【台湾ドラマ感想】刑事と殺し屋で食べるメシは美味い『美食無間』
今月チャンネル銀河で放送していた台湾の現代ドラマ「美食無間」がとても楽しく美味しそうで良いドラマだったので、その話。
あらすじ
美食を愛する刑事朱坡は、新人刑事の呉薇と組んで、暴力団の跡目争いに端を発した殺人事件を受け持つことになった。新入りの生真面目さに疲れた朱坡はせめて美味い飯、と、町の食堂に入ったが、そこで相席になった黒ずくめの男と、互いの食に対するこだわりの相違で鍋を挟んで小競り合い。踏んだり蹴ったりの気持ちで家路についた。
その後も呉薇とともに事件の捜査を続けていると、訪れるいくつもの食事処で、朱坡たちは例の黒ずくめの男に出くわすことに。火花散る食蘊蓄バトルの末、最終的に呉薇も交えて、男二人女一人の三人組でメシ友になった。しかし、黒ずくめの男黎子東は、刑事二人が追う殺人事件の犯人であり、依頼を受けて人を殺す職業凶手だった。互いに正体を隠し、食を通じて仲を深めていく追うものと追われる者。
食事に仕事は持ち込まない、と、皿を囲んで愉快な時間を過ごす三人だったが、食卓の料理はいつかなくなるもの。楽しいひとときは終わり、追いつめられた三人に、再びおいしいごはんを食べる時間は来るのだろうか?
美味いメシと上手いストーリー
台湾グルメと犯罪捜査をでっかい鍋に入れて煮立てて、そこに友情や親子の情を添え、インファナル・アフェアを隠し味にした作りで、悲しくなりすぎず、かといってコメディにもなりすぎず、「このぐらいのボリュームでちょうどいいな」っていう楽しみが1クール分ある。普段見ているドラマが30話で短いね! というスパンでお届けされる中国大陸時代劇のため、1クールでちょうどいい作りの面白ドラマは本当にありがたい。
なにより出てくる店ご飯の美味しそうなこと。
作中の飲食店は全部台湾で実際に営業しているお店とこのとで、ハンバーガーのフードトラック、海鮮市場、日本風の炉端焼き居酒屋、小籠包屋さん、高級火鍋屋、などなど、観光客にも人気のお店から知る人ぞ知る穴場まで色々なメシどころを紹介してくれます。Instagramもあるよ。
この動画みたいに、美味しいご飯が出てきたら、その店ごとに美味しい食べ方を「◯◯の食べ方知ってるか?」と、食通たちが一席ぶつ時の決め台詞と共に教えてくれるシーンは、回を重ねるごとに自分の楽しみになってきました。ただし、食蘊蓄の相手を選ばずこの感じなのは朱坡の欠点。
たくさんのグルメに囲まれるように、さまざまな「食事」のシーンがドラマの中に散りばめられているのも印象深かったです。
残業中にこっそり食べるケーキや、コンビニにあるものでサンドウィッチを作って頬張る、隙間時間の幸せ。家族で食べるはずだったごちそう、養護施設でこっそり食べた麺の思い出。部下に引導を渡すため、自分の好物を取り寄せたマフィアの幹部と、ワインばかり飲んでいる幹部の愛人。外食しても、お母さんの作るイマイチなごはんを残さず食べる人。とにかく高級なものをペアリング考えず並べて食べて良い気分になる人。登場人物たちの食事の思い出やこだわりが、その人を表す重要なピースになって、ストーリーに深みを持たせています。
生きることのすぐそばにある食事。ただ必要だから食べるのではなく、なにを、誰と、どうやって楽しむのか。その人にとって食事とは行為なのか概念なのか、それとも美学か。食べることを愛せるなら人生を愛せると信じているような脚本で、最終回を見届けて、「いやあ満腹!」って声が出ました。きれいに平らげた。
2024年9月30日現在はどこで見られるのか
結論から言うと現時点では見る機会がありません。日本で見るにはチャンネル銀河さんのリピート放送を待つのが一番可能性があるかな、という感じです。または各種配信サイトで配信されるのを待つか、という感じ。台湾とか中国だとNETFLIXで配信があったそうなので、日本でも見られるようにしてほしいな……チャンスが生まれたらぜひ見て、味わってもらえたらいいなあという作品でした。