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視野内モニタサイズの大型化

たまたま立て続けに、複数名のテレビを買い換えたばかりの家に行く機会がありまして。別にテレビ拝見目的で訪問したというわけではなくって、行ってみたら「最近テレビ買い換えたんだよ」と言われたという流れ。

で、聞いてみると、だいたいモニタサイズは大きくなってるわけです。さすが最新機種だけあって、すごく薄いし、画質もすごくきれいなんですが、画面としては大きいサイズが選ばれてると。昔よりインチ当たりのコスパも良くなったとかいうこともあるのかもしれませんが、本人たちが欲しいと思わなければ大きいサイズにはなりませんから、あくまでユーザー自身が大きなモニタを選好していることには違いないでしょう。

また、スマホの画面も徐々に大型化していると聞きます。iPhoneもminiが出なくなって、むしろMaxみたいな一回り大きなサイズが強く推されています。折りたたみスマホなんていう、画面をより大きく使うことに特化した端末もありますよね。

リビングの大型テレビと、パーソナルユーズのスマホと、互いにサイズ感が異なるデバイスではありますが、その実、ユーザー視点で見ると、いずれも「視野内モニタサイズ」が大きくなってる点では共通してるように思われます。

テレビよりはサイズとしては全然小さいながらも、スマホは超至近距離で見ますからね。昨今のスマホ自身の大型化もあいまって、実質的な視野内でのモニタサイズとしてはけっこう大きいわけです。

たとえば、江草の子ども時代なんて、テレビって家具の一角にちょこんと置いてあるものであって、「テレビが壁の一面を広く占める」って感じではなかったと記憶しています。ミニコンポとかと並んでおいてあるみたいな。(なんとも歳がバレそうな話ですね)

だから、当時はテレビを見ると言っても、あくまで視野内の一部に過ぎなかった。でも、そんな小さい画面でみんな楽しんでいたんですよね。(もっとも子ども心に「もっと大きく見たい」と思ってテレビに接近して「近すぎ!」と親に怒られるということを繰り返すわけですが)

ゲーム端末だって昔は小さい小さい画面でした。携帯電話だってブラックベリーみたいにモニタがキーボード部分に押されて限定的なサイズというデザインが普通でした。

それが今や、「視野内の大部分がモニタ」ということが普通にできるようになったと。臨場感、没入感などを追求したいという人の欲のなせる技なのでしょうか。ともかくもガッツリ視覚効果に浸かることができる時代になったわけです。

そうそう、今、存在を思い出しましたが、VRもまさにこのトレンド通りのデバイスですよね。なにせVRは視野全てがモニタに置き換わるのですから。視野内モニタの極大化の極致と言えましょう。


もっとも、江草は、別にこのトレンドを批判しようというわけではありません。なにせ、江草自身「できればモニタは大きい方がいいなあ」派でもあるので、すごく気持ちは分かるんです(放射線科医は仕事で普段使ってその強さを知ってしまってるので大画面好き多そう)。

ただ、ふと思うのは、ここまで万人のトレンドとして「視野内モニタサイズ」が大きくなって来てるのだとすると、それは裏を返せば「モニタの外に対する関心の低下」の反映とも言えるのではないかと。すなわち、もうみんな「モニタの外なんて見たくない」ということかもしれないなと。

たとえば、テレビを見てる時に視界の端に映り込むミニコンポや本棚の姿なんて「ノイズ」だから見たくない。スマホを見てる時に視界の端に映り込む通行人や街角の風景なんて「ノイズ」だから見たくない。
モニタに映りだされる有意義な「シグナル」をこそドップリ見ていたいと。

「個室化」と言ってもいいかもしれません。視野内をモニタで埋め尽くすことによって、その場に不要な「他者」の侵入を退ける、自分専用のバーチャルな「個室」ができあがるわけです。「外は要らない、中にこもるぞ」と。

スーパーインドア派の江草としても気持ちはとても分かるものの、ここまで徹底した「他者」排除が進むとなると、それはそれで一抹の不安を感じないでもないのですよね。なんか、本当に私たちはモニタ以外のものを見なくなってるような気がして。

まあ、たかがテレビサイズで世相を語ろうというのは無茶ではあるのでしょうけれど、でも一応テレビはまさしく「社会を映し出す窓」みたいな存在ですしね。意外と世の中を反映してるかもしれませんよ。

ちなみに、我が家では実は逆に今ある大型テレビを捨てて小型テレビにサイズダウンしようという計画が進行中です。単純に子どもも居て家が手狭なのでリストラ対象筆頭になったのがテレビってだけの話ではあるんですが、内心では現行の「視野内モニタ大型化」に対しての違和感や反発心が大きくなってたという事なのかもしれません。

あと、似たようなデバイス社会論を以前も書いてます。周期的に書いてるのでおそらく江草はこういう切り口がけっこう好きな模様です。ご参考まで。


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江草 令
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