
「えっ、俺の作った曲を歌ってくれるの」俺は志音ちゃんをちらっと見る。
「とーたんがモヒくんのメロディと志音の声は相性が良いって言ってたから…………」
「そうだね、俺も良い曲を作れるようになったら、志音ちゃんに歌ってほしいなあ」
「本当?」
「ああ、志音ちゃんと2人でみんなが喜んでくれるような歌が作れたらいいね」
「うん、じゃあ志音も歌の練習を頑張ってするよ」大きく頷いた。
志音ちゃんとリビングへ出て来る。
「由美香ちゃん、とっても良かったよ」志音ちゃんはニッコリ頷く。
「そう、志音ちゃんに良いって言われたら嬉しいな」
「頑張ってヒットさせてね」
「うん、頑張るよ」
2人は手を取り合って嬉しそうにしている。
俺も嬉しくなった。
「完成したらデータを送りますよ」先生が松宮さんに言った。
「宜しくお願いします」松宮は深々と頭を下げる。
2人はニッコリと手を振って帰って行った。
「志音は由美香ちゃんと仲良しになったんだねえ」先生が不思議そうに聞いた。
「うん、メールも来るよ」志音ちゃんはニッコリしている。
「あんなに夜のお店で働く人はイヤだって言ってたのに……………」
「だって由美香ちゃんは歌手だもの、それに……………」
「それに?」
「何でもない」志音ちゃんはそっぽを向いた。
それを見た美夜子さんは少し笑っている。
俺も不思議に思っているが、何故だかは聞かないことにした。