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FFT_律する者たちの剣_EP:6-3

EP6-3:聖石とルカヴィ

古代遺跡のラボ区画。
蒼白いパネル照明が薄暗い通路を照らし、時折スパークのような光が走る。ここではつい先日、アルテマの剣を生み出すための鍵となる「聖石の波長逆転」が解析され、そしてゴルターナ公=キュクレイン討伐に向けた準備が着々と進んでいた。

空には夜の帳がまだ濃く、遠くで稲妻のような明滅が見える。どうやら、ゴルターナ公の居城付近には重苦しい雷雲がかかっているらしい。その雷鳴を遠巻きに聞きながら、ミルウーダは遺跡メインホールの中央に立ち、思案に沈んでいた。
モーグリ型ロボットのウィーグラフAIがコンソールで忙しなく操作を続け、ラムザとセラフィーナが隣で支援する。彼らは夜通し聖石に関する解析を行い、「どうやってルカヴィの力を封じるか」を模索してきたのだ。

「兄さん、ラムザ、セラフィーナ……私は、聖石そのものを無力化する方法を考えたいの。」

ふいに、ミルウーダが静かに口を開く。その瞳には強い決意が宿っている。

「ルカヴィを倒すには、まず聖石を封じる。それが先決。」

彼女の声には迷いがない。これまで、ルカヴィの力を取り込んだ者を倒すには、命を奪うしかなかった。だが、もうそんな血塗られた道を選びたくない。ゴルターナ公を“救う”かは別として、少なくとも無駄な殺戮は避けたいのだ。


かつての革命家として、ミルウーダは常に「如何に敵を倒すか」を考えていた。だが今、彼女が目指しているのは「如何にルカヴィの破壊力を無効化して被害を最小限にするか」。
そのために、聖石が放つ赤い破壊波長を封じ込め、青い守護波形を優位に立たせる理論が鍵になる。すなわち**“ルカヴィを生む波長そのもの”**を切り離せれば、宿主が怪物化する道を絶てる――そう考えているのだ。

「もし私たちが聖石を奪って封じるだけでは、また別の貴族や教会が同じ過ちを繰り返す。完全に無力化できれば、“ルカヴィ召喚”の扉を閉ざせるかもしれない。」

「……しかし、聖石はルカヴィを封印してきた器でもある。その力を無効化するとなれば、逆にルカヴィが解放されるリスクもあるはず……どう整合性を取るんだ?」

「解析によれば、封印が破れている部分を再度“補強”し、逆転波を注入すれば、ルカヴィの波長を自壊させる方法が理論的にはあります。ですが、実行には強大な魔力と時間が必要で……」

深い議論が進むなか、ラムザが頷きながら耳を傾ける。彼はアルテマの剣を完成させるために聖石の力をコントロールしたいが、同時にゴルターナ公をどう封じるかが急務だ。


「僕は……破壊ではなく、封印を選ぶよ。アルテマの剣も、ただ倒すためだけじゃなく、世界を守るための力にしたい。だから、ミルウーダ、君のプランに協力する。」

ラムザはまっすぐにミルウーダを見つめ、はっきりと宣言する。かつては敵として刃を交えたことがある二人だが、今は同じ道を歩もうとしている。その共鳴が、モニター越しのウィーグラフAIにも伝わる。
モーグリロボが軽く耳を動かし、「ふん……」と鼻を鳴らすように言う。

「いいだろう。ゴルターナ公が完全にキュクレイン化する前に、聖石を封じ、奴が暴走するのを防ぐ。それを成し遂げれば、教会や貴族連中にとっても衝撃になるだろう。破壊や殺戮以外の方法で、ルカヴィを潰せると示せば……革命的作戦だ。」

兄妹の革命を“血を流さずに済む革命”へ導きたい思いと、ラムザが目指す“破壊ではないアルテマの力の使い方”が結びつき、三人の目指すゴールが一致していく。


そんな折、セラフィーナが別の通信ウィンドウを開く。そこには「教会」に関する暗号ファイルが表示され、その内容を読んだ彼女が声を低くする。

「……どうやら、教会の一部もゴルターナ公の暴走を知りながら黙認していた節があります。さらに、別のルカヴィ召喚計画を進めている可能性が示唆されているようです。聖石の封印を“利用”する形で……」

その報告に、ミルウーダとラムザが顔を見合わせる。教会がまた別のルカヴィを引き出す計画を進めているというのか。過去の戦いで、ディリータや他の仲間たちが教会の闇に触れてきたことを思い出す。
ウィーグラフAIもモーグリの尻尾を揺らし、「やはり、教会と正面衝突するのは時間の問題か……」と呟く。

「俺がルカヴィに落ちたときも、教会の裏にはその計画があった。今回も、ゴルターナ公を“捨て駒”として利用し、別のルカヴィを呼び出して覇権を握ろうとしているかもしれん……。」

これが事実なら、聖石を封じる作戦は教会にとって邪魔者以外の何ものでもない。彼らもまた“大義”を口実に、ルカヴィを支配しようとする勢力だ。


こうして情報を集約した結果、ミルウーダが具体的なプランを立案する。これこそが“革命的作戦”と呼ぶにふさわしい内容だ。

  1. **“ゴルターナ公の聖石”と“ラムザが持つ聖石”**を利用し、波長を逆転させる。

  2. ルカヴィ化の主動権を封じるため、キュクレインが発動する前に“制御回路”を罠として組み込む。

  3. 城内の民衆を守るため、正面攻撃ではなく、外部から魔力ノイズを発生させる装置を設置し、ルカヴィ化の波を乱す――いわば**“チャフグレネード”を大規模に運用**したような形だ。

これを成功させれば、キュクレイン討伐に際して大規模な戦争にはならず、ゴルターナ公が暴走する前に聖石を封じる道が開けるかもしれない。
ミルウーダは地図やホログラムの前に立ち、熱を帯びた声で作戦を説明する。

「ルカヴィを倒すには、まず聖石を封じる。それが先決。――この作戦では、城に直接突入するのではなく、周辺に“魔力阻害装置”を配置してキュクレイン化の波を制限するの。そこへラムザが“制御回路”を携え突入し、公との接触を試みる。私たちも援護に回るけど、極力殺し合いを避けてね。」

その説明は、革命家としては異例だ。通常なら兵を率いて城を攻め落とすのが定石。しかし、ミルウーダはあくまで“無力化”を目的にしている。これにはウィーグラフAIも微妙な表情を浮かべていたが、すぐに納得して深く頷く。

「面白い……まさに革命的な作戦だな。血でなく、仕組みそのものを潰しにかかるわけか。これなら、もし公が正気を取り戻せば、無駄な流血は避けられるかもしれん……」

ラムザも気持ちが昂まる。自分が先陣を切る危険はあるが、ルカヴィを斬り伏せるだけが目的ではない。いつか失われた魂を救う術を探しているラムザにとって、この作戦は“大きな希望”だ。


しかし、作戦立案中、またしても遺跡の警報が鳴る。今度は数名の黒装束が内部へ潜り込んだらしい。**「教会の影」**と題された今回の伏線に沿い、彼らはミルウーダの“ルカヴィ無効化”プランが表面化するのを恐れて、妨害に来たのだ。
セラフィーナがホールのスクリーンに映し出す映像には、修道士風の男と女が不気味な呪文を唱えながら廊下を進む姿が映る。彼らはゴルターナ派とは違う雰囲気――おそらく教会直属の暗部戦力だ。

「警告。外部アクセスが不正に行われています。内部システムへのハッキングも試みている模様……ご注意ください!」

「ハッキングとは……どうやらAIや遺跡の力を逆手に取ろうとしているか。俺が防御する……皆、敵を食い止めてくれ!」

ここでミルウーダとラムザが再出撃し、教会の刺客を迎撃する流れになる。今度は相手も魔法や武術に長けており、ゴルターナ派の兵とは一味違う手強さだ。

遺跡を貫くメイン通路を教会の刺客が急ぎ足で進み、時折呪文を唱える。彼らは聖職者の皮を被りながら、実はルカヴィ研究にも通じた闇の力を用いる。魔法陣が足下に広がり、禍々しいオーラが湧き上がる。

物陰から魔銃を撃ち込む。先手を取る形で一発当てるが、相手は聖職者の力で回復する。“ケアル”のように白魔法を駆使しながら、逆に闇の祝詞を用いて味方を強化し、魔銃の射線を遮る障壁を展開。
「これは厄介ね……!」とミルウーダが歯ぎしり。

ラムザが剣と魔法を組み合わせ、障壁を崩そうと試みる。光の剣閃が闇の障壁を削り、その隙に魔銃の光弾が再び飛ぶ。
一方、修道士の一人が長杖を振り下ろし、土地の霊脈を刺激して大地をうねらせる。ラムザは踏み留まれず揺さぶられ、「ぐっ……!」とよろけるが、ミルウーダが即座にカバー射撃。

ウィーグラフAIはラボからホール内のセンサーマップを解析し、「相手に闇系バフがかかっている。チャフは効果が薄いかもしれん……スタングレネードで一気に詠唱を途切れさせろ!」と通信で助言。
ミルウーダは指示通りスタングレネードを投げ、閃光が炸裂。修道士たちが目を潰され、呪文を中断。
ラムザが剣を一閃し、相手の杖を粉砕。

教会の刺客は短時間で制圧される。重傷者も出るが、ミルウーダは積極的に殺すことを避ける。逃げる者もいれば、捕縛される者もいる。
ただ、彼らが「お前たちにはわかるまい……神聖なる力を封じれば世界の均衡が崩れる……必ず後悔するぞ……」と不気味な捨て台詞を残す描写を加え、今後の教会との本格対立を示唆する。


侵入者の撃退が終わり、再びラボに集まる面々。教会の暗部がここまで直接介入してくる以上、すでにただのゴルターナ公討伐に留まらない危険な匂いが漂う。しかし、今ここで退くわけにはいかない。
ミルウーダは深呼吸し、あらためて周囲を見渡す。そこにはラムザ、ウィーグラフAI、セラフィーナ――そして捕縛した教会の刺客から得た追加の情報端末がある。

「……もう決めた。兄さん、ラムザ、私はルカヴィを倒すには、まず聖石を封じる。それが先決だと考える。血なまぐさい戦争をするより、核心を突いて無効化すれば、誰もルカヴィの生贄にならないで済む……。革命のためにも、これは大きな意味がある。」

そう言いながら、ホログラムの地図でゴルターナ公の城を指し示す。
“キュクレイン討伐の大きな指針”――それが彼女の「ルカヴィ無効化」プランだ。城の外縁部に魔力干渉装置を配備し、城内へ密かに潜入して聖石を封じる工程を進める。その際、アルテマの剣の制御回路を使い、ゴルターナ公を破滅させずに済む方法を模索する……。
この作戦の衝撃は大きい。教会や貴族にとって、聖石を封じてルカヴィを無力化するのは“都合が悪い”のだ。だからこそ、ミルウーダの革命的作戦は“脅威”に映るだろう。


「君のプランに乗るよ、ミルウーダ。ゴルターナ公を殺すのではなく、ルカヴィを封印する。この作戦が成功すれば、アルテマの剣を作るための道も拓けると思う。」

「……俺も賛成だ。血の革命ではなく、仕組みそのものを崩す革命。ルカヴィから世界を解放する一歩になるのなら、貴族も教会も……誰もが一度考え直すだろう。」

兄妹が頷き合い、モーグリロボのウィーグラフは小さく尻尾を振る。かつては殺戮しか道を知らなかった彼が、今は知と戦術で世界を変える覚悟を固めている。その姿を見守るセラフィーナが微笑む(AI的な仮想笑みだが)。

「教会との本格的な対立も避けられないでしょうね。しかし、それが革命というものなのでしょう……。私もシステム面からできる限りサポートします。」

こうして、ミルウーダが打ち出した“聖石の力を無効化する”プランは、キュクレイン討伐に向けた重要な指針となった。血を流さずにルカヴィを止める――それがどれほど困難かは、彼ら全員が承知している。


一方、暗転するように場面が切り替わり、教会の内部や貴族たちの思惑を短い描写で差し込む。

教会の暗部には、先ほど送り込んだ刺客の失敗報告が届き、幹部が苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべている。「ミルウーダ……ウィーグラフ……ベオルブの名も……。彼らが聖石を封じてしまえば、我々の計画が……」と怨嗟めいた声。
さらに一部貴族は「ルカヴィの力を利用したかったのに、封じられたら我々の利権が台無しだ……!」と焦りを覗かせる。ここで読者に“強大な敵が裏で蠢いている”と暗示。
こうしたシーンを挟むことで、**“ミルウーダの戦術が教会や貴族にとって脅威となる”**というポイントがより鮮明になる。


遺跡のラボに戻り、ミルウーダたちは最後のミーティングを行う。ホログラムにゴルターナ公の居城図が映し出され、周囲を包囲する軍勢の配置や、教会の動向などを再度チェック。
ラムザは冒頭で“すべてを破壊したくない”と語った通り、この作戦に本気で賭ける意志を示す。

「みんな……僕は何度も血塗れの戦いを経験してきた。できれば、ゴルターナ公とも刀を交えずにすむならそれがいい。だけど……もし彼が完全にルカヴィになってしまったら、誰かが止めなきゃ……」

その言葉に、ウィーグラフAIの耳が動き、モーグリロボが一つ頷く。

「俺もそうだ。相手がルカヴィ化すれば、話し合いが通じないかもしれない。しかし、聖石を封じるプランで可能性があるなら、それに賭けよう。革命家としての贖罪でもある……」

そして、ミルウーダが締めくくりの言葉を放つ。

「ルカヴィを倒すには、まず聖石を封じる。それが先決。――私が立てたこの戦術を信じてほしい。兄さんもラムザも、力を貸してくれるよね?」

二人が静かに頷き、セラフィーナが後ろで拍手(AI的な手動作)を小さくする。これで討伐作戦の準備段階は完了だ。
「教会との本格的対立も近い……」 その覚悟を胸に抱きながら、三人は夜の遺跡で各々最後の点検を行う。チャフグレネードや魔銃、ラムザの剣、そしてウィーグラフAIが設計した“魔力阻害装置”のデータを携え、いざゴルターナ公の城へ――。


こうして、ミルウーダの無効化プランが示され、いよいよキュクレイン討伐に向けた最終段階に突入する。誰も想像しなかったアプローチ――“聖石そのものを封じ、ルカヴィに対抗する”という道は、教会や貴族にとって驚異となるだろう。
これまで何度もルカヴィとの戦いで血が流れてきたが、ミルウーダたちはそれを最小限に抑え、世界を破壊から救うと誓う。アルテマの剣を創り出す鍵となる制御回路も、また血を流さずに進む道を支えるものかもしれない。

「新たな革命の形を、ここで証明してみせる……血に頼らず、力そのものを無効化してみせる……!」

「ああ、俺はお前を信じる。かつての殺戮を悔い、今度こそ、ルカヴィの力を封じる革命を成し遂げよう……」

「僕も全力で協力するよ。破壊の力を人が律する――アルテマの剣を完成させて、世界を守りたい……」

遺跡の奥で微かに響く機械音と、遠雷がゴルターナ公の城を暗示するかのように鳴り渡る中、三人の決意が固く結ばれている。

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