見出し画像

展示会散歩 佐藤可士和展

 浅学ながら、私はこの展示会に行くまで「佐藤可士和」と言う方のお名前を存じ上げなかった。配偶者に誘われ、展示会を見ること自体は好きだからと向かったが、正直どんな人だろうと思い巡らすことすらできずにいた。しかし、入り込んですぐに私の記憶にある彼の仕事が目に飛び込んできて、進めば進むほど私の日常は彼の仕事で溢れていたことを知った。

 セブンイレブンに、ユニクロに、楽天に、今治タオル。よく目にして、そして日常に溶け込んでいる様々なロゴたち、それが佐藤氏の作品である。ブランドコンセプトとから携わり、そのブランドそのものを体現するようなシンプルだけれど強いインパクトを与えるその作品群はもはや日常に溶け込みすぎてロゴというより地図記号のような役割を果たしているようにも思える。お店そのものを、会社そのものを、空間そのものを一円でデザインしていくその仕事は、なんとも先進的で求心的な試みであろう。統一感によるインパクトという分かりやすい視覚効果はそのブランドのイメージを固定化させるためにはとても重要なことである。その仕事を数々の現場で仕上げてきた、そんな素晴らしい方の名前をこの度、心に刻みつけることができたことがとても光栄であった。

 知識を得ることは世の中の解像度を上げることだ。彼のロゴに対する考え方を知れば、日常の一つのアイコンでしかなかったロゴに思想が見えてくる。企業がそれぞれ表したいこと、目指したい未来が見えてくるのだ。彼の仕事には一つ一つ明確な思想があり、そのブランドを高めるためにどこまでも希求する姿が見える。フォントの一文字一文字が、線の一本一本が明確な意図と計算のもと引かれている。それを認識できるだけで、なんと世界は輝いて見れるのであろうか。なんとも嬉しい気持ちになってくる。

 世界は、誰かの仕事でできている。そして、私の日常は佐藤可士和氏の仕事で溢れていた。ロゴの持つ奥深さ、強さを認識するためにこの展示会を見ることはとても良いことだと思う。新しい知識を知り、世界の解像度を高めることができる。だから展示会に行くことはやめられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?