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対話でお互いの考えを理解したあと、どう歩みを進めるのだろうか

Scrum Fest Niigata 2023にて「相互理解を目指す対話主体のコミュニケーションで心の負担を軽減し持続可能な組織変革を」というタイトルで登壇し、対話で相互理解を目指そうという話をしました。その中で、
「実際に相手の意見の背後にある考えを確認したら、その懸念を反映した形にしていけば良いだろう」
という考えを述べていました。

しかし登壇にあたってあれこれ自分の考えを言語化する中で、以前からうっすらとモヤモヤしていた点が改めて浮き彫りにりました。

  • 自分だけが常に相手の懸念を一方的に受け入れているとしたら、チームとして良い状態と言えるのだろうか?

  • 相手の懸念を反映する形は、そう簡単に見つかるものなんだろうか?

そんなタイミングでアダム・カヘンの『敵とのコラボレーション』を読んだのですが、コラボレーションのための条件などについて書かれており、とてもスッキリしたので紹介したいと思います。


書籍におけるコラボレーションの条件と進め方

コラボレーションの条件

本書では、克服したい問題のために人と人とが協力するコラボレーションのために、相手をコントロールすること、調査、確実性、従順という非現実的な幻想をあきらめ、不協和音、試行錯誤、共創という混乱した現実を受け入れる必要があるといいます。

また問題に直面している時にはコラボレーションに加えて、強制、適応、離脱の選択肢があると述べています。そしてそのいずれの選択肢が取りうるかは状況による、つまりコラボレーションを選択できるかは次のような条件があるというのです。

  • それが目標を達成する最善の方法である場合

    • つまり一方的な選択である適応と離脱が受け入れ難く、やはり一方的な選択である強制も不可能である場合

    • 関係者の力が互角で、誰も意志を押し付けられない場合

  • コラボレーションする必要があり、そうしたいと関係者全員が合意している場合

    • そうでなければコラボレーションに対する関心が高まるのを待つ

コラボレーションをどう進めるか

本書では、全員が計画に合意することも難しいし、計画を実行することで意図した通りの結果が出せる状況ではない、つまり複雑系のような状況であれば実験しながら進む必要があると述べています。
そのため問題と解決案に合意するのではなく、意欲的な協働者たちが、克服しようとしている問題の複合する状況について、共通の問題認識を持つことをまず目指します。
そうしてが協力して進む準備が整うと、協働者たちが支え合い行動し、行動から学び前進できるようになるというのです。

また共通の問題認識を持ったあとコラボレーションを進めていく中では、自分を問題の一部として考え、協働相手と肩を並べ仲間になり、問題解決に参加する必要があるといいます。
自分が変わり傷つく、実り少なく遅々として進まない、大幅に妥協するといったリスクを負うということです。
相手の行動を変えようと人を非難していると気づいたら、自分の行動を変える必要があることに注意を戻さなければならないと本書は述べています。

ボトムアップで組織にアジャイルな変化を起こすために

Scrum Fest Niigata 2023での発表は、対話により相互理解を深めコラボレーションを生み出し、ボトムアップで組織にアジャイルな変化を起こすこと目指した話です。
書籍の内容と併せて考えると、実行するためには条件があるというのがモヤモヤへの答えとしてとてもすっきりしました。

自分だけが常に相手の懸念を一方的に受け入れているとしたら、チームとして良い状態と言えるのだろうか?

良いか悪いかは別として、コラボレーションにはなりづらいという理解をしました。
常に相手の懸念を一方的に受け入れていたら、それはコラボレーションではありません。前述のコラボレーションの条件、問題に直面している時の4つの選択肢の1つである適応となっているからです。

またそれは

  • 関係者の力が互角で、誰も意志を押し付けられない場合

  • コラボレーションする必要があり、そうしたいと関係者全員が合意している場合

という条件を満たすことができていないためです。

関係者が自分を問題の一部として考え、他の関係者と肩を並べ、妥協などのリスクを受け入れた上で問題解決に参加する必要があります。

相手の懸念を反映する形は、そう簡単に見つかるものなんだろうか?

そう簡単に見つからないという理解をしました。
様々な人の様々な考えがある中では、全員が1つの案に合意することも難しく、またその案で意図した通りの結果が出るとも限らないためです。

ではどうするかというと、問題に対する共通認識を醸成し、コラボレーションする必要があることに関係者全員が合意し、実験しながら進むのです。
関係者がコラボレーションに対して意欲的であることも必要となります。

ボトムアップで組織にアジャイルな変化を起こすために整えたいと感じた条件

  • 関係者が自分を問題の一部として考え、他の関係者と肩を並べ、妥協などのリスクを受け入れた上で問題解決に参加する

  • 問題に対する共通認識を醸成し、コラボレーションする必要があることに関係者全員が合意し、実験しながら進む

  • 関係者がコラボレーションに対して意欲的である

これらの条件を、組織の全員が持っているのはなかなか難しいでしょう。
そのため組織全体を一度に相手にするのではなく、条件が整う小さな範囲から広げていくのが現実的なボトムアップの進め方になるだろうと思いました。

具体的には、まず対話によって現状に対する共通の問題意識を持ち、なおかつコラボレーションに意欲的である相手を見つけます。そしてそのような相手が一定以上の割合となる小さな範囲を見つけ、そこから変化を起こしていくのです。
一定以上の割合は、キャズム理論を基に考えると15%以上は必要なのではないかと予想しますが、他のメンバーがアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードのうちどれに近いスタンスであるかによって多少変わるのではないかとも思います。

実際、この進め方は過去のいい感じの変化が起きた経験や、うまくいかなかった経験と照らし合わせてそれなりに納得感があります。

ボトムアップで進めていく最中でポイントになりそうだと思う2点

対等な力関係である点はことあるごとに繰り返し伝え、また自分自身の振る舞いで背中を見せ続ける必要があると思います。
どうしてもアジャイルへの理解度から、教える側と教わる側という力関係が生まれやすいため、普段から意識的にそうならないよう気を配るのです。

もう1つはふりかえりにおいて、チームでの現状の問題に対する共通認識の醸成を行うことです。
一部の人の意見だけで改善方針が決まっていては、チーム内でコラボレーションではなく強制が起きている状態となってしまいます。
たとえTryが決まらなくても、問題に対する共通認識を醸成することで、チームメンバーが支え合い行動し、行動から学び前進できる状況を整えることが重要だと思いました。

逆にトップダウンであれば

アジャイルをトップダウンで導入するのであれば、まず現状の問題に対する共通認識を醸成し、アジャイルを導入することでどんな効果を期待するのか期待を合わせることが重要なのではないかと思いました。
アジャイル導入を目的とするのではなく、アジャイル導入によって何を解決するかを目的にするのが良いという、よく聞く話に一致するなと感じます。

最後に

『敵とのコラボレーション』を読み、対話でお互いの考えを理解したあとの歩みの進め方への答えを得られた気がしたので、現時点での考えをまとめてみました。しかしあくまでも考えをまとめただけで、実行できてはいません。
今後この考え方を実行に移して、実際にどうなるのか実験しながら進んでいこうと思います。

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