自分にはもう見られなくても 子や孫が生きる世界のために コロナ後のSDGs
1.コロナ対策もSDGs
新型コロナウィルス感染症対策一色でやや影が薄くなった感のあるSDGsの取組み。例のピンバッジをつけている人も昨年の今頃と比べると減った気がします。とはいえ SDGsの17の開発目標のうち、ゴール3は「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」です。
ゴール3の具体的なターゲットの一つとして、2030年までにエイズ、結核、マラリア等の伝染病の根絶、様々な感染症の対処、があります。新型コロナウィルスは想定外のウィルスだったかも知れませんが、その対策は SDGsの取組みに他ならない、ということです。
達成目標の要は、まずは必要な人すべてにたいするワクチン接種、ということになるのでしょう。気になるワクチンの開発と確保については、8月7日に厚生労働大臣が英国アストラゼネカ社から1億2千回分を確保した、と発表しました。それ以前にすでに米国ファイザー社とも同回数の確保に合意しているそうです。
供給は2021年からですが、3月までにまず3千万回分確保が目標、しかも延期された東京五輪開催を視野に入れて、ということですので、日本全国「すべての人々の~」というレベルに広がるにはまだ時間がかかりそうです。
2.無縁そうで無縁ではない開発目標
話は変わりますが、ゴール12「つくる責任つかう責任 持続可能な生産消費形態を確保する」と、ゴール14「海洋と海洋資源の保全」のゴールのため、その効果については議論があったものの、一つの試みがレジ袋の有料化であり、7月1日にスタートしました。
顧客側は、積極的な賛成、消極的(しかたない、世の中の流れだから)な賛成、あるいはごみ袋への転用で有料でも貰う、さらにはもともと有料だったのですでにエコバッグ等対策済み、といった反応がほとんどのようです。比較的短期間で浸透した、といえるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスのようなわれわれにとって切実な問題や、レジ袋など非常に身近でわかりやすい取り組みには目が届きます。
一方で、ゴール2の「飢餓をゼロに」はどうでしょう。我が国ではほぼ解決済みの問題であり、あまり実感がわかないかもしれません。
我が国ではヨーロッパや北アメリカと同じように「飢餓」とは逆の、フードロスのほうをゼロ(ゴール12)にすることで、必要のない資源の使用削減や環境の負荷低減を期待されている側、にあります。
またゴール6の「安全な水とトイレを世界中に」といった目標はどうでしょう。
我が国は島国なので水は他国に頼らず、時給自足しているように錯覚しがちです。また他国に対してできることもないように思えます。しかしその多くを輸入に頼っている畜産物や農産物の育成に、他国の貴重な水(仮想水 バーチャルウォーター)がどれだけ大量に消費されているか、いう視点を持てば、他国の水事情と決して無関係でないことがわかります。
実感しにくいゴール2やゴール6が、切地球規模では切実な問題として存在し、多くの人たちの障害なっているばかりか、生命にまでかかわっている、という事実があるのです。
つまりSDGs とは、地球規模の参加者がレベルの違った課題に取り組みながらも、結果として全員が持続可能な世界を実現することに貢献する、ということになります。
3.ウィズコロナ時代のSDGsへ
さて、新型コロナウイルスは、間接、直接の差はあるにせよ、われわれ個人、家族あるいは所属する企業や団体に、で大きな打撃を与えました。経済的な困難であったり、ライフスタイルの予期せぬ変化を強いられたり。
もちろん、自分や身近な人が実際に感染したという健康被害はもちろん、これまで感じたことのない恐怖や不安、ストレスに襲われた人もいたでしょう。コロナの影響に半ば支配された半年、と言っても過言ではない気がします。
そんなときに、比較的中・長期的目標で、できることからやり、それをいずれ地球規模で持続可能な世界の実現につなげる、という意識を常に優先させるのは少々困難な気もします。
そう言ってはいけないのでしょうが、「今それどころじゃない」とか、ある特定の産業などは、「コロナでそれこそ持続不可能」というのが本音に近いかも知れません。
ただ前述したように新型コロナウイルスの対応も結果としてはSDGsの目標の一つで、今われわれはそのことに多くの注意を振り向けることが可能です。しかしアフリカのある地域ではコロナ以前の脅威として、マラリアや黄熱病やコレラのほうが身近かつ重大で、平均寿命も60歳に届かない、という人々が多数存在します。
コロナのワクチンよりまず清潔な水が欲しい。そんな人々に比べればどれだけ恵まれているか、と言えなくもありません。
持っていたものや、当たり前だったこと(コロナ前の世界)を失った今、優先してやれることではない、という困難を乗り越えて、できることをやれるかどうか。
コロナ後の世界にあらわれた新たな課題を解決し、持続可能な世界づくりに貢献したい。企業やトップのそういう姿勢を、コロナで価値観や行動様式の変化した顧客や投資家、あるいは若い社員たちがきっと注目しているはずです。
そしてその先にある世界。われわれはもう見ることができなかも知れません。でも子や孫たちがきっとその世界に生きているはずです。彼らのいる世界が今よりもほんのすこし持続可能な世界になっている... そうであってほしい、とは思いませんか。