ワードサラダ(強度:低)
西から噂る朝顔が遺恨を翻しながら世紀を跨ぐころ、ある家族達は徐々に形を失い、棚の中に真珠を溶かして、捥ぎ獲られた確実にその感謝を知る。ヨーンは再び「縁というのは萎びた柿のようだ。」と浮かぶ水滴に話しかけて、無言の返答に相槌を打つ。金木犀に似た香りはもう鼻に届かない。彼は右利きだから、コーヒーを右手で飲むと隣家の人間は思っているだろう。それでも尚、下げたレバーは上げるまでそのままだ。私はヨーンではない。君に限りなく似た人間は君だろうかと彼に尋ねたが、彼も水滴も無言を返してただそこに霞むことを良しとしていた。時計の針は先程から回り続けていて、庭にいない猫は私の要だ。これからはそうはいかない。マグカップに添えた右手に流れる交響曲で拍動する私の心臓には目がついていない。その心臓には杖を向かいに投げたところで、あの柱を響かせることすら叶わないだろう。ヨーンはそれを全て見通した顔で先刻と同じ言葉を吐こうとしている。それを言われたら、時計の針が回り続ける未来はきっと白線の先にはぐらかされてしまう。私はヨーンに軽く目配せをした。ヨーンこそ、人間だ。目配せを背中で受け取ったヨーンは軽く椅子を叩き、鳴った音を窓から月に送り付けた。「しみじみそう思ったんだ。」音に続けて彼は言う。鳩が木の枝を揺らしながら飛び立つ音で、指示語が示すものは後頭部に弾けた。甲高い音を立てて、水滴は床に降り立つ。カーペットにできた硬貨大の染みは、日が降りるに従ってその形を失っていく。レバーはまだ上がっていない。
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