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あいうえおnote【う】

生まれ育った時代の終わりと、新たな時代の始まりに伴う11連休。お正月ぶりに帰った実家は、いつもよりもそわそわしていた。


生まれ育った町


「恵美、お昼はほっきめしをつくろうと思うんだけど、どうかな?◯◯ちゃん嫌いなものとかある?」
「◯◯ちゃんパジャマ持ってくるかしら。お父さんのジャージじゃサイズ大きいだろうし、何か買っておく?」


田舎特有というか、我が家特有というか。相変わらずの底なしのホスピタリティに笑った。今回の11連休、私と彼は東北を周る旅行を予定していて、その出発地点として彼を家族に紹介することになった。

別に結婚の挨拶なわけでもなく、ただお付き合いしてますよこんにちは、って挨拶だ。だけど末っ子の彼氏が家に来るというのは我が家にとってどうやら平成が終わるよりも重要な一大イベントらしく、両親も姉もバタバタ準備を進めてくれていた。


せっかく来てくれるんだから5月頭の彼のお誕生日も一緒にお祝いしようと、母と2人でお部屋を飾りつけた。幼い頃、クラスの友達を呼んで毎年お誕生日会をしたことを思い出して「私に子どもができたら一緒にこうしてお祝いしてあげよう」なんて話した。


彼が来る当日。母は彼に会ったことがあるのに、「緊張して眠れなかった」と瞼を擦りながら言った。リビングに行くと、いつもより大分早起きな父が群馬出身の彼に会う予習と称して、録画した「秘密のケンミンショー」を観ていた。

母の車で彼を駅まで迎えに行き、「お誕生日会」の会場である祖母の家へ。彼の見慣れない襟付きの服や、家が近づくにつれ心なしか硬くなる表情に、私まで緊張してしまいそうだった。

・・・

母の美味しい手料理のおかげか、ランチタイムは終始和やかな雰囲気で過ごすことができた。夜ご飯までは時間があったので、彼と近所を散歩することに。

おばあちゃんの家の裏手にある、幼い頃から何度も遊んだ公園。昔大好きだった地球儀は、危ないからと数年前に撤去された。
道に咲く牡丹桜。東京ではもう夏の気配すら感じるけれど、仙台ではまだまだ満開だ。
小学校の校庭。あそこの柿の木の下にタイムカプセルがあって、裏山のあの木の上に秘密基地があって。
彼の知らない私の過去をたくさん知ってほしくて、あっちこっちと指差ししながらいろんな話をした。


数年見ないうちに変わったものもたくさんあって、あの頃とは物の見方も変わっていて、けれどどれも胸が温かくなる、懐かしくて大切な風景。その景色の一部に彼がいることは、なんだかちょっぴり不思議で、でもすごく嬉しかった。


大人になることは、自分の属するコミュニティが増えていくことでもあると、私は思う。それぞれのコミュニティで大切な人は増えていくけれど、それらの雰囲気に合わせて自分を曲げがちな私にとって、その境界を越えて自分を取り巻くいくつかのコミュニティが交わることは、あまり得意ではない。

特に結婚はその最たる例だ。誰よりも一番かわいい自分を見てほしい恋人と、誰よりも一番素のままの自分を晒け出せる家族。一見して正反対なこの2つが交わることが、どうにも私には想像がつかなかった。

だけど今回、彼はびっくりするくらい私の家族に馴染んでいた。彼も緊張しつつ楽しんでいたようだし、私の家族も抵抗なく彼を受け入れてくれたようだった。彼と家族が笑い合う姿に、お互いの家族というコミュニティが交わる未来がほんのちょっぴり、見えた気がした。

・・・

最後まで温かく送り出されて、今朝、彼と2人で私の故郷を後にした。今日から東北旅行。はじめは青森県からだ。


地元に続く隣県と、宮城以北の県に初上陸な彼。まだまだ続く連休、もう少しこの「コミュニティの交わり合い」を楽しんでみようと思う。


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山桜桃  えみ
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