星降る夜のセレナーデ 第102話 新たな理解者
志音ちゃんはテストが終わった後の日曜日をノルマのデートに指定した。
勿論俺に選択権はない。朝から迎えにログハウスへやってきた。
「おはようございます」俺は先生や美夜子さんへ挨拶する。
「おはよう真人くん、せっかくの日曜なのに悪いね」先生が申し訳なさそうにしている。
「いえ、当然のことです」俺は頷いた。
「志音ちゃん、準備はできたの?」美夜子さんが声をかけた。
「うん、できたよ」
部屋から出て来た志音ちゃんは、眩しいくらい綺麗だ。俺はまた言葉を無くした。
「じゃあ行って来ま〜す」志音ちゃんはバッグを持って出ようとするとメールが来た。
携帯を見て「え〜………」椅子に座り込む。
「どうしたの志音ちゃん?」
「由美香ちゃんからメールが来て、アリサちゃんがこっちにバイクで向かってるんだって」唇を尖らせた。
「清水アリサちゃん?」美夜子さんが不思議そうに聞いている。
「うん、お礼とお詫びに来たいんだって」
「そうなの?」美夜子さんは不思議そうな顔だ。
先生はニコニコとしている。
みんなでテラスに出て待つことになった。
しばらくするとアリサちゃんがバイクでやって来た。
「こんにちは」アリサちゃんはヘルメットを取ってニッコリ挨拶した。
「ようこそ」先生はニッコリ手を振る。
アリサちゃんはテラスへ来ると志音ちゃんを見て固まった。
「由美香ちゃんから聞いてたけど…………志音ちゃん綺麗ですね」
志音ちゃんはただ瞬きしている。
「どうぞ中へ」先生はそう言ってリビングへ入って行く。
「志音ちゃん、週刊誌のことは御免なさいね、気分を悪くしたでしょう?」
「えっ………もういいです…………」志音ちゃんは俯いた。
「真人さんも御免なさいね、助けてくれたのに迷惑をかけてしまって」申し訳なさそうに頭を下げる。
「大丈夫です」俺はニッコリした。
「真人さんからメールが来ないのは不思議だったんですけど、こんな綺麗な志音ちゃんがそばにいたら私にメールなんか来ませんよね」悪戯っぽく笑った。
「………………………」志音ちゃんは固まっている。
「大丈夫、私も2人を応援します」そう言って志音ちゃんへ握手を求めた。
「えっ…………」志音ちゃんは固まったままだ。
「志音、良かったわね、また理解者が増えて」美夜子さんが笑った。
志音ちゃんは少し不安そうな表情だが、ゆっくりと手を出して握手した。
「真人くん、大変ね、みんな志音の味方になっちゃうよ」笑っている。
「えっ………………」俺はどう言っていいのか分からない。
「アリサちゃん、うちではまだパパが理解出来てないのよ」美夜子さんが微笑んだ。
「えっ!そうなんですか?」アリサちゃんは驚く。
「さあ、みなさん中へどうぞ」先生が顔を出した。
みんなで瞬きしながらリビングへ入る。
コーヒーが用意されると、アリサちゃんはみんなにテーマを作ってくれた事へのお礼を言った。
「本当にありがとうございました、おかげでイベントはすごく盛り上がります」
そう言ってニコニコとイベントでの状況を話してくれた。
DVDがたくさん売れてイベントにもたくさん出演できたので、給料が上がり念願だったバイクを買うことができたらしい。それで嬉しくてお礼とお詫びに来たようだ。みんなと打ち解けたアリサちゃんは志音ちゃんとメールの交換をして帰って行った。
「出発が遅くなっちゃった」志音ちゃんは唇を少し噛んだ。
「いいじゃない、味方が増えたんだし、それにその分少し遅くなってもいいわよ」美夜子さんが笑った。
「ママ、それはちょっと甘すぎないか?」先生が心配そうだ。
「何なの?あなたは真人くんを信頼してないの?」首を傾げた。
「そうか、真人くんが付いてたら安心か」何度も頷く。
俺は何も言えずに志音ちゃんとドライブへ出発した。