優秀だけど「負の外部性」が大きい人の扱いは難しい
仕事はちゃんとこなしていて業績も十分な人、なんなら仕事が早いと言える人がいたとしたら、一般的には「仕事ができる人」とみなされることでしょう。
それは素晴らしいことだ、こういう人こそ褒めて報酬も上げるべきだと思われるかもしれません。
この条件だけ聞いたら確かにもっともではあります。
ただ、厄介なのはしばしばこういう人の中には「負の外部性」を持つ人が混ざってることなんですよね。
つまり、その人個人単位では仕事をよくこなしてはいるけれど、その代わり他の人の仕事の効率を下げてしまっている場合があるわけです。
読影レポートで言えば「確かに○○先生は読影は早いのだけれども、レポートの記述が簡潔すぎたり、読みにくかったり、場合によっては不正確であったりして、次に読影する人がむしろその解読やフォローに無駄な労力を割かれてしまう」ってことがあります。
あるいは、(他の業種の方の仕事の内容には詳しくないので想像ですけれど)エンジニアの方なんかでは「本人自身がコードを書くのは確かに早いけど、可読性が悪いとか、ドキュメンテーションが甘いとかで他の人が困ってる」ってことはありそうに思います。
多分、こういう類の話はどの業界にもあるのではないでしょうか。
理想的には、そういう周りへの悪影響の有無も含めてしっかり人事評価できたらいいのでしょうけれど、往々にしてそういう周りへの悪影響というのは客観的に測定しがたいものです。
周りへの迷惑の程度はひどくなりすぎない程度のギリギリ怒られないラインを攻めて、客観的に評価しやすい個人の業績だけひたすら伸ばし切るのが、割り切った個人の戦略としては合理的になってしまうんですよね。
とはいえ、それでもまだこれぐらいのレベルの問題ならみんなの努力や工夫でなんとか改善できる可能性もあります。
しかし、世の中にはもっとひどいパターンとして、本人は優秀で仕事はできるけれども、ひどくパワハラ体質であるために、同僚や部下が萎縮してチーム全体としては仕事の効率や質が下がってしまってるなんてことがしばしばあるわけです。
そして困ったことに、そもそもそういう性格であるからして、こういう人物に介入して状況を改善させるのは極めて困難だったりします。
たしか書籍『Think CIVILITY』にも、こういう周りの方を萎縮させるような無礼な人物はチームのためにならないので、いかに本人が優秀でもむしろ辞めさせたほうが良いと述べられていました。
冷酷なようでも、健全な職場作りのためにはまあやむを得ないのかなとも思います。
ただ、困ったことに、現実にはそもそもそういう人物を辞めさせようにも辞めさせられないのですよね。
(このツイートの事例において当該人物にほんとうに態度に問題があったかは不明ですが)このツイートに言われるように、一般論としてはたとえ本当にパワハラな態度の人物であったとしても辞めてもらうのは容易ではないのが現実です。
むしろ、その人物の性格を考えると普通の人物よりもなおさら難しいとも思われます。
江草も最近、某大学病院でのパワハラ的な噂を耳にしたのですが、かなり上層部まで問題として上がっていながらも、その問題の人物をどうにも辞めさせることができない状況に陥ってる様子でした。
つまり、結局パワハラ被害を訴えた人の方が泣き寝入りしてる状態ということになります。
いかにその問題の人物が優秀で「エラい人」であったとしても、ことこうなってしまうと、やる気がある優秀な人がどんどん離れていったり意欲を失ったりしかねないわけですから「負の外部性」があまりに大きいと思うのですよね。
こういう話を聞くにつけ、優秀だけども大きな「負の外部性」を持つ人をどう扱うべきかは、組織レベルだけでなく、社会レベルの規模の難題だなとつくづく思います。
せめて、そういう「負の外部性」が大きい人たちに権限が集中しないように可能な限り社会的に工夫をする必要があるように思います。
辞めさせられないなら辞めさせられないで、その悪影響を最小限にするようにするべきではないでしょうか。
まあ、これすら「言うは易し行うは難し」ではあるのですが。
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