恋人岬
この手の話は昔から苦手です。
若い頃の話も、もうだいぶ忘れて、ものすごく遠い昔の物語のような気がします。
5年ほど前にこの場所を訪れました。神戸の垂水です。
岬というほど飛び出した場所でもなく、運動場や公園のあるエリアの、外側の海に面した所です。
柵のロープの部分に、錠前が沢山ひっかけられていました。
どこかで見たような・・と思ったら、おそらくトアロードの上の諏訪山公園にも同じような場所があったと思います。
たまたま、カップルと思われる人が通ったわけですが、それ以外、特に堤防の上は誰も来ない、静かな場所でした。
風の音だけが聴こえてきました。波の音は・・覚えていません。
この場所から、少し遠くに明石海峡大橋が見えました。
名所というのは、脚光を浴びている時や、休日、連休などには人で賑わったりしますが、その他の時は意外と静かなものなのですよね。
違う場所の話になりますが、
ちょっと前に寅さんの映画で知床に行く話を観まして、その時期は1970年代の国内旅行ブームの頃で、北海道にも観光客が溢れ、知床にもたくさん人がいるシーンが、何回も出てきました。
僕が知床に行ったのは80年代半ばで、バイクツーリングがまあまあ流行っていた頃です。でも、知床にはそんなに人はいなかったし、キャンプ場もちらほら。バイク乗りと自転車乗りが半々の静かなキャンプ場だったし、そんなに賑やかな観光地だという認識はありませんでした。
だから映画を見てびっくりしました。
あ、そうそう、その感じっていうのは、80年代に信州の清里に若者が押しかけて賑やかだったあのイメージに近いものでした。
高度成長期から長期の不況に入る手前までは、田舎はどんどん過疎になっていき、都会に人が集まり、観光地に人が集まるという流れがずっとあったけれど、その時期を過ぎると、場所によって明暗が分かれるようになってきたんですね。
必ずしも右肩上がりじゃないし、必ずしも都市化は進まないし、観光地も以前ほどは流行らなくなった。
そういう局面の寂しさというか、熱の冷めた恋のような、何かの痕跡だけが残っている空間の余韻みたいなものを、感じることってありますね。