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展示会散歩 「美しい蛾の世界」

 

 はじめに、定期的な手洗い、消毒、マスクをした上で同行者とは極力会話を控え、周りに触れないように配慮を行なっていることを前提といたします。

 蝶と蛾の違いは何だろうと疑問に思ったことはないだろうか。羽を広げてひらひらとぶ昆虫の中で綺麗な個体が蝶、地味な個体が蛾というような印象を持っている人は多いと思う。しかし、その印象はこの展示会に行けば崩れる。それくらい美しい蛾たちがそこには展示されている。

 初めに心奪われたのは、キボシルリニシキの藍である。紫のように見える青が黒と絶妙に混ざり合い、胴体近くに散りばめられた黄色い斑点が美しさを引き立てる。少し太めの胴体にも美しい青が入り、何度も妖艶な美しさを醸し出していた。そしてやはり外せないのはスバメガたちである。あつまれどうぶつの森のユーザーであれば蝶たちに混じってとぶ、ニシキオオスバメガを思い浮かべる人もいるだろう。この展示会には数種類のスバメガたちが展示されており、中でもルリオバスバメガは中心から円のように広がる美しい青が神々しい光を放っているようだった。また、蛾の中では最高に可愛い黄色とピンクの蛾であるメイプルモスも展示されていた。本当に天使のようにふわふわで可愛らしい色をしているのでこんなご時世でなければ是非見て欲しいと思ったものである。また、オオオナガヤママユの羽などは妖精と見間違えるばかりの大きさと美しさを持っており、妖精と言われた存在はこの蛾の見間違えではないかと想像されるレベルである。他にも萌黄のような可愛らしい羽の色をした個体や、オレンジと黄色と黒のコントラストが美しい蛾たちもたくさんいた。蛾といえば暗闇の中の明かりの近くでチラチラ待っている地味な虫たちという認識の人はガラッと印象が変わるのではないだろうか。

 そもそも、蛾と蝶を明確に分けることは難しいといわれている。いくらか調べてわかったことは、ひらひらと羽を広げて飛ぶ昆虫のなかで、いくつかの種類が蝶と言われ、蝶ではないものが蛾であると言われているというような状況であった。見分けるポイントがないわけではないが、個体によっては蛾の特徴を持った蝶もいれば、蝶の特徴をもった蛾もいるようだ。また特にフランス語やドイツ語では蛾と蝶を言語的には分けていないという。大まかな見分け方として、蝶は触覚の先が丸まっているか太くなっていて、蛾は尖っているか櫛形になっている特徴があるとのことだった。しかし、これは日本の種類においてはということであるので世界でこれに基づいて分けることは難しいという。何とも難しい世界である。

 もし、蝶は好きだけれど、蛾は苦手という人がいたら、綺麗な種類だけでも見に行って欲しいと思ってしまう。そのくらい、蛾のイメージがガラッと変わる展示会である。蛾という言葉には少しマイナスイメージがあるかもしれないが、蝶に分類されていない鱗翅目という観点で楽しむことは十分可能である。そしてこの展示会、驚くことに無料なのである。会場は学校の教室くらいの大きさの部屋一室だけであるが、びっしりと敷き詰められた標本が所狭しと飾られているので全く少ないと感じない。むしろ一体一体をしっかりと見たら全てを見るのに1時間以上はかかるのではないだろうか。また、フラッシュ撮影は禁止されていたが、撮影自体は禁止されていなかったので心に残った蛾を写真に収めて帰るのも良いかもしれない。こんな展示会が無料で行われている。とても信じられないことである。ご時世もあってか、観覧者もほぼおらず、ゆっくりと観覧することができた。こう言った展示会は感染リスクもとても低いと思うのでしっかりとした対策をとって散歩がてらに見にいくにはちょうどいい存在であると思う。

 会場は東京大学の隣にある文京区教育センターである。もちろん、文京区以外の人間も自由に入れる。何と言うか、財政が安定していていると言うのはこう言った展示会にも現れてくるようで少し羨ましくもなってしまった。こんな展示会に本当に散歩がてらいくことができる人は本当に幸せであろうと思う。少しだけもっと都会に住んでみたくなった。それはそれとして、本当に綺麗な蛾たちに会えるので、ご時世的に大きな声では言い難いが、興味のある人は覗いてみるのもいいのかもしれない。不要不急の外出は控えるようにされてはいるが、人間こう言った文化的な喜びを感じなければ心が暗くなるものなのである。心の栄養を取るための要、そしてそれを十分楽しむための人事を尽くしていれば良い、そうやってこの日々を暮らしていく方が長く続いていく自粛の日々をうまくやり過ごす方法ではないかと思っている。自粛に疲れて感染対策まで放棄するくらいなら、感染対策を万全にして適度に息抜きをする、そんな生活でこの日々を耐えていきたいと私は考えている。

 

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