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水の生まれる夜に 55 山里の暮らし

お昼になると綾乃さんから電話があった、お昼を食べにお店に来るようにと。
自分のノートPCとメンテしたお店のPCを持って天空カフェへ向かう。
坂道の途中にある笹原さんの家の前で呼び止められた。

「今日は一人かい」

「こんにちは笹原さん」

「話すのを忘れてたんだが、あそこに見える畑は真一が買った畑なんだ、俺が草取りだけはしてたんだが、綾乃ちやんは畑はやらないだろうなあ」

「真一お祖父さんの畑なんですか?」

「そうなんだよ、この山里を離れる人から買い取ったんだよ」

「美味しい野菜をいつか綾乃ちやんに食べさせたいと言って畑をつくってたんだがねえ」

「そうでしたか、綾乃さんに聞いてみます」

「頼むよ」笹原さんは微笑んだ。

お店へ着くと千草さんに整理したデータを見せ、メールの管理方法も教えた。

「新くんありがとう、ずいぶん見やすくて良くなったわ、凄いねえ」感心している。

昼を過ぎて、みんなで食事になった。僕は蒸しあがったばかりの粽をご馳走になる。ニコニコ食べていると、粽シスターズからお菓子の差し入れがあった。

「お兄ちゃんおめでとう、ついに恋人になったんだって?」みつ子さんが笑っている。

綾乃さんを見ると照れ臭そうに笑っている。

「でも婚約者だと思ってたから後もどりした感じだけど、時間の問題だからまあいいか」またみつ子さんは一人で納得している。

僕は目をパチパチさせながら、ひたすらお菓子を食べる。

「新さん、みつ子さんの亡くなったご主人が使っていた軽トラックがガレージに眠ってるんだって、安くで譲ってあげるって」

「そうですか、でも僕は免許を持ってないんですよ」

「大丈夫、私が持ってるから」

「えっ、綾乃さん運転できたっけ?」

「ううん、吹けば飛ぶようなペーパードライバーよ」

「えっ、…………どうするの?」

「千草さんも東京から来たばかりの時は全く運転できなかったんだって、でもこの周辺は道が広いし、車も来ないから練習して乗れるよになったんだって」

「綾乃ちゃんならすぐに乗れるようになるわよ」千草さんがうなずいている。

「新さん、やっぱり車がある方が買い物だって楽だしいいと思うよ」

「そうだねえ」ゆっくりとうなずいた。

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