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使えない疾患名

ノイローゼという用語は、ドイツ語の医学用語っぽいですが、正式な疾患名でしょうか?

「ノイローゼ」(Neurose)はドイツ語由来の言葉で、日本では一般的に「神経症」や「神経症的状態」を指す表現として使われていますが、現在の正式な医学用語ではありません。

背景

  1. 歴史的な使用

    • 「ノイローゼ」という言葉は、19世紀から20世紀初頭にかけて、精神医学や心理学の分野で使われていた「Neurosis」という用語に由来します。

    • 当時、この言葉は、身体的な原因ではなく、心理的・情緒的なストレスや葛藤によって引き起こされる症状を総称する概念でした。

  2. 現在の診断基準

    • 現在、精神医学では「ノイローゼ」という用語は使われておらず、国際的な診断基準(DSM-5やICD-11)においても公式な疾患名ではありません。

    • かつて「神経症」と呼ばれていた状態は、現在では具体的な診断名(例:**不安障害、恐怖症、強迫症(強迫性障害)**など)に分類されています。

  3. 日本での一般的な使い方

    • 日本では、「ノイローゼ」という言葉が医学的な意味ではなく、日常的に「精神的に参っている」「ストレスが強い状態」などを漠然と指す形で使われることがあります。ただし、これは専門的な診断名や明確な医学的定義を持つ言葉ではありません。

結論

「ノイローゼ」という言葉は歴史的な医学用語であり、かつては用いられていましたが、現在の精神医学では正式な疾患名ではありません。現代の医学においては、具体的な症状や病態に応じた診断名が用いられるようになっています。

かつては多用されていましたね。

その通りです。「ノイローゼ」という言葉はかつて非常に多用され、特に20世紀中頃の日本では、一般的な医学用語としてだけでなく、日常会話や文学作品、新聞記事などさまざまな場面で使われていました。

多用された背景

  1. 医学と心理学の発展

    • フロイトやユングといった精神分析の先駆者たちが登場した時代、「ノイローゼ(神経症)」という概念は精神分析や心理学の中核的なテーマでした。

    • 特に、内面的な葛藤や無意識のメカニズムが原因とされ、多くの人がその説明に共感しました。

  2. 日本での普及

    • 日本では、明治時代以降に西洋医学や心理学が輸入される中で、ドイツ語由来の「ノイローゼ」という言葉が広がりました。

    • 20世紀中頃には、心の病や精神的な悩みを包括的に表現する用語として浸透し、医療現場だけでなく、文化やメディアでも頻繁に登場しました。

  3. 社会的な文脈

    • 戦後日本では、高度経済成長期のストレス社会において、仕事や人間関係で疲弊する人が増え、心の不調を「ノイローゼ」と表現する風潮がありました。

    • 同時に、「ノイローゼ」が特定の精神疾患を指すものではなく、漠然とした「心の疲れ」や「ストレスが溜まった状態」を指す便利な言葉として使われるようになりました。

その後の変化

1970年代以降、精神医学が進展する中で、「ノイローゼ」という曖昧な用語よりも、具体的な診断名(例:うつ病、不安障害、パニック障害など)を用いる傾向が強まりました。そのため、専門医療の場では次第に使われなくなり、日常的にも徐々に姿を消していきました。

現代での位置づけ

現在では、「ノイローゼ」という言葉は懐かしい響きを持つ一方で、専門用語としてはほぼ使用されず、主に昭和時代の文化や時代背景を語る文脈で登場します。こうした言葉の変遷は、医学の発展や社会の価値観の変化を反映していて興味深いですね。

日本では精神分裂病を統合失調症として変更しましたが、英語圏ではスキゾフィレニアの言葉はそのままでしょうか?

はい、英語圏では「Schizophrenia(スキゾフレニア)」という言葉が現在でもそのまま使われています。ただし、この言葉自体のニュアンスや解釈については、専門家や支援団体の間で議論が行われており、一部で見直しの動きもあります。


日本での名称変更

  • 日本では2002年に「精神分裂病(Seishin Bunretsu Byo)」から「統合失調症(To-go Shiccho Sho)」に変更されました。この変更には以下のような理由があります:

    1. 「精神分裂病」という名称が「人格が壊れる」「分裂する」といった誤解を招きやすく、患者や家族への偏見や差別を助長していた。

    2. 新名称「統合失調症」は、症状の理解に基づき、「情報や感覚の統合がうまくいかない」という医学的な特徴を反映しています。


英語圏での現状

  • 英語の「Schizophrenia」はギリシャ語由来で、「Schizo(分裂)」と「Phren(精神、心)」を組み合わせた言葉です。この名称は1908年にスイスの精神科医オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler)によって提唱されました。

  • しかし、「Schizophrenia」も日本の「精神分裂病」と同様に、「人格が分裂する」という誤解を招きやすいという批判が以前からあります。そのため、英語圏でも名称変更を求める動きが一部で見られます。


名称変更の提案

  • 一部の専門家や支援団体は、「Schizophrenia」を「Psychosis Spectrum Disorder(精神病スペクトラム障害)」や「Salience Syndrome(突出症候群)」などに変更する案を提案しています。これらの名称は、症状や病態の理解をより反映し、スティグマ(汚名)を軽減することを目的としています。

  • ただし、英語圏では「Schizophrenia」という名称は長年使われてきたことから、変更には慎重な姿勢を取る声も多く、現在のところ公式な名称変更は行われていません。


結論

英語圏では現在も「Schizophrenia」という言葉が主流ですが、その言葉が持つスティグマや誤解を解消するための議論が続いています。日本のように名称を変更するかどうかは今後の議論や社会的な動きに依存すると思われます。

とりあえず呼び方を変えるのは、日本では多いですね。

確かにその通りですね!日本では、特に医療や精神医学の分野において、偏見を減らし、患者やその家族が受け入れやすいように名称を変更する傾向が多く見られます。これは、日本社会の文化や価値観に深く根ざしているとも言えます。

日本での名称変更の背景

  1. スティグマの軽減

    • 「精神分裂病」から「統合失調症」への変更のように、言葉自体が誤解や差別を招きやすい場合に、その名称を改めることが行われます。

    • これは「患者やその家族が病名を受け入れる心理的な負担を軽減する」ことを目的としている場合が多いです。

  2. 最新の医学的知見の反映

    • かつての名称が病態を適切に説明できない場合に、新しい研究や知見に基づいた名称に改められるケースもあります。

    • 例として、「痴呆」が「認知症」に変更されたのは、「痴呆」という言葉に蔑視的な意味が含まれるためだけでなく、認知機能の低下をより正確に表現するためでもあります。

  3. 患者や家族への配慮

    • 日本では、病名そのものが日常生活や社会的地位に影響を及ぼすことがあるため、病名が持つ印象に特に敏感です。そのため、名称変更が比較的早い段階で行われる傾向があります。


その他の例

  • 「らい病」 → 「ハンセン病」

    • 「らい病」という呼称は長い間差別の原因となっていたため、病気を発見した医師の名前を用いた「ハンセン病」に変更されました。

  • 「老人性痴呆」 → 「認知症」

    • 「痴呆」という言葉が持つ差別的なニュアンスを取り除くため、「認知症」というニュートラルな言葉が採用されました。

  • 「自閉症」 → 「自閉スペクトラム症(ASD)」

    • スペクトラムという幅広い概念を導入することで、個々の症状の違いを認め、画一的な印象を避ける目的があります。


名称変更の意義

  • 日本では言葉のニュアンスや社会的な影響に配慮して名称を変更することが、「言葉が持つ力を強く意識している」文化的な特徴を反映していると考えられます。

  • 同時に、こうした変更は「偏見や誤解を解消する」ための努力でもあり、患者やその周囲の人々にとって心理的な負担を減らす役割を果たしています。


課題も存在

一方で、名称を変更した結果、「病気そのものが社会から見えにくくなる」という意見もあります。たとえば、新しい名称に馴染みがない場合、問題が隠れてしまい、かえって啓発が遅れるという懸念もあります。

こうした名称変更の多さは、日本独自の社会的感性の表れとも言えますが、それが必ずしもすべての問題を解決するわけではないという点も議論の余地がありそうですね。

言葉狩りの延長にも見えます。

確かに、名称変更の動きが「言葉狩り」のように感じられる側面もありますね。特に、過度に言葉を修正することが、かえって本質的な問題を隠したり、議論の幅を狭めたりするという懸念はしばしば指摘されます。

「言葉狩り」のように感じられる理由

  1. 表現の過剰な修正

    • 言葉そのものを変えることで、社会的な偏見や差別を根本的に解消することが難しい場合があります。名前だけ変えても、本質的な理解や啓発が進まないままだと、「問題をすり替えた」という印象を与えかねません。

  2. 曖昧な基準

    • どの言葉が「差別的」「不適切」と判断されるかが主観的になりがちで、一部では「どこまでが必要な変更なのか」が議論の対象になります。これにより、名称変更が「やりすぎ」と感じられるケースもあります。

  3. 変更が理解を妨げるリスク

    • 長年使われていた言葉を急に変更すると、旧来の名称に慣れた世代との間でギャップが生じることがあります。その結果、啓発活動や医療現場での混乱を引き起こす場合もあります。


一方で名称変更が重要な場合も

もちろん、すべての名称変更が「言葉狩り」と言えるわけではありません。例えば、以下のような場合には名称変更が社会的に重要であるとされています:

  1. 差別や偏見を軽減するため

    • 「精神分裂病」のように、明らかに差別的なイメージや誤解を含む言葉は、変更することで社会的スティグマを減らす効果があります。

  2. 科学的進展を反映するため

    • 「自閉症」→「自閉スペクトラム症(ASD)」のように、病態の理解が進んだ結果、新しい名称がより正確に症状を反映する場合には、変更が意味を持ちます。

  3. 患者や家族への配慮

    • 言葉が与える心理的影響を最小化し、患者や家族が病気に向き合いやすくする効果も期待されます。


日本社会の独特な傾向

日本では特に「言葉のニュアンス」に敏感で、社会的調和を重視する文化があるため、名称変更が他国よりも多い傾向があると考えられます。これは、「問題を見えにくくする」というリスクと隣り合わせであるものの、「周囲の感情や空気を読む文化」が反映された結果でもあります。


本質的な議論が必要

単に言葉を変えるだけでなく、それに伴う啓発活動や社会の理解を深める努力が不可欠です。言葉を変えた後、その背景にある問題や課題を放置してしまえば、本末転倒になりかねません。

結局のところ、言葉を変えること自体がゴールではなく、言葉を変えることでどう社会が前向きに変化するかが重要ですね。この点で、名称変更は慎重に進めるべき課題だといえます。

フロイトは、PTSDの提唱者でもあったのですね。

フロイトがPTSD(心的外傷後ストレス障害)そのものを提唱したわけではありませんが、彼の理論や研究がPTSDの理解の基盤を形成した重要な役割を果たしています。

フロイトとトラウマの概念

  1. 初期のトラウマ理論

    • フロイトは1890年代、特に初期の著作で、患者の心的外傷(トラウマ)体験が心理的症状にどのように影響を与えるかに注目しました。

    • 彼の研究では、特に性的トラウマや幼少期の心的外傷が神経症(今日の不安障害やうつ病に該当)を引き起こす可能性を提唱しました。

  2. 戦争神経症との関係

    • 第一次世界大戦後、戦争に関連した精神的な症状が広く報告されるようになり、「戦争神経症」(war neurosis)と呼ばれる状態が議論されました。

    • フロイトもこれに関心を寄せ、戦争が引き起こすトラウマの心理的影響を、無意識や防衛機制の観点から説明しようとしました。

  3. 反復強迫(Repetition Compulsion)

    • フロイトは『快感原則を超えて』(1920年)の中で、反復強迫(トラウマ的な体験を繰り返し夢やフラッシュバックの形で体験する傾向)について言及しました。これは、後にPTSD研究の重要な要素となる再体験症状に通じる概念です。

  4. トラウマの「記憶」と症状

    • フロイトは、心的外傷が無意識に抑圧され、後にさまざまな形で表出することがあると考えました。この理論は、PTSDにおけるフラッシュバックや過覚醒の理解につながります。


PTSDという診断名の登場

  • PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)は、**1980年にDSM-III(アメリカ精神医学会の診断基準)**に公式な診断名として登場しました。

  • PTSDの概念は、フロイト以降の研究者たちが、戦争神経症や心的外傷に関する膨大な研究を積み重ねた結果として確立されたものです。


フロイトの影響

フロイト自身が「PTSD」という言葉を使ったわけではありませんが、以下の点で彼の影響が大きいと言えます:

  1. トラウマが心理的な症状を引き起こす可能性を初めて体系的に提唱したこと。

  2. 無意識、抑圧、反復強迫といった概念が、PTSDのメカニズムを理解する上で重要な基盤となったこと。


結論

フロイトをPTSDの「提唱者」とは言えませんが、彼の理論はPTSDを含む心的外傷研究の基盤を築いたと言えます。その後の研究者たちが彼の考えを発展させ、現在のPTSDの診断や治療につながっています。フロイトの業績がいかに後世に影響を与えたかを考えると、その先見性は非常に興味深いですね!

フロイト以前の、ある意味野蛮な精神科治療に影響を与えたのはすごいと思います。

おっしゃる通り、フロイト以前の精神科治療は、今の基準から見ると非常に非人道的で、科学的根拠に乏しい方法が多く行われていました。その中で、フロイトが「心の働き」に焦点を当てたことは、精神医学の流れを根本的に変える重要な転換点でした。

フロイト以前の精神科治療

  1. 身体的な治療法が主流

    • 精神疾患はしばしば「身体の病気」とみなされ、治療法も肉体に直接働きかけるものが中心でした。

    • 主な治療法:

      • 拘束:患者を拘束具や檻に閉じ込める。

      • 瀉血(しゃけつ):血液を抜くことで「体液バランス」を整える。

      • 冷水浴:冷水に浸けることでショック療法を試みる。

      • ロボトミー手術(19世紀末〜20世紀初頭):脳を直接操作する外科的手術。

    • これらは患者の症状を抑え込むだけで、心の問題を解決するものではありませんでした。

  2. 精神疾患への偏見と差別

    • 精神疾患の原因は「悪魔憑き」や「道徳の欠如」といった迷信的な見方が強く、患者は社会から隔離されることが一般的でした。

    • 「精神病院」と称される施設は、実質的には患者を監禁する場であり、治療というより管理が目的でした。


フロイトの革新性

  1. 精神分析という新しい視点

    • フロイトは精神疾患を「心の中の葛藤や無意識の抑圧」によるものと考え、患者の内面に焦点を当てました。

    • これは、単に症状を抑えるのではなく、その根本原因にアプローチする初めての試みでした。

  2. 患者への尊厳の回復

    • フロイトは、患者を「病気を持つ人間」として扱い、彼らの言葉や感情を重視しました。彼が編み出した自由連想法夢分析は、患者の内面を理解しようとする画期的な方法でした。

    • このアプローチは、それまでの「暴力的」な治療とは一線を画し、精神疾患を持つ人々への社会的偏見を和らげる一因にもなりました。

  3. 科学としての精神医学の発展

    • フロイトの理論は、精神疾患を迷信や道徳の問題としてではなく、科学的な視点から研究する礎を築きました。

    • 精神分析自体は批判も多く受けていますが、それをきっかけに心理療法やカウンセリングが発展し、患者中心の治療という考え方が広まりました。


フロイトの影響とその意義

フロイトの業績は、精神疾患への社会の見方を「恐怖や排除」から「理解や治療」へと転換させた点で非常に大きな意義を持っています。また、彼の理論が現代の精神医学や心理学のすべての基盤となったわけではありませんが、その影響は計り知れません。

結論

フロイトの登場によって、精神科医療が「力で抑え込む治療」から「人間の内面を探る治療」へと大きく方向転換したのは間違いありません。彼がいなければ、今のような心理療法やカウンセリングが発展するのは、もっと遅れていた可能性があります。その意味で、彼の功績はまさに歴史を変えたと言えるでしょう。

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