【ゲーム】楽しい架空言語講座「Chants of Sennaar」の感想
タイムラインでやってる方が楽しそうだったので買ったらまんまと楽しかったので、先週まるまる使って旦那さんと遊んでいたChants of Sennaarの話。ですが、上のトレーラー見てなんか良さそうだなと思ったらこの文章を読んいでる場合ではなく、体験版を遊んだほうがいいと思います。もしご購入する場合はSwitchだと2500円ぐらいです。
どういうゲーム?
棺の中から目覚めた主人公を操作して、知らない言葉を解読しながら塔を登っていくゲームです。どうして主人公が棺にいたのか、なにをすべきなのか分からないまま階層ごとに使う文字も文法も違う言葉を類推して、なんだか助けてほしそうな人や、一緒に遊んでほしそうな人に対し、コミュニケーションを取りながら新しい階を目指します。
この塔は一体……? とか、主人公は何者……? などは、最上階でなんとなく事情を察することになりますので、フィクションで断片情報から事情を推察してブチ上がるタイプの人にはおすすめです。
図形が「読める」ようになる
新しいフロアにやってくるたび、主人公は「なんもわからん」状態になります。前のフロアとは文字の形も文法も違っていて、これまでのフロアで使っていたノウハウがリセットされるためです。新しい文字は最初全部記号。
ところが、フロア同士でかつて行われていた交流の痕跡や、分かりやすい名詞などから単語を理解して、語順や単語の法則に気が付くと、今まで「なんて?」ってなってた言葉が読めるようになる。「意味は分からないけどこの記号が入ってるってことは動作か……?」とか、「場所っぽいな。この単語と同じ字形が含まれるならこういう意味か……?」とか。
「知りたいと思っていたことが分かる」のって楽しいので、それが定期的に訪れると思ってください。たまらん好き。
知らないことが「わかる」瞬間や、小さい情報から背景を推察するのが好きな自分と旦那さんなので、一緒に話しながら面白いことを分け合えたのは振り返るとゲームのテーマに合った遊び方ができたようにも思います。
グラフィックも色使いが綺麗で、とても自分好みでした。
ネタバレのない感想は以上となります。
このあとのテキストは、ゲームをクリアした人向けに初見時の細かい感想や類推した言語体系のメモなどを記載しています。
これは、Chants of Sennaarは既プレイ人間が感想を漁りたいタイプのゲームだと思ったので残しておくものです。
もう一枚ゲーム内の写真が挟まったら始まります。
【ネタバレあり】Chants of Sennaar全フロア感想
ここからは、下の階から順番にゲームの感想だとか実際遊んでいたときのメモみたいなものになります。
1階の人たち
エジプトとかバビロニアとかがモチーフっぽい、映画の「十戒」で見たような雰囲気の世界。ここで目覚めた主人公は、言葉の分からない誰かと助け合って水路を出て、かくれんぼしたり、カードゲームしたりして言葉を覚えていく。ネコちゃんがかわいい。一番素朴でピュアな人々という印象。上の階に通してくれない兵士のことを理不尽だと感じているように見えました。
一階だけあって一番わかりやすい。基本の名詞をルール通りに組み合わせることで意味が変わる。「死+場所を表す部首=墓地」かな……とか、類推しやすいのでよかった。通訳をしていると「化学式」がわからず「お薬」って解釈になるのが楽しい。
この人たちが信仰している「神」って最上階のアレでいいのかなあ。牧師さんとちゃんとお話出来なかったのが残念。
2階の人たち
下の階にいる信徒たちを悪魔だと思って上階に向かうのを阻んでいる。兵士強い こわい
兵装を当てるまで旦那さんと槍持っては殺され、盾持っては殺されを繰り返し、旦那さんが兵士に捕まってる間に他の兵装を確認して正解になりました。
「わたし」「あなた」が存在しないんだけど、「兵士」と言う集団としての意識が強いので個人を切り分ける必要がないんだろうな。
大小や天体に関する言葉があるのは航海に必要だからとか、「死」が腕の折れた兵士みたいな形をしているのが、ここの階層らしくて好き。
音楽が好きな人たちだったので、文化で上下階が繋がったときは嬉しかったな。
最初は誤報だったけど、最終的には選民によるライブが行われたの鐘撞番の命は助かりました。よかったね!
3階の人たち
野蛮な戦士は進入禁止とし、上階へ行くのはバカのやることと決めつけている文化的で享楽的な人たちが、「愚か者」を使役して優雅に暮らしている。みんなが仮面をつけていて、劇場があったり、大きな広場があったり、古代ローマとか古代ギリシャとかの趣。
この階層は「愚か者」っていう単語だけでずっと話ができる面白さがあって、言語のルール的に考えると「愚か者」は人間ではないっていう。それを臆面なく主人公に投げかけてくることから、何度か「オッなんだ? 愚か者の持ち物を使っても良いんだぞこっちは」っていう場面がありました。実際愚か者階級の人も、のちに自分のことを「私は人間ではないし、自由もない」と伝えてくれるので、あとで1Fの人たちと楽しそうに過ごしていてよかったです。冒険心のない吟遊民たちはもうちょっとそこで困っておれ。
4階から5階の人たち
下の階にはモンスターが居ついたので行き来できず、上に続くドアは妖精によりがっちり施錠されたため身動きが取れない、フルフェイスマスクをかぶった研究者たちのフロア。鍵を開けるべく特定の配合で作られた合金を作ろうとしていて、どうやら下の階にいるモンスターは研究していた人が実験中になにかあってアレになった気配。後々に2Fの兵士たちに「モンスターを救う研究がしたい」って相談したら「兵士たちは悪魔を恐れぬ!」って協力してくれて、捕獲と研究が始まってて安心しました。
1Fで困っている人を助けてあげたり、ゴンドラで吟遊民と錬金術師のフロアを直通させたり、知識を良いことに使うのが好きそうな印象。フロアガイドも作ってくれるし、閉鎖されているところもちゃんと分かるようにしてくれる。ここの人たちが一番外からやって来た人に親切。
独特の数字や装置、大きな図書館と知恵にまつわるギミックや施設が多くて楽しいところでした。モンスターだけはもう勘弁してください。
最上階の人たち
邦訳では「孤独の民」になっているのですが、英語だと「anchorite(隠者)」となっています。
職業を示す語や場所を示す語がほぼないことから、「自分たちとそれ以外」という区切りでしか人間をとらえていないのかな、という印象。ゲーミング筒をかぶって椅子に座ったままVR空間に逃避している。モニタに映像が映っていない人は亡くなっているのかな。
最上階は人から話を聞くことができなくて、端末にあるパズルを解いて言葉を理解する仕組み。ひとりだけ話の通じる人間から、主人公はその人によって作られた何者かであること、作られた理由は人々を繋ぎなおすためであることを知る。最上階が孤立しているのは、管理AIのEXILEさんの仕業らしい。
「私たち」「よそもの」と、閉鎖コミュニティならではの人称代名詞が印象的。
トゥルーエンドまで
自分が色んな要素をつぶしてエンディングに行きたい方だったので、旦那さんがすぐに最上階に上がろうとするのを「待てーッ!」って止めて、道中見つけてきたターミナルの翻訳とか、紫色のドアのところを回っていく。ウワッ管理人工知能だ! 神話的な世界の話かと思ったらドSFだ! やったー!
モンスターから逃げまわるところでは、あんまりビビって操作がおぼつかなくなったわたしから「貸しな!」ってコントローラーを持っていき頼りになる旦那さん、水路で道に迷ってやられる旦那さんから「貸しな!」ってコントローラーを持っていきクリアするわたし、という面白体験ができました。
文字がバグってて読めなくなっても覚えた言葉が主人公を導いてくれたり、第二外国語の初心者テキストでやったような問題を解いたりする時、「語順どうだっけ?」と思いだしたり、これまでターミナル端末で通訳してきた言葉が鍵になっていたりが楽しかったな。自分たちのがんばりが前に進むパワーになっているのが分かるのがよく……
分からないものを怖がって、理解せずに遠ざけるのは寂しいなあ、というのは、VRエンディングで雨に打たれている主人公を見て感じたことでした。言葉を交わす人たちの頭上で、大切な言葉たちが瞬くエンディング、めちゃくちゃよかったです。やってよかった。