アドリブ面接試験体験記

ある面接試験の1週間くらい前に内田樹さんの『先生はえらい』を読んで実際に実践してみたことがある。前半が読んだ内容、後半が実際私がやったことである。
ただし、こうしたら上手くいくと言う話ではないので責任は負いませんよ。かなりトリッキーだと思いますので。

参考にしたのは『先生はえらい』後半の「聴き手のいない言葉」と言う章の話だ。
内田樹さんは、大学教授という職業柄面接試験の試験管をする機会があるという。

内田さんの意見を短くまとめると「ありがちな質問に対して、用意してきた文を暗唱しているような答えを聞いていると酷く疲れる」ということである。

内田さん曰く、それは聴き手が誰でも良いという暗黙のサインを感じ取られるかららしい。
当たり前だ。受験生は事前に試験管がどのような人か知らないし、事前に答えを用意してくるのだからその意味で言うと面接はコミュニケーションではない。
その結果、一人一人の意見を覚えるのが苦痛なので何の印象にも残らないらしい。

逆に内田さんが聴いてて楽しく感じ印象に残る人物とは
「思いつきで喋っている人」である。
なぜかというと、試験管もその意見の生成に携わっている感覚があるからだそうだ。
つまり、この意味では面接はコミュニケーションになっていると言うことだ。

私は、その部分を読み尊敬する内田先生がそう言うならと思い、面接官とコミュニケーションしにいくために一切の事前準備なしに面接に挑んだ。
そう、徹底的に準備していかなかった。その場で「思いつくこと」を言うための条件をクリアした。というかその状態では、「思いついたこと」しか言えない。

自分でも記憶にハッキリ残っている場面が2つある。

まず1つ目。
その面接は集団面接形式でまずは、与えられたテーマでグループディスカッションをしろという課題でした。
その際に誰か司会進行役をしてほしいと言われた。

ここで事前準備するつもりはなかったが耳に入っていたことは、司会進行役は難しいからしない方が良いと言うことだ。
でもそのような事前情報は知れ渡っていて、誰も立候補しない。
と言うことで、私が司会をした。

正直、上手くいった気はしなかった。が、まぁ何となく話を回した。
そしてディスカッションが終了し一問一答形式の普通の集団面接に移行した。

その最初の質問が「あなたの長所は?」だった。
ザ・聞かれそうな質問である。
しかし、私の頭の中には何もない。
しかも右端にいた私は「それでは右端の方から」と言われ1番手になった。
私が思いつきで言った答えはこうだ。

「私の長所は、今ご覧いただきましたとおり司会進行であります。すでに詳しく見ていただきましたのでこれ以上言うことはありません。」

これしか言えなかった。
司会進行は得意ではない。
ただ私は見逃さなかった。
あの鉄仮面の試験管の表情が緩んだ。

そこには、試験管と意味の生成を行った確かな実感があった。

次に2つ目。
面接終盤。
来た質問が「あなたは自分を動物に例えると何だと思いますか?」である。

正直、このようなくだらない質問が来るとは予想していなかった。
他のメンバーも予測していなかったようで答えに詰まっていた。
これは思いついた人から挙手制であった。

私は、考え始めたら負けと思っていたので
頭空っぽだがとりあえず手を挙げた。

まず、何でもいいから動物を言って内容はそれから考えようとした。

咄嗟に出たのが

「ニワトリ」

そして、思いつきで喋った内容が
「私は声だけは大きいです。ニワトリもコケコッコーと大きな声で鳴きます。でも私の声が大きいのは自分の弱い部分を見せないために虚勢を張っているんです。内心はびびっていて震えています。、、、、、つまり、チキンってことです」

なんだか、謎かけのような答えが出てしまった。

これは、試験管も笑ってしまっていた。
(これは自慢です)

試験が終わった後、共に面接を受けた人から
「あなたのおかげでリラックスして受けることができた、ありがとう」
と意外な感謝をされた。

後日、良い結果の知らせが来た。
私は、内田樹先生の教えを実践できたと勝手に思っている。


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