育児と仕事の両立は難しい
子どもが発熱して呼び出されたり、子どもから風邪をもらってこっちも体調不良になったり、という展開をずっと繰り返してると、やっぱり育児と仕事の相性というのは悪いなあと思います。
世の中では(なんなら政府も積極的に)「育児と仕事の両立!」と謳ってますけれど、まあ正直難しいのではないかと。少なくとも世間や政府が思ってるようなイメージでの両立は無理じゃないでしょうか。
もちろん、育児や仕事はそれぞれ悪いものではないんですけれど(もっとも「仕事」の方にはどうにも肯定しがたいブルシット・ジョブも混ざってますが)、食べ物の相性みたいなもので、「食べ合わせとして悪い」んですよね。
たとえば、みんな豚肉が好きでパイナップルが好きだとしても、「酢豚にパイナップルが入ってると嫌」みたいになるでしょ(ここでは「酢豚にパイナップルは合う派」による異論は無視します)。
どちらも単独では好きだし、食べたいけれど、「合わせて同時に食べるのは難しい」みたいな。どちらにも罪はないけれど、両立ができない。
急に呼び出されて、その場にいて対応をしないといけなくて、そしてそれがいつ解決するかも不透明。なんなら自分も寝不足になったり風邪をもらって不調になる。まあ、正直これでは集中もできないし、見通しが立たないので仕事はかなり制限されちゃいますよね。
子どもの熱発対応の点だけ見ても、育児と仕事の相性がかなり悪いのは現実として否定しがたいでしょう。
なお、こういう議論では、「病児保育を充実させよう」みたいな話が常に出ます。
もちろん、ありがたいし、もっともな意見ではあるんですけれど、病児保育が充実したとしても、突然の発熱時に迎えにいくとか病児保育の予約などの臨時対応をしないといけないのは変わりませんし、夜には結局、不調で不機嫌な子どもの看病が待ってるので(そうこうしてるうちにこっちにもうつる)、やっぱりかなり大変です。
てか、「病児保育」もいいですけど、親が体調不良の時に子どもをみてくれる言わば「病親保育」の方向性が乏しいのはどうなのでしょ。親自身が体調不良でしんどい時に育児家事するの当然ながら大分きついんですよね。これ親自身がしんどくって送り迎えもつらい状態の想定なので、預け先があればいいってもんでもないですからね。(なんなら感染リスクがあって家にヘルプの人を呼べないケースもある)
で、もっと身も蓋もないことを言ってしまうと、病児保育が充実したとしても、それは「社会の誰かが代わりに育児をしてくれてる」ということに過ぎないんですよね。「育児と両立している」というよりも「育児を外注している」という方が適切な状況です。
この場合、育児を受注してる保育士さんたちの立場はなんでしょう。
「保育士さんたちは育児が仕事だから、つまり育児と仕事を両立しているのだ!」と言うのでしょうか。なるほど、物は言いようですね。
仮にその理屈を受け入れたとしても、では、世の中で言ってる「育児と仕事の両立!」が「みんな保育士になりましょう」という想定で言われてるかというと、正直そうではないですよね。
ぶっちゃけ世の中の「育児と仕事の両立!」は、「育児を外注して、もっと自分の能力を引き出し、生産性が高く経済に貢献し、自己実現を図れる仕事をしましょう!」と、こういう感じでしょう?別にみんながこぞって保育士を目指してる感じは見受けられません。
だとすると、誰が育児を担うのでしょう。「育児と仕事の両立」という建前の「育児の外注推進」運動において、では誰が育児を受注するのでしょう。
ここで結局、「非育児系の仕事」をすることに皆が躍起になってたり、そうした「非育児系の仕事」ばかりを称えたり高い報酬を与えたりしているならば、当然ながら育児を担う人が足りなくって、個々の家庭だけでなく社会的な意味においても育児と仕事の両立は成立しえなくなるでしょう。
だから、真に「育児と仕事の両立」を言うのであれば、むしろ(非育児系の)仕事を減らすしかないんですよね。みんなが仕事ばかりしていたら、育児する人はいなくなるわけで、決して両立には到達しないのです。
そうなると、仕事をしていなくて育児をしている場合でも、収入が保障され生活面での安心が得られなくてはなりません。(あるいは「育児=仕事」である保育士さんなど育児関係職種の待遇を向上する必要もあるでしょう)
ただ、これが、どうにもなかなか世間的に受け入れられないんですよね。
「育児してるだけでお金をもらえるなんておかしい」だとか、「働かざる者食うべからず」だとか、「No work, no pay.」だ、などと。
これ、報酬を出さないだけでなく、育児という活動そのものに対する敬意も払っていない思考です。
社会的にこの思考が変わらないから、みんなが仕事依存のままで、育児と仕事がいつまでたっても両立されないのだと思うのですけどね。
いやはや、育児と仕事の両立は難しいですね。