4.107章 別れ
「ソラナちゃん、やっと帰れるね!!」
「おめでとう!!」
「ほら、フィーも早く座って、食事しましょ」
「みんなで、ソラナちゃんの帰還祝いをするのだから」
そういって、ニトロが料理を運んでいる。
「うんうん。なんだかんだあったけれど、ソラナちゃんが帰れるようになってよかった」
「クレセント、お手柄だね」
「やぁーね。ネル~。そんな風に改まって言われると恥ずかしいわ」
「そこ、夫婦漫才は後にして手伝う!」
「はい」
ぴしゃりと、言い放ち場を進めるように促すニトロ
2人の扱いには慣れていた。
「さぁ、はじめましょう」
「ソラナちゃんのお別れ会」
そうニトロが合図して、フィーが音頭をとり、センチネルが見守る中、お別れ会は行われた。
「フィーがあのとき、一時はどうなることかと思ったよ」
「しかし、私のdvpn、あんな使い方も出来るだなんて、よく思いついたわね」
「それはね。イーサスキャンの応用よ。ネルの『シールド』は標的まで無傷で対象を秘匿しながら運べる」
「だから、宇宙船の役割を果たす。そう思ったのよね」
「なるほど。さっぱりわからないな」
「クレセント、交代」
「おっけ、ネル。それはね」
ソラナとネルの技術談義
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「だから言ったじゃない!あのとき、あれを見ておけば!」
「熱くならないで、ニトロ」
「ソラナちゃんもソラナちゃんだよ。あんなに面白い大道芸を見ていなかっただなんて」
「それは、あなたと会った当日の出来事だから仕方ないわ」
「あれ以来、わたくし達、やることが沢山あったでしょ?」
「うーーーん、そうだけどさぁ」
「じゃあ、あなたが彼の大道芸を表現するのはどう?」
「ふえ?」
「ニトロ、あなたは、軍事教習を受けた中では一番の運動神経の持ち主だったらしいじゃない」
「そんなのどこで」
「アカッシュから聞いたわ」
「ああーー、もう!!」
「あなた達が組んで、実践訓練で教官チームの道場破りをしたことについては、深く聞いていないから安心しなさい」
「あぅ。あれは、その。どこまで自分たちの力が通用するか試したくて」
「そういう時代もあるわ」
「さて、じゃあ、見せてもらおうかしら。訓練生時代、最高と言われた運動神経の持ち主の即興を」
そうソラナに促され、ニトロによる即興の隠し芸大会がはじまった。
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「守るための技術で戦って来た」
「確かに、それはすごいことだけれど」
「この盾、ほんと、びくともしないわね」
そういって、センチネルに実体化させてもらったシールドを叩くソラナ
「はははは!!ちょっとまって、ソラナちゃん、くすぐったい!」
「!?」
「どうしたのよ。あなた。まさか、これって」
そういった後に、シールドの表面をツーっと指でなぞる。
「にゃはははは!だめよ。ソラナちゃん。くすぐったい」
「ひょっとして、あなたのシールド。あなたに対してフィードバックがあるんじゃない?」
「なんのことかしら?」
「いや。ばればれよ。今更感しかないわ」
「ふぅ、ソラナちゃんには隠し事は出来ないか」
「いや、あなたが下手過ぎるだけでしょ」
「うん。これには、私と接続されているコントラクトがあるよ」
「それを通して、シールドが受けている衝撃を私が感じることが出来るの」
「ちょっとまって!その機能、いるの!?」
「それじゃあ、攻撃を防ぐ度にあなたの体が痛みにさらされていたってことじゃない!」
数々の彼女の体を張った守りを思い出すソラナ
「私だって、痛いのは嫌だわ。だから、普段は、シールドからのフィードバックを低減するコントラクトも使用してるわ」
「でも、ダメージが大きいときは、痛いでしょ?」
「思いっ切り痛いわ」
「それじゃあ、なぜ!?」
「感覚が無ければ、シールドが破損しているか。あとどのくらい持つのかわからないでしょ!?」
「急にシールドが破れて、自分を貫通してみんなを衝撃が襲ったら、その時は守り切れないでしょ」
「だから、モニタリング出来るようにシールドに痛覚を持たせているのよ」
「なるほど」
「あなた自身、何か思うことがあったのかしら」
「鋭いわね」
「最後なんだし、話してくれるわよね」
「いいわ。あれは、私が、訓練生時代を終え新兵として防衛線に赴いたときのことだったわ」
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「ふぁー、ねむーい。ソラナちゃーん」
「はいはい。お子様は、こちら。ゆっくり、おねんねしましょうね」
「わたし、お子様じゃなーい!!」
ばいーんと、大きな胸を突き出すように乗り出すフィー
体の大きさに反して、でかい果実が勢い余ってソラナの顔にぶつかる。
「フィー、あたっているわ」
「ふっふーん。あててるんだよっ!」
「そういうことじゃないんだけれど。そうね。いい香りがするわね」
「もっと、触ってみる?」
「いいわね。でも、それよりも、もっといいことしましょう」
「フィー。ちょっといらっしゃい」
ボンボンと、自らの膝を叩くソラナ
近寄るフィー
フィーが横まで来ると、彼女の頭をゆっくりと自らの膝に倒す。
「えっ」
「あなた、眠かったのでしょ。なら、少し休んだらどうかしら」
「でも、ソラナちゃんの膝でしょ?」
「何?知らないの。膝枕というのよ」
「///知ってるよ~」
「何赤くなっているのよ」
「そんなになるなら、最初から挑発してこないことね」
そういって、彼女の頭を撫でる。
「ふぁーい」
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ひとしきり話し終えた後、ソラナは装置の前に立った。
「みんな、ありがとう」
「しばらくは、来れないけれど、また会える事を楽しみにしているわね」
「じゃあ、ソラナちゃん。装置を起動させるわ。覚悟はいいかしら」
「よくってよ」
「って、それ、そんなに危ないものなの?」
「危ないかはわからないわ。何せ、あなたがこの装置を使う第一号なのだもの」
「それもそうね」
「さよならは、言わないわ。だって、戻って来るのだから」
「そうね。じゃあ、さよならよりも、こうだね!」
「いってらっしゃい!!ソラナちゃん」
「行って来るわ、ニトロ、そして、フィー。ネルも」
「私は~~!?」
「もちろん、あなたもよ」
「いつも色々とありがとうね。クレセント」
「いいわよ。そんなに改まらなくて」
「改まっていないわ。別に」
「ただ、そう、思っただけ」
「じゃあね。みんな」