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5軸ルーターの木工にチャレンジ (7)CAMと切削
前回まででCADによる設計図と木材が用意できましたので、あとはこれらをBIESSEに放り込めばでき上がり!
...と行けばうれしいのですが、残念ながらそこまで甘くはありません。次にCAMという作業が待ち受けていました。
CAMとは、CADの設計図を元に、機械の刃をどういう順序にどう動かしていくかを設計することです。
例えば、板からこういう形を切り抜きたいとします。
そのためには、ルーターの刃をこのように動かす必要があります。
このように、一筆書きのコースのようなものを決める必要があります。目標となる作品の形を与えたとしても、どの位置から切り始めるか、右回りか左回りか、といったことは誰かが決めなければなりません。
このくらいの簡単な図形であれば、コンピュータが自動的に判断できそうなものですが、形が複雑になればなるのほど、人間が指示してあげないといけないところが増えていきます。
また、ルーターの刃にもさまざまな種類があり、それぞれに特性が異なります。大雑把に素早く切れる太い刃、時間がかかるけど繊細に切れる刃、先が丸くなっていて曲面加工に向いている刃など。BIESSEには幾つもの刃がセットされていてそれを持ち替えながら切削することができるため、どの部分をどの刃で担当させるか、というのも考えどころです。
というわけで、私がBIESSEに切ってもらいたいと思っている形、
これをCAMのデータにするのは、CAM初めてという私にはとうてい無理ということが判明しました!
そこで、われらが強い味方、VUILD社のエンジニアさんにお願いしてしまいました。(あっさり)
前述のアニメーションは Fusion360 の CAM 機能で作ったのですが(すごい機能充実ぶり!)、BIESSEのための CAMデータは bSolid という専用CAMソフトで作ります。これがまた結構手がかかる子だそうで、私も横で作業を拝見していたのですが、「そこは自動でやってくれよ!」と思うシーンがたびたび。でもさすが VUILD社のエンジニアさんはぐいぐいと設計を進めてくださいました。
その結果、切削の大まかな順番はこんな感じになりました。
まず、板を二つに切って、片方を側面用、もう片方を二本の(犬がかじる骨みたいな形の)梁用にします。梁は上記の例のようにくり抜くだけなので簡単ですが、問題は曲面を多用した側面の方。
この側面には、横から掘る必要のある窪みが二か所ずつありますので、その面を作るために、まず丸ノコで切ります。(BIESSEは丸ノコも扱うことができるのです。)
次に、真横から窪みを掘ります。刃を真横まで傾けて掘り進めることができる5軸ルーターならではの加工です。
続いて、側面の輪郭を切るのですが、下まで切り取らずに上から半分くらいまでで止めます。全部切り離してしまうと、パーツが小さく分かれてしまって材料が固定台からずれてしまう可能性があるからです。
次に球面上にする部分を粗削りしていきます。ここまでずっと直径 25mmという太めの刃で削っていますので、高速に削れます。
それが終わったら先が丸くて細めの刃に持ち替え、曲面を細かく削っていきます。これは時間がかかります。
そして最後に、先ほど途中までで止めていた輪郭を床まで切り落として完成となります。
以上の一通りを CAMソフトのシミュレーションでアニメーションにするとこのようになりました。
bSolidのシミュレーション機能はとてもよくできていて、実際の切削に何分かかるかも表示してくれます。私のは 30分あまりという予想になりました。
さて、いよいよ今度こそ切削開始です!VUILD社のエンジニアさんに教えていただきながら板をBIESSEにセットし、CAMデータを転送して、スタート!
機械が動いている間はリモコンを持ち、動くスピードを調整したり、何か異変や想定外のことが起きた時に止められるように備えます。私もリモコンを持たせていただいて見守りました。切削の様子はこんな感じです。
曲面の加工も最後まで行って、これで間もなく完成!!
というときに、それは起きました...。
わかりますでしょうか。右側の部品は下半分の外周が仕上がっていません。最後に左の部品の外周を仕上げることで左右が切り離され、次に右の部品の外周を、というところで右の部品が固定台から外れてしまったのです。
「あああああああ!」という悲鳴とともに緊急停止。幸い刃が部品を傷つけることはありませんでしたが、一度台から外れてしまうと元の位置に正確に取り付けることはもうできません。ここから先はBIESSEを使わずに手作業です...。次回はノコギリを手に頑張ります。
(フジムー)