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ポルトガルでアパートを買って5ヶ月後に手放した話

ポルトガルに来てアパートを買ったけれど5ヶ月後に手放しました。そのアパートのすぐ横の写真がタイトル写真です。川向こうに見えるのがリスボンです。

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今年の3月ごろにidealistaをみていたらテージョ川の横でリノベしたばかりでしかもかなり安い2ベッドルームのアパートが売りに出ていた。すぐにビューイングを申し込んで行ってみるとロケーションがこれまた素晴らしい。テージョ川にそってずっとつづく公園に面していて、窓から川向こうのリスボンがみえる。そしてこの公園には観光客が全然いなくて、静かで、いつも地元の人がくつろいでいる。ベンチで何もいわずに手を繋いで座った老夫婦がゆっくり時をすごしている。なんて素敵な場所なの!(いままでのNoteでいくつか写真を載せています。)不動産はLocation Location Locationっていうし、アパートはすぐに入居可の状態だし、この街は開発がすすんでいるので将来は不動産の値段が上がるのはほぼ確実だし、しかも(ポルトガル人に人気薄の場所なので)安い、といいことづくめではないか!これはお買い得!などと思ってしまったのが失敗だったが、それは今だからわかること。

ポルトガルでローンを組むのは相当面倒くさいので、だったら現金で買えないかと貯金をかき集めてみたら、なんせ安いアパートなのでぎりぎり大丈夫そうだった。賃貸のままでいるにはリスボンは家賃が高いし、東京で中古のワンルームを買うより安い値段だし、しかも大好きなポルトガルでしかもテージョ川に面したアパートを持つことができるなんて、なんて素敵なの。

歩いて10秒ぐらいでこれだもの、判断あやまるわ
リノベしたばかりで綺麗なアパート
レンガが好きすぎたのも判断を誤った理由

と、みなさんも思うでしょうが、先週売りました。

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理由は管理会社に全くやる気がなかったこと。オーナーのほとんどが賃貸で貸し出す目的のアパートだったので、リスボンだの別の場所に住んでいること。そしていろんな交渉にはやはりポルトガル語が必要だったこと。

買うときに「雨漏りがするので屋根の修理が必要です。業者の見積もりはあるけれど修理の予定は決まっていません。」だから安いんです、と見積もりを見せられる。見積もりはそれほど高くはない。しかもオーナーは8人いるし、修理はじめればいいわけねぐらいに思っていたがこれが大変だった。

なんせ8人のうち6人のオーナー達は大家として別のところにすんでアパートを賃貸にしているせいかまったく動いてくれない。そして管理会社にもやる気がない。まず管理会社の尻をがんがんがんがん叩いて最新の見積もりを数件用意させてGeneral Assembly Meetingをひらかせる。それぞれのオーナーに個別に連絡して内容を話して参加するようにうながす。むちゃくちゃ大変な思いで開いたミーティングでみんなで見積もりを比べて業者を決めたがお金がない。管理会社にそれぞれのオーナーの負担分を計算させて請求書を発行させる。個別にオーナーに掛け合ってお金を出させる説得をする。さらに大変だったのは、管理費すら無視している未払いのオーナーがいることで、そいつら(言葉が悪くなってすみません)は屋根の修理になんてお金を出す気がない。なのでやる気のあるオーナーがその分を分担して補充することで合意をえる。やっと修理費があつまり、さあ修理が始まるとなったのが9月だった。4ヶ月かかりました。

ところが、なんとその業者が土壇場で工事をキャンセルした。

今後の対応を練ろうと管理会社に働きかけるがもうまったく梨の礫だし、他のオーナーも途方に暮れるし、そして雨の季節がはじまったので、修理できるとしても来年の夏となる。やる気のない管理会社を変えるにはまたGAミーティングが必要。と、こういう状態は普通ではなく単にひどい状況のアパートだからなのかとも思うが、こんなんが続く可能性があるとすると私にはもう無理。ひと夏の経験で十分だわと売ることにした。仕事でもなんでもストレスの損切り(これからストレスが大きくなるかもしれないと思うとすぐ逃げ出すの意)の早い私です。

それにしても来たばかりの国で言葉できないのによくやったな自分。

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ちまたには 持ち家 vs 賃貸論争が溢れているが、ほとんどは経済的にどっちが得かで比較されることが多く、ストレスの大きさで比較することはあまりない。それはストレスに対する耐性や環境や家の種類や状況やそれぞれのケースで差が大きくて、数字で単純計算できる金銭の損得のようには比較しにくいからだとはおもう。しかしストレスの有無って重要だ。その社会をよく知らなくて現地の言葉もしゃべれないという環境での問題多そうな中古の持ち家はストレス大きすぎた。だって管理会社や他のオーナーとの関係だけではない。もしトイレが詰まったらどうするの?もし電気がとまったらどうするの?もし何かが壊れたらどうするの?もしももしももしももしも、、、で保険にはいっていても心が休まらなかった。

というわけで、先週売れました。よかった、売れてほっとしている。維持していたら値段も上がったのにといわれたが、たとえ10年で倍になったとしてもこんなストレスには10年どころか数ヶ月でも耐え難いし、売らないで住み続けるのなら値段が倍になろうが3倍だろうが関係ないわけだし、ずっと住むとすると程度の差こそあれ同じようなストレスは続くし、賃貸に出したところで維持問題はついて回るし、第一10年後にこの世にいる保証はない。いないかもしれない10年後のお金よりも今のストレスだわよ。

買ったよりわずかに高く売れたが、不動産会社への手数料や税金などを考えると少し損をしたと思う。けれど、その損の部分は5ヶ月の家賃分と楽しい夏で帳消しだよね、ありがとう、とアパートに別れを告げて賃貸に移りました。賃貸は本当に楽です。なにかあったら大家にいうだけ。いやなら引越せばいい。持ち家を維持してる人の精神力ってすごいな。

どうしても家を買いたければ以下のような人かとはおもいます。私はどれにも当てはまりません。

  • 不動産投資家

  • 現地の言葉ができてDIYが大好きなのでなんでもどんどん修理できちゃう人か、そんなパートナーがいる人

  • お金持ちなので新しくて問題の起こりそうもないLuxuryな(一軒)家を、現地の信頼のおける仲介者を雇って、物件の管理会社も隣人達も含めて状況をよく調査させ、そのうえで仲介者が薦める場合のみに買うことができる人

(実は私も現地の仲介者的な不動産屋がいたのだが、”この女”(と呼び捨てちゃう)は売ることしか考えていなかったので物件ヨイショしかしなかった。信頼できない気がすると思っていたくせに、この人の父親が私の大好きなフランスのプロテニス選手のコーチだと知ってつい判断を誤った大馬鹿な私です。)

  • ストレスに強い人
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管理会社や他のオーナーとの葛藤を見ていた息子は、もし次に家をかうなら絶対に一軒家と言う。

うん、もし買うならね。