宇宙安全保障ニュースの定点観測(1/29~2/4)
2024年春から大学院で安全保障と宇宙開発について研究することになりました。この分野には以前から関心を寄せていましたが改めて勉強し直そうと考えています。「宇宙開発と安全保障」に関するニュース記事を読み、noteでアウトプットしていこうと思います。もちろん多くの方にこの分野のニュースについて知ってもらい、概要だけでも理解してほしい!という思いもあります。いつまで続くかわかりませんがやってみます。
ヘッダーImage Credit: Northrop Grumman
✅NorthStarとSpire Globalが民間初のSSA衛星打ち上げに成功(2024/1/31)
🗒RocketLab, NorthStar, Spire
📘米国の民間宇宙企業NorthStarとSpireにより開発された宇宙状況把握(SSA)を行う衛星が打ち上げに成功。
⭐️SSAは政府組織などが行うイメージだが、宇宙からSSAを行う衛星を打ち上げる能力を持つ企業は、地上からの観測を含めたSSAを一歩前進させることになるのではないか。
✅ノースロップグラマン(Northrop Grumman)の衛星燃料補給ノズルが米国宇宙軍の軍事衛星に採用決定(2024/1/29)
🗒Northrop Grumman, SpaceNews
📘ノースロップグラマン製の衛星燃料補給ノズル「Passive Refueling Module(PRM)」が米国宇宙システムコマンド(SSC)の衛星に初の"Preferred"な燃料補給機構として選定された。
⭐️衛星への燃料補給は、スペースデブリ対策・米軍の宇宙空間におけるアセットの基本的機能として重要だろう。燃料残量が少ない衛星に燃料補給をすれば、より長く衛星を運用できることにつながる。なかなか思いつかなかったことは衛星の燃料補給が安全保障へどう影響するか。色々な見方がありそうなので時間をかけて調べてみたいところ。
✅米国国防総省(DoD)はスペースXの「スターシップ」を政府所有の政府運営の資産として引き継ぐ可能性を示唆(2024/1/30)
🗒Aviation Week, Space.com
📘海外メディアAviation Weekによると、国防総省はスペースXの「スターシップ」について、ペイロードを発射するためにスペースXと契約するのではなく、政府が所有する政府運営の資産として引き継ぐ可能性をスペースXに示唆したという。スターシップは敏感で潜在的に危険な任務(sensitive and potentially dangerous missions)のために利用されるとのこと。
⭐️スターシップは宇宙船や宇宙飛行士を乗せるだけでなく、安全保障面からの利用も検討されていると知り、利用できる最新技術はなんでも使おうとするアメリカの勢いを感じた。スターシップは高速2地点間輸送(P2P)での利用が期待されており、安全保障分野では有事が発生した時、物資や人員の供給に使うことができるだろう。
※現在は大型軍用輸送機C-17 Globemaster IIIが大量輸送の役割を果たしてるようだ。
(補足記事)
⭐️垂直着陸できるロケットが登場した今、それを物資輸送などに使おうとする発想自体がやはりすごい(語彙力)
✅フランスの民間宇宙企業Exotrailはスペースタグ(space tug)を開発予定(2024/1/31)
🗒SpaceNews
📘Exotrailの開発するスペースタグは、静止トランスファー軌道(GTO)から最終目的軌道まで運ぶ必要のある小型衛星を搭載。2026年に打ち上げ予定。
⭐️スペースタグの重要性についてよく理解していなかったが、記事中の説明によれば、衛星が静止軌道まで行く推進力を節約するとのこと。もう少し掘り下げて調べてみたい。
✅米国宇宙軍所属の宇宙飛行士がISSへ(2024/1/31)
🗒SpaceForce公式
📘米国宇宙軍のニック・ヘイグ(Nick Hague)氏はNASAとスペースXの有人宇宙飛行ミッション「Crew-9」に参加し、国際宇宙ステーション(ISS)へ。ヘイグ氏は3回目の宇宙飛行となる。
⭐️米国宇宙軍に所属している軍人は「Gardian」と呼ばれる。<軍人>としてではなく、<宇宙飛行士>として宇宙へ行くという認識で正しいのかな。
✅スカパーJSATが同社発のスタートアップ「株式会社Orbital Lasers」を設立 レーザーによるスペースデブリ除去事業を行う(2024/1/30)
🗒スカパーJSAT公式
📘Orbital Lasersは主にレーザーを利用したスペースデブリ除去事業に加えて、衛星ライダー(レーザー光をあて、その反射光の情報をもとにして対象物までの距離や形を計測する技術)を用いた地球観測事業を行う。
⭐️軍事的な利用も含めて宇宙空間を持続的に使い続けるためにはスペースデブリの対処が重要。レーザーを使用したデブリ除去の技術は軍事的にも転用可能な、いわゆる「デュアルユース」技術だと思う。機微な技術を国内でどのように扱っていくのか学術的な観点から興味深い。また市場を広げる際に、海外との交渉でどういった点に留意して技術を扱っていくのかも興味深く、このあたりの技術管理は大学院でもう少し勉強する予定。
(番外編)
・中国・上海で開かれている展覧会「中国有人宇宙プログラムの達成(Chasing Dreams Across the Universe: Exhibition of China's Manned Space Program Achievements)」の様子を国営メディアCGTNが中継しながら解説。これ、なかなか良い。
ちなみにCGTNは「SPACE CHINA」という中国の宇宙開発に特化した英語のサイトがある。
(他の記事)