水の生まれる夜に 90 だるまちゃん弁当
翌日俺は綾乃に呼ばれてマーケティング課へ来た。
「はいこれ、だるまちゃん弁当よ」
「これがだるまちゃん弁当か」繁々と見る。
「そう、お昼に食べてね、食べた後は貯金箱にするから捨てないでね」
「はーい、ありがとう」
弁当を受け取ると、机の上に置いてある資料をチラッと見た。
「さすが、意識高い系の女子はしっかりやってますね」
「じゃあ新規開発課までサンプルを取りに行ってきます」
綾乃と美由紀ちゃんは含み笑いをしながら出て行った。
残された俺のニヤニヤした顔を見た留美さんは「新君、『たかじょ』の意味を知ったでしょう?」と聞いてくる。
「えっ……はい、さすが留美さん、何でもお見通しですね」
「どうして知らないフリしたの?」
「しばらくは知らないフリをして綾乃の反応を見たいと思いまして」
「どっちもどっちね、仲が良いこと」呆れ顔で笑った。
戻って弁当を食べ終わると、その入れ物に500百円玉貯金をして、溜まったら綾乃をどこか旅行に連れて行きたいと思った。
ノートPCを見ながら「まずはこの辺りか……」ペンをくるくると回す。
・出産や子育てで出勤できない人達に、自宅でオンラインでできる仕事を発注できるシステムを作る事。
・社員のための経済的で美味しくてさらに健康的な社員食堂を作る事。
・子育て世代の社員のための託児所を作る事。
全てポンカンLINEに来た意見を元に計画した事だ。
出来上がった計画書は社長に提出すると、役員会で多少の手直しはあったものの了承された。
俺は計画の実施に向けて人材や場所などを探し始めた。