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隠れ家の不良美少女 167 時を止めた桜子

「友里香さんは桜と何を話したんですか?」
俺は夢のことが気になって聞いてみる。
友里香さんは唇を噛んで少し考えた。

「コロナで仕事が無くなっちゃったのよ、これまでずっとフリーでやって来たけど、これからは難しいかもね、だから桜に相談してたところ」少し寂しそうに言った。

「そうですか、友里香さんは昔アナウンサーを目指してたんですよね?」
「大学の頃はね……でも桜とは中学の頃からいつも一緒だったの、そして二人でよく歌ってたわ」
「へ〜……そうだったんですね」
「桜はピアノも歌もすごく上手だったしプロになりたいって言ってた時期もあったのよ、私はあまり上手くならなかったから桜のマネージャーをやるって言ってたのよ、でも桜はプロになるには体力的に難しかった、だから私はアナウンサーを目指す事にしたの」
「そうだったんですか」
「でも、どこの放送局にも採用されなかった、だからレポーターやナレーション、司会となんでもやったわ」
「幸い色んな人から仕事を紹介してもらえて、今までやってこれたんだけどね……」

「皆さん、桜子に会いに来てくれてありがとうございます」
振り向くと桜の両親が深々と頭を下げた。
「友里香ちゃん、ありがとう、一瀬さんもありがとうございます」
桜のお母さんは優しい表情で二人を見た。
「こちらの方は?」希和を見ている。

「友希さんの恋人みたいですよ」友里香さんが微笑んだ。
「そうなの、よかったわ」そう言うと希和に握手を求めた。

「初めまして、相沢希和子と申します、友希さんとおつき合いさせていただいてます」
希和は丁寧にお辞儀する。

「良かったね桜子、あなたは心配してたけど一瀬さんには可愛い恋人ができたみたいよ」嬉しそうに手を合わせた。

「……………………………」

しばらく墓前で桜の思い出話をした。
希和はじっと話を聞いている。

帰り際に桜のお母さんから声をかけられた。
「これ、もし一瀬さんが恋人を連れて来てくれたら渡してって言われてたんだけど……でももう捨てるべきかもしれませんね」迷っているようだ。

「えっ、桜からの手紙ですか?」俺はすぐに受け取った。

「恋人さん宛にもあるんだけど…………」さらに迷っているようだ。

希和はお辞儀してゆっくりと受け取る。

「それではこれで失礼します」俺は深く一礼した。

友里香さんも一緒に帰る事にしたようだ。
「これからどうするんですか?」俺は聞いてみる。
「中野に帰るわ」
「そうですか、俺たち吉祥寺まで車で行くので一緒に行きませんか?」
「いいの?」
「まだ話したいこともあるので」
「じゃあ、乗っけてもらおうかな」少し微笑んだ。

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