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資金ショートの恐怖とシュガーハイ

起業をする前に覚悟してほしい。

起業をすると、起業家は常にキャッシュ・ショーテージの恐怖との戦いになる。売上がなくても、利益がでていなくてもキャッシュが回転していれば企業は存続できるのだが、キャッシュがショートすると、つまり資金が尽きると企業は存続できない。

だから逆説的ではあるが、スタートしたばかりの1~2人しかいない零細スタートアップは実はあまり死なない。アルバイトしてでもキャッシュは作れるからであり、流出は限界まで減らすことが可能である。

一方で、資金調達後のベンチャーは陣容を急速に整えようとする。当然ながら、そうしないと成長軌道に乗れないからだ。大きめのオフィスに移転し、5人、10人と人を増やせば、当然ながら資金の流出額は大きくなる。

通常、10人程度のスタートアップが安定した売上げを出しているケースはあまりない。市場とプロダクトのフィットを試行錯誤している段階だからだ。その段階では、当然ながらキャッシュは流出を続ける。

従業員を7~8人雇えば、月の資金流出は500万円を超える。たとえ銀行預金に1億円のストックがあったとしても、毎月500万円の単位で預金が減り続けるのは恐怖でしかない。

もし自分で支払いプロセスをやっていれば、月末の支払いは恐怖のタイミングだ。一件一件の請求書が死亡宣告書に見える。経理担当者に任せている場合でも、経理担当者から残高の報告メールを開ける前には躊躇する。できれば寝る前には見たくない。

もちろん、流出している資金は確実に価値に変わっていっているはずだ。その確信があるからこそ起業家は事業を進めることができる。価値を創り出し、その価値を外部に認識してもらうために起業家は全精力を注いでいるからだ。

しかし、短期的な資金ショートよりも起業家が気を付けなければいけないものがある。それは身の丈を超えた資金調達だ。それを行うとシュガーハイ状態に入ってしまうためだ。

シュガーハイとは糖分の過剰摂取による興奮状態を指す。特に子供がチョコレートなどを過剰に採りすぎて興奮状態になっている状況を表すことばでアメリカではよく聞く言葉である。

シュガーハイは必ずしも悪い事ではない。いわゆるドラッグほどの精神高揚をしているわけではないだろうが、頭が冴え自信がみなぎるのを感じ、動かざるを得なくなる。そして、糖分は身体に依存状態を創り出す。

起業家も同じだ。増資による資金調達だけではなく、当然ながら大きな助成金や補助金を獲得できることもあるだろう。多くの起業家はそこでシュガーハイに陥る。世界を征服した気分になる。

しかし、シュガーハイは長続きしない。あまりにも糖分を過剰摂取してしまうと、本来の体力以上に糖分を使うこと、つまり資金流出してしまうことに身体が慣れてしまうことがある。それが問題なのだ。

シュガーハイを繰り返すのではなく、糖分も資金調達も身の丈というのを意識したい。

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