幼馴染はキュートな吸血鬼 5話 恋する樹絵ちゃん
日曜の9時50分にはもう樹絵ちゃんが現れた。
制服の時とは違って、さらに可愛くなっている。
おそらく頑張ってオシャレしてきたんだろう、そう思えた。
10時を少し過ぎて麗音が走って来る。
「ごめん!寝坊しちゃったよ」
「しょうがね〜な」
俺が言うと七香と樹絵ちゃんは優しそうに微笑んだ。
「早速行こうぜ!」
4人はゲームセンターへ向かった。
樹絵ちゃんは殆どゲームをした事がないらしく、麗音に助けられてやっている。
なかなかいい感じだ。
お昼をファミレスで食べる。
そしてまたゲームセンターへ戻ってきた。
当然費用は俺が払っている、これは必要経費だと思っている。
「いいぞ樹絵ちゃん、随分上手くなったよ」
麗音が付きっきりで指導している。
「そこはこうやって」
そう言いながらスキンシップがさりげなく行われた。
樹絵ちゃんの耳はポッと赤くなっている。
最後はクレーンゲームで麗音が可愛いクマのぬいぐるみを取って樹絵ちゃんにプレゼントした。
樹絵ちゃんは嬉しそうにそれを抱きしめている。
その後は近くのショッピングセンターを散策した。
俺と七香が手を繋いで歩くと、麗音も樹絵ちゃんと手を繋いだ。
樹絵ちゃんの目が潤んでいる。
俺は樹絵ちゃんが恋に落ちた事を確信した。
翌週の日曜に樹絵ちゃんは麗音の家へ行き、一緒にゲームをしたらしい。
麗音からメールが来た『今日樹絵ちゃんとキスしたよ〜』
よし、俺はグッと拳を握った、後は血を分けてもらうだけだ。
「樹絵ちゃんどうしたの?ボーッとしてるよ?」
心配そうに声をかける。
「えっ、そう?……最近ちょっと眠れなかったりしたからかなあ……」
眉を寄せた。
「俺の家は病院だから点滴してあげるよ、すぐに元気になるよ」
「ほんと?」
「ああ、よくみんなに点滴をしてあげてるんだ、だから遠慮なくおいでよ」
「ありがとう、………じゃあ甘えようかなあ」
ニッコリ微笑んだ。
放課後、病院の空いてる病室に樹絵ちゃんを招いた。
俺は何度も点滴をやっているので、慣れている。
樹絵ちゃんをベッドに寝かせると準備をする。
「樹絵ちゃん、確認のために少し採血するね?」
「うん」樹絵ちゃんは何も疑っていない。
ベッドの下に七香がいることも当然知らない。
俺は樹絵ちゃんの腕に針をチクリと刺す。
すると管を伝わって血が流れ出した。
管の先には特殊なパットが付いていて、七香がくわえている。
しばらく七香が吸った後、止血して点滴に切り替えた。
「ねえ樹絵ちゃん、最近キラキラして綺麗になったよ」
「そう、Wデートのお陰かなあ……」
「麗音とは上手くいってる?」
「うん、でも彼はモテるからずっと続くとは思ってないわ」
「そう、先の事はわからないよ」
「私いつも本ばっかり読んでたんだ、恋も本の中だけだった、でもWデートのお陰で実際に恋をしたの、とってもドキドキした、だから幸せよ」
「そう、それはよかった。樹絵ちゃんはこれからも輝いていく人になると思うな」
「ありがとう、誘ってくれて感謝してるわ」
「またゲームセンターに行こうよ」
点滴を終わらせる。
俺は後ろめたい気がしたが、本人が喜んでくれているならまあいいか、そんな気持ちになった。
「なんか元気になった気がする」
樹絵ちゃんは微笑んだ。
恋する女の子は気分で十分元気になるものだ。
樹絵ちゃんはニッコリと帰って行く。
七香はベッドの下から出てくると俺に抱きついて来る。
「旭、ありがとうね」
そう言ってキスしてくれた。
俺は嬉しくなって、七香を抱きしめた。