【2人声劇】天狐にお任せ!2
■タイトル:天狐にお任せ!2
■キャラクター
神様:女 ※性別変更あり
堕落している神様
神主からズタボロに罵倒されることもあるが、今日も負けずにだらけている
人々からの信仰心で体を保っているため、定期的に体が透ける
神主:男 ※性別変更あり
ある神社を一人で切り盛りする神主
神様のやる気でご利益(りやく)が左右されるため日々ドキドキしている
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神様:ぬぐ…いや…まだだ…!!あっ…待って…!!
うがあああああああ!!チート!こいつチートです!!
神が言うのだから間違いありません!天罰です!こいつに天罰を与えます!
神主:ふんっ!
(神主が神の頭上にチョップを落とす)
神様:いだぁ!?何するんですか!!
神主:何するんですか、じゃないですよ
今何時だと思ってんですか
神様:昼の…27時です
神主:早朝3時です!神のくせに何時間ぶっ通しでゲームしながら騒ぐつもりですか!
うるさくて眠れないですよ!
神様:しょうがないではないですか!!こいつがチート使うんです!神だって叫びたくもなります!天罰を与えなくては気がすみません…!!
神主:そんなことで天罰与えないでくださいよ…神力(しんりき)の無駄使いです
アホなことしてないで静かにしてください
神様:ぐぬぬ…しょうがないですね…そこまで言うなら通報くらいで許してやります…!
…あれ!?なんで私が垢BANされるんですか!?…はぁ!?繰り返し虚偽(きょぎ)の通報をしたため!?違います!あれは間違いなく違法なプレーヤーでした!
運営に抗議してやります!徹底抗戦です!!
神主:はぁ…救えねえ…
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神様:(NA)
ここは江戸時代から続く由緒正しき神社…天狐神宮(てんこじんぐう)
狐(きつね)の神であるこの私が与える様々なご利益(ごりやく)によって地域の皆さまから愛される神社です
神主:(NA)
突然ではございますが…神とは天上に住まわれる超常(ちょうじょう)の者、自分とは全く異なる次元の存在だと思い、神を身近に感じられない方も多いのではないでしょうか
しかし我が神社はその点はご安心いただけるかと思います
神様:今のはラグ!!ラグです!!普段の私ならそんな低俗なるコンボを食らうわけがありません!ネットの通信が悪いのです!!
神主!うちのWi-Fi今すぐ買い替えてください!!5Gの爆速を所望します!!
神主:(NA)
もはや堕天してるでしょ、こんなの
神主:…はぁ、神様
いかに神であろうとも、下手であるならコンボはもらいます
自らの未熟をお認めになられることが上達の一歩かと思いますが?
神様:いいえ、違います!
神とは、人という存在のはるか高みに存在するのです!
私がいかなる時も確定即死コンボを繰り出し、相手は無惨にもコントローラーを叩きつける結末以外は全て不正かネットエラーです!
神主:それはもはや神様がチートをお使いでしょうが…
最近、Vtuberとしての活動もサボっておられますし、参拝客の願いもしばらく叶えてないですよね?
手先もゆっくり透けてきてますし…そのうち消えてしまいますよ?
お願いですから働いてください
神様:ふふふ…この神の考えは、脳みそが3G回線のあなたではわからないでしょうねぇ
神主:脳みそがフロッピーディスク程度しかない神様と比べればマシです
で?何か考えがおありなのですか?どうせろくでもないことでしょうけど
神様:ふふふ…これを見て下さい!
神主:ストリクトバトラー…Eスポーツ大会…?
神様:その通り!最新格闘ゲーム、ストリクトバトラー8、通称ストバトのEスポーツ大会が開かれるのです!!
そしてここを見てください!!
神主:優勝賞金500万円…!?
今のテレビゲームの大会ってこんなに賞金出るんですか!?
神様:フハハハハハ!その通り!テレビゲームだなんて古(いにしえ)の呼び名を扱うあなたでもこの凄さがわかるでしょう!
私はこの大会で優勝し、賞金でゲーミングマウスとヨギボーを買うのです!
欲しかったアニメの円盤とか…あ、行くか迷ってた2.5次元ライブも行けますねぇ…
うへへへ…よだれが止まりません
神主:もはや煩悩の化身ですね…うわっ!この大会、参加費5000円もしますよ!
神様:そんなの、500万円と比べれば目くそ鼻くそでしょうが!
神主:それ使い方間違ってますよ?
だいたい、このような大きな場となればいわゆるプロゲーマーと呼ばれる方が出場されるのではないのですか?
そのような方と対戦して、神様が勝てるとは到底思えませんが…
神様:そんなに言うなら試してみますか?
私はこのゲームの発売日から生活の全ての時間を捧げているのですから…その腕前はまさに神の御業(みわざ)です!
神主:はぁ…試すのはいいですけど…僕そのゲームしたことないですよ?
神様:やり方教えますので…はい、コントローラー
神主:…わかりました、じゃあやってみます
神様:(NA)
ふふふ…神主が私の大会出場を渋ることくらいわかっていました
こいつは普段、将棋とクロスワードばかりの枯れ切った休日しか過ごしていない…こないだなんて、スマホゲーム進めたらテンプルランしてやがりましたし…最新ハードの最新ゲームになんて対応できるわけが無いのです
これでアホほどボコボコにして、私の凄みを見せつけ大会出場を許諾させてやりますよ…
神主:…えっと、ここがなんですか?
神様:ほら、そこのボタンが弱攻撃で…そこが強攻撃…あ、それガードです
神主:はいはい…なるほど…あ、これが必殺技…うわぁ綺麗な映像ですねぇ…
神様:よし!それだけわかれば十分です!好きなキャラを選びなさい!!
神主:じゃあ、この安心する見た目のおじいさんにします
神様:では私はこの空手家にします
それではやりましょう!レディファイトです!!
神様:(NA)
ふふふ…神主が選んだのは、コマンドの難易度が全キャラトップレベルのテクニカルな投げキャラ…対して私が選んだは見た目に反して強力な飛び道具を持っている環境キャラ…
相性的にも完全に私が有利!この試合…負ける要素が一握(ひとにぎ)りたりともありません…!!
(神様の台詞にかぶるように、神主の台詞in)
神主:はい、飛燕双翼落花投(ひえんそうよくらっかなげ)です
神様:あれぇ!?必殺技が決まってる!!い、いつの間にこんなことに!?
神主:いつの間にって…一緒に対戦してたじゃないですか
いやぁ、結構難しいですねぇ
神様:はは…ははは…ビギナーズラックって奴ですよ…というか、初回だから勝ちを譲ってやったんです!もっかい…もっかいやりましょう!!
神主:はぁ、わかりました…
神様:(NA)
おかしい…確かに考え事をしていたことは否めないですが…神主ごときに負けるわけありません…油断…そう、油断ですよ…!でなければこんな奴に負けるわけが…
神主:はい、昇蒼龍崩玉落(のぼりそうりゅうほうぎょくおとし)です
神様:超必殺技!?ちょっと待ってください!
神主:なんですか?もう一戦ですか?
神様:いやいや!どんなチートですか!?
初めてプレイする人間の動きじゃないですよ!?
神主:チートだなんて、また神様はそうやって…
神様:そんな言い訳みたいな話じゃないです!!
ちょっとコンピューターと戦ってください!
神主:え?まぁ…いいですけど…
神様:(NA)
神主は気づいていませんでした
連日巻き起こる神の奇行によって研ぎ澄まされた危機察知能力は、元来やればだいたい何でもできる神主のゲーミングレベルを達人の域に押し上げていたことを
なんとなくなぁなぁで押し切られたり、非情になり切れず神のゴリ押しを受け入れる普段とは違い、ここは勝ち負けを決するゲーム
その危機察知能力が遺憾(いかん)なく発揮されていたのである
すなわち…真相は…
神主:ここはガードから白虎捻転脚(びゃっこねんてんきゃく)ですね
神様:もはや予知と言えるレベルに昇華された先読み能力…!!
神主:思ったより楽しいですね、神様
神様:…神主よ!!
神主:は、はい?
神様:これは…いけます!!
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神主:えぇっ!?僕が出場するんですか!?
神様:その通り!
前回の物販のおかげで私のファンの間では神主の顔も知れ渡っている…
私と一緒に会場に赴(おもむ)けば、それだけでファンを沸(わ)かせることができるでしょう!
神主:とはいえ、僕は今日ゲームを始めた初心者ですよ?
神様:神主の腕前は初心者の域を大きく逸脱しています
大会開催までの1ヶ月があれば、問題なく調整可能です
神主:はぁ…そんなできるわけない目標のために頑張れませんよ…
神様:神主…あなたは何か思い違いをしているようですね
神主:え、どういうことです?
神様:これを見てください…この資料は神社にやって来る男女比と年齢層をまとめたものです
私の活動によって、若年男性層が増えているものの、まだまだ高齢者層が多いのが現状…
しかし、狐の神の加護を得た信徒(しんと)が大会で無双すれば…どうでしょうか?
ゲーマーの参拝者が来るとは思いませんか!
神主:おぉ!確かに、今まで来ていただけていなかった層を呼び込むチャンスかもしれないですね!
神様:そうでしょうそうでしょう!
神主が頑張れば新たな参拝者が手に入る、私が参拝者を救えばくっきりした肉体が手に入る!
口コミ爆増、お賽銭増額、ガジェット増設!みんなウィンウィンです!
神主:なんだかそんな気がしてきました…ってあれ?なんか変なの入ってませんでした?
神様:入ってません!それではレッツ!特訓です!!
神主:(NA)
と、いうことで…僕はストバトの大会に出るべく、神様による特訓を強制されることになったのでした
神様:神主はあり得ないレベルの先読みによってある程度の相手なら完封できますが、上位ランカーとなるとそうはいきません
全ての相手の先を読めるようになるのです!まずはオンラインに潜って上位ランクとなり、プロゲーマーとマッチングするレベルまで行きましょう!
神主:神様じゃ相手になりませんもんね
神様:黙りなさい!無駄口をたたく暇があったらさっさと敵を打ち倒してレートを上げるのです!
神主:…あの、僕仕事あるんで、ある程度で切り上げたいんですけど
神様:駄目です!ウェブサイトにも一身上の都合によりしばらくお休みって書いておきました!
神主:え、うちの神社、僕が知らぬ間にウェブサイト作られてんですか!?
神様:細かいことは気にしなくて良いのです!だいたい優勝すれば500万ですからちょっと休んでも平気です!私も配信活動で小金(こがね)と信仰集めておくので!
とにかくレートが上位勢に食い込むまでこの部屋から出しませんからね!神力で鍵かけておきます!
神主:えぇ…わかりましたよ…もぉ…
神社ぐちゃぐちゃにしないでくださいよ…
神様:(NA)
とは言ったものの、メキメキと腕をあげた神主は大会直前には上位10%に食い込むレートまで腕を上げたのでした
そして…本番当日…!
―――――――――――――――――――――
神様:来ましたね…!大会会場!!
神主:ほんとにマジでお願いしますけど、絶対神様ってバレないでくださいね?
神様:大丈夫です!神力で認識を歪めているので、私の顔を誰も覚えることはできませんし、写真なども絶妙にピンボケします
今の私は他の人間からはただの可愛い女の子にしか見えていません…かわいいですよね?私
神主:はいはい…かわいいです
あ、僕、受付終わったら地元紙からの取材があるので、時間潰しててもらえます?
神様:え!?なんで神主だけそんなの受けるんですか!?
ずるいです!私も受けますl!!
神主:選手じゃないのに何話すつもりですか
ゲーム大会に出る神主なんて概(おおむ)ね存在しないから面白がってるだけですよ
罰当たりって言われそうですし…炎上しないように当たり障りないこと言ってくるんで、邪魔しないでくださいね
神様:わかりました!
神主:…やけに素直ですね
神様:素直はいいことじゃないですか?ね?ね?
神主:まぁ、はい…じゃあ、行ってきますね
(その場から訝しげに歩き去る神主)
神様:ふっふっふ…さて、やりますか…神様活躍タイムです!
―――――――――――――――――――――
神様:(NA)
無事開催された大会には名だたるプロゲーマーが出場されており、会場は熱気に包まれていました
そんな中…
神主:あ、それ確定してないので割り込み入ります
7割削って…終わりです
神様:え!そのコンボつながるんですか!?
神主:技の発生の後、3フレーム以内にコマンド入れれば繋がります
こんな感じで
神様:手の動きキモっ!
神主も人間やめてるんですか…?
神主:やめてませんよ失礼な…しかし、思ったより相手の動きが悪い気がしますね…
神様:お?イキりマウントですか?
神主:違います
今対戦したドンうどん選手もオンラインで対戦した時はもっと手ごわかった気がするんです
神様:そりゃそうですよ、私頑張りましたから!
神主:…え、どういうことです?
まさか不正を…!
神様:違います!神聖なる私がそんな愚かな行為に手を染めるわけないじゃないですか
神主:じゃあ…何したんですか…?
神様:逆ですよ…彼らのツールを神力で解除してやりました
神主:ツールって…もしかしてプロゲーマーの方々がチートツールを?
神様:えぇ、ドンうどんの実況見ててジャストガード率がなんか高いなぁと思ってたんですよ
一定の条件下で自動的にガードを行うツールを仕込んでました…発売すぐのゲームは意外とこの辺緩いですからねぇ
投げとガードはコマンドが違うので、元々コマ投げキャラ使いの神主はそこまで恐れることのない相手でしたが、打撃も通るとなればその勝率は考えるまでもありません
神主:ほかの対戦相手も同じ感じだったんですけど、みなさんツールを?なんか偶然にしてはできすぎているような…
神様:いやぁ…私の神力で…ちょちょっと…ツールを入れている選手を調べて…ぺぺんって神主とマッチするようにしむけたのです…
神主:それも不正じゃないですか…!
神様:神力でやってるのではたから見たらただの偶然の産物です
証拠は何もあがりませんよ!
だいたい、くじ引いたってそうなるかもしれないんですからギリ不正じゃないです!
さぁ、このまま決勝まで駆け上がりましょう!!行け!神主!
神主:やれやれ…がんばりますよ…
―――――――――――――――――――――
神様:(NA)
神主がここまで余裕を持って勝ってこれたのは、相手が不正に頼って戦う程度の相手だったことも起因しています
しかし、決勝戦の相手は不正など一切行っていない生粋のゲーマー
ここが神主最大の正念場となったのです…しかし
神主:っつ…はぁ
神様:どうしたのですか?
神主:いえ…何でもないですよ…
神様:…神主、その手を見せてみなさい
神主:何もありませんってば
神様:なら見せれるはずです、さぁ!
神主:あっ…!
神様:これは…指の皮がボロボロではないですか…
数フレームの間にコマンドをねじ込むだなんて無理があると思っていましたが…やはり、リスクがある技だったのですね…
神主:どちらかと言えば神様の無理やりの特訓のせい…
(神主の台詞を遮るように)
神様:こんなに無理をしてまで…あなたという人は…
神主:…まぁ、どんなにクソだったとしても…部屋に閉じこもって深夜まで奇声を上げ続けながら娯楽に身を投じるゴミニートだとしても…あなたは我が天狐神宮が奉(たてまつ)る神なのです…
そんな方からあなたならできると頼られたら…頑張っちゃうじゃないですか…
神様:…神主……それちゃんと奉れてます?
神主:気にしないでください神様!これくらい大丈夫ですよ!最後の一戦ですから…!
これで僕の指が終わったっていい…それで勝てるのなら…本望です
神様:手を…
神主:へ?
神様:我が神命に基づき…彼の者の傷を癒したまへ
神主:ち、ちょっと神様…!何を!!
目立つ神力は神様バレのリスクが…!
神様:我が信徒が傷つくのをみすみす見てはいられません
私がそのようなミスを犯すことなどありえませんしこれくらいの不正は…目を瞑ってくれても良いでしょう?
神主:…ありがとうございます…この試合絶対に負けません!!!
―――――――――――――――――――――
神主:…負けました
神様:普通に負けましたね
神主:いやぁ強かったですねぇ、さすがはプロゲーマー
感服です
神様:…………何なんですか!!めっちゃ勝つ雰囲気だったじゃないですか!
神主:そんなこと言ったって!見てたでしょ!コンボ始動技貰ってから見たことないコンボで10割持ってかれましたよ!!
実況ももう実況できてなかったじゃないですか!!
あ…うぇ…まだ続いて…反撃ぃできない!きめたぁぁあぁ!!って!
先読みとかのレベルじゃなかったですって!
神様:ぐぬぬ…あぁ…私の500万円がぁ…
神主:まぁまぁ、二位でも多少の賞金はもらえましたし、よかったじゃないですか
神様:確かに!それでお揚げ食べに行きましょう!
駅前のうどん屋さんのきつねうどんがいいです!
神主:はは、わかりました
行きましょうか
神主:(NA)
新たな挑戦はいつだって面倒なものだ
それは時として恐怖を伴うこともある…
神様:(NA)
しかし、一歩踏み出した先には輝かしい未来が待っているのかもしれない
そう、勇気を持つ者にふさわしい…何かが…
―――――――――――――――――――――
神主:…お賽銭がめちゃくちゃ増えてる!
神様:ほらね!言ったとおりでしょ!
これ増収ですよね?余裕出てますよね?私のおかげですよね!!
ゲーミングマウスとヨギボーを所望します!!あ、DLC出るのでプリペイドカードもいいですか?推しがガチャで排出される予定もあるので、ちょっと多めに…20枚ほど!
神主:調子に乗るな!
(神主が、神様にチョップする)
神様:あいたぁ!?
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