見出し画像

再観測:星を継ぐもの:Episode1-2

Episode1-2:初陣とアリスの力

闇夜のヴェールが世界をすっかり覆い尽くしたとき、レヴァンティス艦の甲板上にはいくつもの閃光が瞬いていた。飛行甲板の端々に据えられた作業用ライトや信号灯が、青白い光で染め上げる。空は黒雲に閉ざされ、星すらまともに見えない。今や夜と呼ぶにはあまりに不穏な暗黒の空気が支配し、地上の荒廃した光景もまた、幽霊の住処のように沈黙している。

 そんな不気味な夜の中、カインは整備ドックの片隅で発進命令を待っていた。銀の小手(Silver Gauntlet)の機体下には、補給班が急いで武装パッケージを取り付けている。今まさに戦いへ赴かんとする整備の最終段階だ。ホバリング状態の補給リフトが横に据えられ、ミサイルラックや推進剤タンク、ビーム砲のコンデンサーといった装備を順々に滑り込ませていく。

「――カイン、聞こえるかしら?」

 内蔵インカムから、小さく澄んだ女性の声が響く。アリスだ。彼女はシステムコアとしてコクピット内に常駐しているはずだが、こうして外部の通信回線も自由に操れる。ヘルメットを装着していたカインは、その声を耳もとに感じながら応える。

「聞こえてるよ。どうした?」

「さっき隊長からの通信が届いたわ。『準備が整い次第、すぐ出撃せよ』とのこと。アーサー隊も参加するらしいわ。」

「アーサー隊……リーダー自ら出るのか?」

 カインは少しだけ背筋を伸ばし、思わず小声でつぶやいた。アーサーは円卓騎士団の中でも中心的リーダーであり、“エクスカリバー”のパイロットとして知られる人物だ。通常は王国本土の防衛や指揮に当たることが多く、そう簡単には最前線へ出ないと聞いている。

「たぶん、北西の丘陵地帯で起こった爆発がよほど重大なのね。隊長いわく、『敵の動きが本格化し始めた恐れがある』って。」

「そっか……。なら、急がないと。」

 カインは立ち止まっていた体を動かし、銀の小手の主翼付近へ歩み寄った。整備班の作業員が工具を抱えたまま彼を見上げ、ハンドサインで「もう少しで終わる」と示す。遠くからは、他のパイロットたちがそれぞれの機体へ向かって走る姿が見えた。作業用の警報音がけたたましく鳴り響き、格納スペースのシャッターがゆっくりと開いていく。

「カイン!」

 鋭い声が背後から飛んできた。振り返ると、そこには隊長のモルガンが姿を見せている。黒髪をきつく結んだ姿が相変わらず凛々しく、わずかに険しい表情を浮かべていた。

「準備はどう?」

「はい、ほぼ終わります。武装の最終チェック中です。」

「そう。なら、すぐ出撃可能ね。北西の丘陵地帯に数機の敵反応が確認されたわ。どうやらThe Orderの先遣機らしい。ただ、まだ詳細は不明。その地点には――アーサー卿もすでに向かっているわ。あなたは飛び立って合流してちょうだい。」

「了解です。俺と銀の小手でやりますよ。」

 カインがきっぱり頷くと、モルガンはわずかに口角を上げる。

「……あなたとアリスはこの艦の大きな切り札。思う存分、力を見せつけなさい。だが、油断しないで。まだ本格的な大部隊が来るかどうかはわからないのだから。」

「わかりました。」

 カインがモルガンに一礼して背を向けると、整備班から「作業完了!」の声が上がった。すぐに航空甲板全体が出撃態勢を整え、誘導員が赤いライトスティックを持って走り回る様子が目に入る。もう発進まで時間はない。

 銀の小手のコクピットへ上昇するプラットフォームが作動し、カインはそれに乗って一気に上がっていく。機体上面へと辿り着くと、そこに開かれたハッチからコクピットへ身体を滑り込ませる。座席に腰を下ろし、操縦桿に手をかけ、スイッチ類を念入りに確認する。

「アリス、システムオールグリーンか?」

「もちろん。メイン動力、兵装系統、各種センサーも問題なし。エンジン出力は今すぐ100%発揮できるわ。――それにしても、夜間飛行ってワクワクしない?」

「好き好んでこの闇を飛ぶのは、あんまり気が進まないんだが……まあ、やるしかないな。」

 カインはそう言いながらも、心臓が高鳴るのを自覚していた。重々しい夜の帳を突き抜け、敵と対峙する。自分たちの戦闘機こそが、王国の盾であり剣だという責任感が胸に広がるのを感じる。この初陣――少なくとも今回の遠征での最初の本格戦闘――を無事に制することができれば、仲間たちが少しでも安心して活動できるだろう。

「こちらシルバーガントレット、通信テスト中……。隊長、聞こえますか?」

『――こちらモルガン。バッチリよ。』

「現在、出撃スタンバイ完了です。誘導開始をお願いします。」

『わかった。誘導員の指示に従って発艦して。目標座標は送ってあるから、そちらへ直行よ。アーサー卿ともすぐ合流するはず。』

「了解。」

 カインは呼吸を整え、操作パネルの発進フローを順にクリアする。徐々に機体のエンジンが唸り声を上げ、パワーゲージが赤から黄、黄から緑へと移り、最終的に安定した数値を示す。シート越しに伝わってくる振動が次第に増し、まるで銀の小手そのものが出撃を待ちわびているかのようだ。

 コクピットのメインモニターが前方の夜間甲板を映し出し、その先には出撃ルートが示されている。降ろされたばかりの遮断板がゆっくりと左右に開き、滑走用の短いカタパルトが露わになった。誘導員がライトスティックを振り、駐機クランプが外れた合図をする。

「行くぞ……!」

 スロットルをゆっくり押し込み、銀の小手が低く轟音を響かせながら前進を始める。機体が規定位置へ滑り込むと、カタパルトの機構がガチリと固定を行い、さらなる加速を蓄えようとするかのように準備態勢へ入る。
 甲板端の誘導員が片手を挙げ、思い切り振り下ろした瞬間、カインはスロットルを一気に全開にした。

「――発進ッ!」

 鋭い加速Gがカインの身体をシートへ沈み込ませる。夜闇に向かって甲板から射出されるようにして、銀の小手が空へと飛び出していく。機体が大気を切り裂き、重力を僅かに感じながら上昇軌道へ乗る。眼下にはレヴァンティス艦の巨大な船体が広がり、その周囲に小さな無人偵察機などが待機しているのが見える。

「出た! カイン、速度・高度ともに安定してるわ。さすがだね。」

 アリスの声が誇らしげに響き、カインはスロットルを少し抑えながら旋回した。暗い空に一条の尾光を残して、銀の小手が夜空へ溶け込む。
 ヘルメットのバイザー越しに広がる視界は、漆黒に近い。地上の廃墟には灯りがほとんどなく、遠方にかすかな赤い光がちらつくだけ。そちらが目標の北西方向かもしれない。

「データリンクの座標を確認。……まだ距離があるな。」

「計算上、マッハ1.5で巡航すれば十分間に合うわ。急いでほしい時は言って。無茶な機動をするなら、パイロットスーツの加圧機能も全開にしなきゃね。」

「了解。」

 カインはメインコンソールに視線を落とし、レーダー表示とマップデータを重ね合わせる。まだ敵のシグナルははっきり捉えられていないが、丘陵地帯付近で何かが動いている可能性が高い。王国側の偵察ドローンが断続的に何らかのノイズを拾っているらしく、時折小さな警告表示が出る。

「ところでアーサー卿は……まだこの周辺には来てないのか?」

「艦隊からの情報だと、アーサー卿はすでに先行して出撃したみたい。別ルートで向かっているらしいわ。たぶん、同時到着を狙っているんじゃないかしら。」

「なるほど。――あの人が動くとは、よほど緊迫してるんだろうな。」

 カインは微かに眉をしかめつつも、一抹の頼もしさを感じていた。アーサーの操縦する名機エクスカリバーは、円卓騎士団のシンボルとも言える高性能機であり、王国を支えるリーダーの象徴でもある。その出撃は単なる威厳づけではなく、確かな勝利を手繰り寄せる力があると噂されていた。


 夜風を切り裂きながら数分が経過し、銀の小手は丘陵地帯付近と見られるポイントへ近づいていた。地形は複雑な起伏を持ち、山肌に生い茂る植物はほとんど枯れ果てている。ところどころクレーターのように抉れた部分があり、そこから煙が立ち上っているのが暗闇の中でもはっきり見えた。

「……何か燃えてるか? アリス、あそこを拡大してくれ。」

「わかった。ちょっとカメラの倍率を上げるわね。」

 コクピット正面のスクリーンにズーム映像が映し出される。山肌を抉ったような大きなクレーターの底から、オレンジ色の炎と黒煙が上がっている。どうやら爆発の痕跡であり、そこにいくつかの残骸らしきシルエットが転がっているようだ。しかし周辺に人影はなく、無人機や車両の破片なのか、あるいはThe Orderのものかはまだ判断がつかない。

「ここで何か戦闘があったっぽいな……。上空から一度旋回して確認する。」

 カインは操縦桿を引き、銀の小手を緩やかにバンクさせて丘陵地帯の上を回り込む。レーダーに小さな反応が一つ、二つ、三つ――増え始めている。高低差のある地形に隠れているのか、今まで捕捉できなかったものが浮かび上がってきているかのようだ。

「敵機……? それとも味方機?」

「今のところ、IFF(味方識別信号)は受信していないわ。つまり、少なくとも味方ではない可能性が高い。」

「ってことは、The Orderか……。まずは視認が先だな。」

 ぐるりと谷を一周する形で旋回しながら、カインは高度を少し落とす。山肌から立ち上る煙がかすかに夜風に流され、視界を歪ませる。懐中電灯のような光がチラチラと動いている箇所もあり、そこでは何者かが地上を歩いているか、あるいはドローンが飛び回っているか。とにかく不気味な気配だ。

「――カイン、後方から高速接近するシグナルがあるよ。IFFをキャッチした。アーサー卿の機体かも。」

 アリスの言葉に、カインはレーダーをチェックする。確かに、後方斜め上空から急激に速度を上げながら接近するサインが一つ表示されていた。そこには王国所属機を示すタグが浮かんでいる。機体名は「Excalibur」。やはりアーサーだ。

「この真っ暗闇のなか、ものすごい速さで飛んできてるな……さすがエクスカリバー。」

 やがて通信チャンネルが開き、低く落ち着いた男性の声が流れた。

『シルバーガントレットか? アーサーだ。無事に到着したようだな。』

「はい、今丘陵上空を旋回中です。どうやら下に何か動きがあるみたいですが、現状詳しくは不明です。」

『よし、そっちに合流する。敵がいるなら警戒してくれ。』

「了解しました。」

 通信が途切れると同時に、夜空の一角から銀色に近い白い機影が横合いへ飛び込んできた。機体全面に金属的な光沢を帯びた、名機エクスカリバーだ。王国の伝説を背負ったかのような剣型のビーム砲を機体中央部に搭載している。その姿は神々しくさえ映る。

「カイン、上空四時方向にエクスカリバー確認。編隊に入るわ。」

「助かる。……アーサー卿、どうぞ先導をお願いします。」

 カインは無線で声をかける。エクスカリバーが軽く加速し、銀の小手と並走しながら編隊を組む。二機の姿が暗黒の夜空を横切っていく様は、まさに円卓騎士団の威信を具現化したような光景であった。


 “最初の交戦”はすぐに訪れた。丘陵地帯の奥から、低くうなるようなエネルギー音が響き、地表から曲線を描くビームらしき閃光が放たれたのだ。紫がかった光条が夜空を切り裂き、エクスカリバーの胴体を狙うように飛んでくる。

『来るぞ……回避行動ッ!』

 アーサーの低い警告と同時に、カインは操縦桿を引き、その軌道を逸れるようにローリングをかけた。ビームは銀の小手の翼端付近をかすめるように通過し、夜空の彼方へ消えていく。

「ちっ、いきなりか!」

「やはり、The Order? このビームの波長……普通の人類製兵器とは違うわ。」

 アリスが軽く驚いたように呟く。カインのレーダーには敵性シグナルが複数捕捉され、丘陵の地表近くを低空飛行しているらしき機体がいることが判明した。さらに山の稜線上にも固定砲台のようなものがあるのか、そこからビーム砲撃が連射され始める。

「……ってことは、あれがThe Orderの前哨機か! アーサー卿、どうします?」

『もちろん叩く。まずは山頂付近の火器を制圧しなければ、低空飛行なんてできない。』

「了解です!」

 アーサーのエクスカリバーが一気に加速し、稜線上を目指して上昇していく。カインもそれに続くが、敵の迎撃ビームが容赦なく降り注いでくる。夜闇の中に無数の光条が交錯し、一瞬、紫や赤の残像が閃光のように空を彩る。

「っぐ……当たりそうで怖いな!」

 カインは咄嗟に機体をスライドさせ、左右に蛇行するような機動で回避を試みる。銀の小手の優れた推力とアリスのサポートがあるおかげで、普通のパイロットでは不可能な急な軌道変更を難なくこなせる。それでも一歩間違えればビームに被弾し、機体は大破しかねない緊張感に全身がこわばった。

 ビームが地表に着弾すると、岩を砕き、土砂を爆散させて火花が飛び散る。夜の闇が一瞬、爆炎の照り返しで明るくなる。そこかしこにクレーターが増え、地形が崩れていく凄惨な光景だった。

「アーサー卿、俺は右手から回り込んでみます。固定砲台を叩きたい!」

『わかった。こっちは正面から牽制する。お前は迂回して、真横から奇襲をかけるんだ。』

 カインは急旋回し、稜線を大きく迂回するルートを選ぶ。敵の射線から外れるタイミングを見計らい、一気に高度を落としながら横合いへ潜り込む。そうすれば固定砲台の背後に回り込みやすい。

「アリス、目標の座標……そっちで把握してるか?」

「うん、稜線に三基ほどビーム砲があるみたい。岩の陰に設置されてるわ。でも、波長パターンが人類の技術とは全然違う。例の特殊振動を使ってるのかも……気をつけて。」

「わかった。速攻で潰す。」

 地形を縫うように地表ぎりぎりを飛行し、速度を大きく上げる。操縦桿とスロットルに伝わる振動が徐々に増していき、コクピットシートがカインの体を強くホールドする。目の前に迫る岩壁が夜の中に漆黒の塊として聳え立つが、ぎりぎりのタイミングで機体を上昇させ、稜線へ躍り出た。

「そこか……っ!」

 暗がりの中、確かに敵砲台のシルエットが浮かぶ。奇妙な金属の脚部を地面に突き刺すように固定し、先端から紫のビームを放出している。球状のコアが脈動しているのがかすかに見える。まるで生物めいた嫌悪感を誘うデザインだった。

「――ミサイル、ロックオン。アリス、誘導頼む!」

「任せて。目標補足……発射準備!」

 カインがスイッチを押し込むと、銀の小手の下部ハードポイントから小型ミサイルが次々に射出される。暗い夜空を矢のように走り、敵砲台の背後から高速で突き進む。敵も気づいてビームを振り向けようとするが、その隙はない。
 ミサイルが着弾すると同時に火球が膨れ上がり、閃光が周囲を染める。金属の脚がバラバラに砕け散り、闇の中へ飛んでいく。初の一撃は見事に成功したようだ。

「よし、一基破壊!」

「このまま二基目、三基目も狙って!」

「了解……!」

 カインは機体を半ロールさせ、次の目標へ照準を合わせる。動き出した敵砲台が地面を擦るように回転し、こちらへ向けてビームを放ってくるが、銀の小手の機動力とアリスの予測演算によってほとんど回避可能だ。彼はさらにミサイルを連射し、稜線上の砲台群を片っ端から叩いていく。

 ズガンッ――という爆発音とともに二基目が吹き飛ばされた。地面が大きく揺れ、破片が砂埃を巻き上げる。三基目は耐久力が高いのか、ミサイル直撃にもかかわらずまだ動いているようだが、そこへエクスカリバーのビーム砲が追い打ちをかける。白く強烈な光線が一直線に放たれ、砲台を上下に真っ二つに引き裂いた。

『ナイス連携だ、シルバーガントレット。砲台は一掃した。』

「ありがとうございます、アーサー卿……!」

 カインはホッと息をつく。夜の稜線が爆炎の名残に照らされて、地形が荒々しく掘り返された状態になっている。これで上空から丘陵地帯を俯瞰することが容易になったはずだ。

「次は……地表を這う敵機か?」

「そうみたい。あちこちに複数の小型機がいて、ビームを乱射しているわ。警戒して!」

 アリスの警告に呼応するように、コクピットモニターには新たな赤い点が一斉に表示される。どうやら地表近くをホバリングしながら進軍するThe Orderの飛行兵器――あるいは生体機だろう。人類の常識から逸脱した形状を持つものが多く、機械とも生物とも断定し難い姿で現れると言われている。それこそがThe Orderの不気味さを際立たせる要因の一つでもあった。

「――敵機に接近。距離、2キロ。数は……5、6、いや8機か? 結構いるぞ。」

『よし、俺が正面から引き受ける。カイン、お前は機体後方から回り込んで挟み撃ちにするんだ。』

 アーサーが低い声で指示を出す。エクスカリバーのエンジン音がさらに高鳴り、あの剣型ビーム砲が不気味な光を蓄え始めるのがカインの視界に入った。
 まさに“彼こそ騎士団の象徴”というような動きだ。正面で注意を引きつけ、一撃離脱を繰り返しながら敵隊を乱す。その間、銀の小手が後ろを抑える――こうして連携を取りながら敵を包囲する形を作る。

「アリス、後方から狙う位置取りを頼む。敵の背後を取るぞ。」

「うん、わかったわ。じゃあ左斜め下の谷筋を抜けて、一気に背後へ回り込みましょう。座標送るわね。」

 カインはスロットルを調整し、アリスが示すルートへ突っ込む。夜の闇に紛れるように低空を飛行し、急峻な地形の陰を利用して敵のレーダーや視線から逃れようとする。そっと機体を旋回させると、視界の先には、闇の中で明滅を繰り返す光点がちらついている。アーサーのエクスカリバーが敵の射撃を受け止めているのだろう。時折、派手なビーム衝突による爆発が起こり、稜線上を照らし出す。

『ふんっ……!』

 無線越しにも微かにアーサーの声が聞こえ、エクスカリバーの剣型ビームが宙を切り裂いた。閃光の軌跡が闇夜に白い残像を描き、何機かの敵シグナルが消滅する。やはり強い。円卓の主、アーサーのその技量と機体性能は並ではない――しかし、敵はまだ多いし、正面からだけでは時間がかかるのも事実だ。

 カインは敵の背後へ回り込んだ位置で高度を少し上げ、上空から攻撃態勢に入った。冷たい夜風が機体を揺らすが、彼の両手は操縦桿とスロットルをしっかり握りしめ、狙いを定める。

「今だ……! ミサイルセット、ロックオン!」

 ロックオンマーカーが3機の敵を捕捉する。敵は前方のエクスカリバーに意識が向いているため、後方への警戒が薄いらしい。狙える、と思ったカインは躊躇なくトリガーを引く。
 連続射出された3発の誘導ミサイルが、小さな炎を噴きながら闇を切り裂いていく。気付いた敵が旋回しようとするが、間に合わない。ドン、ドン、ドンと立て続けに爆発が起こり、空中で火花と破片が散る。
 それでも、完全に沈黙したのは2機だけ。もう1機は深刻な損傷を負いながらも、奇妙な羽根のようなパーツを振り回しながら生き延びている。

「まだ動いてる……。アリス、近接攻撃に切り替える。」

「了解。ビームキャノンに切り替えて照準を合わせるね。」

 カインは素早く武器パネルを操作し、機体下部のビームキャノンを起動。淡い光を帯びた砲口が開き、ターゲットを正確に捕捉する。
 一方、ダメージを負った敵機は漆黒の装甲が裂け、内側から紫色の液体のようなものが漏れている。それが生命体の体液なのか、それとも未知のエネルギーなのか。The Orderの実態を確かめるすべもなく、ただ目の前にある脅威として対処するしかない。

「――撃つッ!」

 トリガーを引くと、濃密な光束が一閃し、敵機の胴体を射貫く。パキンという不快な破砕音が通信にも微かに届き、機体がまるで水風船のように破裂して紫色の霧を噴き出す。残骸が飛び散り、夜空に消えていった。

「カイン、もう一機も君の左下に……!」

「くっ、来たか!」

 突如、左下から突き上げるように接近する黒い影。どこに隠れていたのか、四脚のようなパーツを展開したThe Order機が地面すれすれを滑りながら飛翔してきたのだ。コクピットモニターに赤い警告が点灯する間もなく、そいつの巨大な刃のようなアームが襲いかかる。

「間に合うか……っ!」

 カインは瞬間的にスロットルを噴かし、機体を横にスライドさせる。銀の小手の高い応答性が奏功し、かろうじて敵の斬撃を回避した。鋭い金属音が耳元に残響し、もしあと一拍遅れていたら機体の横腹を切り裂かれていたかもしれない。

「キツイ……っ!」

「耐えて、カイン! すぐに反撃体勢に移って!」

 アリスが声を張り上げ、追撃のチャンスを示す。敵が大ぶりにアームを振るったぶん、こちらにも隙が生まれた。カインは操縦桿を思い切り引き、急上昇から反転して機首を敵に向ける。
 数秒にも満たない一瞬の攻防。敵が再びアームを振り回そうとしたところに、カインはビームキャノンを連続発射した。光弾がいくつも軌跡を残し、その黒い躯を貫く。バチバチと火花が走り、敵機はもんどり打つように吹き飛ばされる。

「はぁ、はぁ……っ!」

 カインは思わず荒い呼吸になる。緊張が一気に押し寄せてきて、背中に汗が伝うのを感じた。だが、まだ終わりではない。周囲には複数の反応が残っているし、ビームの光があちこちで炸裂しているのが視野の端に映る。

『シルバーガントレット、後方確認しろ!』

 アーサーの声が急に大きくなった。何か不測の事態か――と振り向こうとする矢先、カインのレーダーが「背後からの高速接近」を示すアラートを鳴らす。視界には写っていないが、どうも先ほどの敵増援かもしれない。

「拙い……っ! アリス、即座に回避ルートを!」

「わかった! でも近い……すごく近いよ!」

 ドクン、と心臓が大きく跳ねるのを感じる。背後から巨大な爪かビームか、いずれにせよ致命の一撃が迫る――そんな予感が走った瞬間、予想外の白い閃光が視界を染めた。
 それはアーサーの機体、エクスカリバーから放たれた剣型ビームだった。暗闇の中からまるで神話の光のような斬撃が一筋伸び、カインの背後にいた敵を完全に焼き切っていく。爆発の衝撃が後ろから伝わってきたが、銀の小手にはわずかな揺れしか及ばない。

『大丈夫か?』

「アーサー卿……ありがとうございます!」

『ふっ……油断するなよ。お前の機体は我々の大切な切り札なのだからな。』

 アーサーの冷静な声とともに、レーダーから敵機のシグナルが次々に消えていく。どうやら彼が正面で多数を引きつけ、そのうちの何機かはカインが奇襲を仕掛け、さらに残った敵をエクスカリバーが仕留めている形だ。結果的には絶妙な連携になっていた。

 やがて爆発やビームの閃光が止み、夜空にただ漂う黒煙だけが残る。地表で転がる残骸が青紫の発光を断続的に放ち、その姿は見るからに不気味なものだった。The Orderの機体は一度破壊されても、奇妙な反応を示すから始末が悪い。
 しかし、ひとまずは敵の先遣隊を制圧したらしく、レーダーは沈黙を取り戻している。

「……終わった、か?」

 カインはコクピットで大きく息を吐き、肩の力を緩めた。戦闘は短時間ながら非常に激しく、全身が強張っていたことに今気づく。ヘルメットの内側には汗がにじみ、パイロットスーツも多少蒸れているように感じられた。

「お疲れさま、カイン。すごかったよ、今の機動……!」

「ありがとな、アリス。お前の演算がなければ、もっと被弾してたかもな。」

 ディスプレイには、機体ダメージは小破程度。どこかに引っかき傷のような跡があるかもしれないが、重大な被害は出ていないようだ。地上の丘陵部には火の手が上がり、敵の残骸がそこかしこに散らばっている。

『よくやった、シルバーガントレット。やはりお前たちは頼りになる。』

 アーサーの機体が上空から緩やかに降下し、カインの隣を飛びつつ通信を入れてくる。夜の闇に溶け込む白銀の機体は、まるで騎士王の剣が空中に顕現したかのような神々しさだ。

「アーサー卿こそ。間一髪助けていただきました……ありがとうございます。」

『俺は当たり前のことをしただけだ。――さて、ここまで来れば残敵はほぼいないはず。だが、この一帯に何らかの前線基地があるかもしれない。さらに調査を継続する価値はあるだろう。』

「隊長にはどう報告します?」

『今の戦闘記録と結果を伝えればいい。おそらくすぐに追加の偵察隊や、あるいは本格的な制圧部隊が派遣されるんじゃないか。とりあえずはお前と俺で周辺を一周して、残りの敵がいないか確認しておこう。』

「了解です!」

 通信が切れ、カインは微かに首を傾げる。アーサー卿は基本的に自信家でありながら、パイロットとしての腕前とリーダーシップは折り紙付きだ。先ほどの斬撃一つを見ても、一瞬の判断力は圧倒的である。自分ももっと鍛錬しなければ――カインはそう思わずにいられなかった。

「ふふ、カイン。あなたも十分すごいと思うわよ?」

 アリスの声がコクピットに響く。その声音はまるで人間の少女のように温かい。まったくもって不思議な存在だ。AIのはずなのに、感情があるかのように振る舞い、まるで生身の女性みたいにカインの頑張りを褒めてくれる。少し照れくさくなったが、彼は素直に言葉を返した。

「ありがとな。まあ、俺はまだまだアーサー卿に遠く及ばないさ。でも……これから頑張れば、いずれは追い付けるかもしれない。お前の力も借りてさ。」

「そういう前向きな気持ち、大好き。」

「調子いいな、ったく……。」

 カインが苦笑する間にも、銀の小手は静かに旋回を開始し、丘陵地帯を高空から見下ろす。地表には数箇所、小さな炎が残っているだけで、敵の動きらしきものは見当たらない。おそらく一通りの掃討が終わったのだろう。


 それから数分間、カインとアーサーは散開しながら周囲を捜索した。敵性シグナルはもう出てこない。やがて隊長モルガンから通信が入り、追加の偵察隊や地上部隊を送り込む手配が進んでいると知らされる。どうやらここは一時的に安全が確保されたようだ。

 丘陵北側の空域へ移動したカインは、エクスカリバーと並行飛行しながら、またもや不気味な廃墟を見下ろす。ここには大きな湖があったとされるが、いまはほとんど干上がり、底に泥が堆積し、毒々しい色に変貌しているという。辺りの空気は淀み、どこからか低い風の呻きのような音さえ聞こえる。

「アーサー卿、これからはどう動きます?」

『隊長が本格的な支援部隊を派遣すると言っていた。お前の艦・レヴァンティスもここに向かうのだろう。しばらくは、このエリアの制圧と調査が我々の任務になる。』

「了解しました。……ただ気になるのは、The Orderがどうしてこんな辺鄙な場所にいるか、ですよね。」

『その通りだ。どこかに隠れた地下施設でもあるのかもしれないな。』

「仮にそうなら、早く見つけて破壊しないと後が面倒だ……。」

 カインは深く息をついて、遠くに見える黒々とした山影を睨む。The Orderは時折、人類に理解不能な行動原理を見せる。その結果、こうして何の価値もなさそうな場所に急襲してくることもある。あるいは何か隠された資源、あるいは謎の研究施設の痕跡を利用している可能性も否定できない。

「まあ、そこは指令部の仕事か。……よし、俺たちは戻ろう。機体も少し休めたい。」

『ああ、そうだな。』

 アーサーのエクスカリバーとシルバーガントレットが再び優雅な旋回をし、王国の空母が待つエリアへ帰還コースを取る。空中に漂う煤と硝煙の臭いがコクピット越しに嗅ぎ取れるような気がして、カインは鼻を鳴らした。
 戦闘という激しい初陣を経て、彼は自身が戦士であることを改めて実感する。同時に、アリスの存在の大きさにも気づかされる。その分析力や機動補佐なしでは、あの場面で生き残るのは困難だっただろう。

「アリス、ありがとうな。お前がいたから、最初の交戦を勝ち抜けたよ。」

「もう……こちらこそ、ありがとう、カイン。あなたの操縦技術のおかげで、私のサポートが最大限活きるんだから。」

「はは……じゃあ、今後も頼むわ、相棒。」

 そう呟くと、アリスがほんの少し照れたように笑う気配がした。全自動AIというにはあまりに人間臭いこのリアクション――しかしカインには不思議と心地よい。共に生きる存在として、彼女はもはや欠かせないパートナーになっているのだ、としみじみ思う。


 夜の闇を抜け、東の空が僅かに白んできた頃、カインとアーサーは無事にレヴァンティス艦へ着艦した。すでに艦は丘陵地帯へ移動しつつあり、甲板上では次々と補給物資が準備され、偵察隊のドローンや地上部隊用の機材が整えられている。まさに慌ただしい作戦の拠点と化していた。

 カインがコクピットから降りると、整備班が走り寄って機体の損傷箇所をチェックし始める。脇腹にかすれ傷のような跡があり、そこで配線か何かが微弱に発光しているようだった。ドック長が苦い表情で唸る。

「ほう……ちょいとやられたか? まあ致命傷じゃないようだが、念入りに修理せんといかん。」

「すまない。どうしても不意打ちを食らいそうになって……。」

「戦闘なんだからしょうがないさ。だが、おまえさんの立ち回りはさすがだな。これだけ激しい乱戦でこの程度の傷なら上等だ。」

 ドック長は軽く顎をしゃくり、作業班に指示を出す。カインは一礼して作業の邪魔にならないよう離れる。すると、アーサーがエクスカリバーの機体から降りてくる姿が視界に入った。甲板クルーが先を争うようにして挨拶しているのが見え、いかに彼が尊敬されているかがよくわかる。

「アーサー卿、先ほどはありがとうございました。もう少しで背後からやられていたところでした。」

「いいや、俺は騎士団の仲間を助けただけだ。お前がいてくれたから正面の敵はだいぶ楽になったよ。」

 アーサーは落ち着いた口調で言う。長身で金髪の彼は、王国の象徴的存在とも言われるにふさわしい気品を漂わせている。決して傲慢さはなく、むしろ誇り高い騎士らしい威厳だ。

「それに、お前の銀の小手も見事なものだ。多彩な装備を使いこなせているし、あの回避機動も凡人にはできない芸当だろうな。」

「……恐縮です。」

「今後の作戦でも、お前とアリスには多くを期待している。The Orderへの干渉が可能だという特異性は、我々王国にとって大きな武器になるはずだ。」

 アーサーの真剣な眼差しに、カインはこくりと頷いた。まだ詳しい背景は語られていないが、どうやら銀の小手とアリスが持つ特殊性は騎士団全体にとって重要らしい。The Orderの特殊装甲や振動障壁に対して、本当にダメージを与えられる数少ない存在――そんな噂もある。

「とにかく、よくやった。これで丘陵地帯は制圧が容易になるだろう。」

 アーサーがそう言い、微笑むと、周囲のクルーも安堵の表情を浮かべていた。深夜の空気が冷え込み、微かな風が吹きつける中、カインは初陣の充実感と疲労感を同時に味わっていた。


 その数時間後、カインは艦内のカフェテリア的スペースで簡易食事を済ませていた。味気ない保存食と合成タンパク質のスープだが、むしろ身体に染み渡るように感じるほど腹が減っていたのだ。
 周囲の仲間たちも同じように作業の合間に休息を取っており、ささやかな会話が飛び交っている。「北西の爆発は何だったのだろう」「The Orderはこれからどう動くのか」「今後の遠征範囲は拡大するらしい」――そんな話題があちこちで囁かれていた。

「ふう……一息つけるな。」

「カイン、疲れた顔してるわよ?」

 アリスの小さなホログラムが、テーブル上の端末に投影される。艦内LANを通じて、彼女はどこからでもこのように姿を見せることが可能だ。まるで隣に座っているかのように話しかけてくるその姿は、騎士団のメンバーから見ても不思議に映るかもしれない。しかし誰も文句を言わない。むしろ、“銀の小手のAI”として大いに頼りにしている。

「たしかにクタクタだ。でも、初陣としては上出来だったんじゃないか?」

「ええ、とてもスムーズだったと思うわ。私も、あなたの操縦テクニックに助けられた場面があったし。」

「お互い様だ。あ、そうだ。」

 カインは食事を中断し、あらためてアリスに視線を向ける。ホログラム越しではあるが、瞳が淡く輝いているように見えるのは気のせいだろうか。

「ありがとう、アリス。俺……正直言えば、不安だったんだ。まさかこんなに激しい戦闘になるとは思わなくて。もしやられたらどうしようって、ちょっとビビってた。」

「……そうだったの? でもあなたは堂々としてたわよ?」

「見せかけだけださ。実際、全身ガチガチになってた。」

「ふふ……でも、だからこそ私はあなたを支えられたのかもしれない。カインが人間らしいから、私も一緒に戦えてるんだと思うわ。」

 不意に、アリスの笑顔がさらに柔らかくなる。AIのはずなのに、こうして会話していると本物の感情を交わしているかのように感じられるから不思議だ。カインの胸には温かいものが広がり、少しだけ息苦しくなる。

「……人間らしい、ね。そうかもしれないな。俺はただ、怖いけど戦わなきゃいけないから……それだけで動いてるよ。」

 カインはテーブルに肘をつき、ぼんやりと天井を見上げる。遠くでスピーカーが何かのアラートを鳴らしている気もするが、今は騎士団の誰かが作業中なのだろう。
 思い返すと、The Orderとの交戦は怖いが、それでも銀の小手に乗って空を飛ぶ瞬間は、自分の存在を最も実感できる時間でもある。そんな不思議な充足感を覚えつつ、目を閉じた。

「これからもよろしく、アリス。」

「ええ、よろしくね、カイン。私たちは二人でひとつ……銀の小手の心臓部分みたいなものだもの。」

 彼女の声が優しく耳をくすぐり、少しだけ笑みがこぼれる。艦内には他の隊員たちの足音や談笑が広がる。みんな、それぞれに傷つきながらも戦い、生き延びるために奮闘している。カインは自分が騎士団の一員として役に立てたことに、ほんの少し誇らしさを感じた。

 夜は明けるが、空が明るくなったところで世界の恐怖が消えるわけではない。むしろ新たな脅威がどこかで蠢いているかもしれない。しかし、彼は今日の初陣を経て、一歩前へ踏み出せたという確信を得た。次なる戦いの火蓋は、もうそう遠くないうちに切って落とされるはずだ。


 いわゆる“戦後処理”の時間が訪れたのは、それから数十分後。偵察ドローンからの情報によると、北西丘陵地帯にはすでに激しい戦闘の爪痕があり、敵機の稼働はゼロに近いらしい。アーサーやモルガンたちがレヴァンティス艦の作戦ルームで協議を重ね、今後の戦線拡大を図るという。カインもその会議に参加を打診されたが、少しの仮眠を取ったほうがいいという配慮で外されることになった。

「はぁ、眠い……。確かに今のうちに休んどけって話だよな。」

「そうね。カインが万全じゃなきゃ、銀の小手だって100%の力を発揮できないし。」

 アリスがカインの端末に表示される。彼は艦内の廊下を歩きながら、居住スペースへ向かっていた。無骨な鉄の壁やパイプが張り巡らされた艦の内部は、どこを歩いても同じような景色ばかりで少々息苦しいが、王国の限られたリソースではこれが精一杯の設計なのだろう。

「そうだな……。じゃあ少し眠ったら、また整備状況とか見に行くよ。アリス、お前もコアシステムをクールダウンしておくといい。」

「うん、わかった。少しだけスリープモードに入るわ。」

「おやすみ、アリス。」

「おやすみ、カイン。いい夢を。」

 小さなホログラムがすっと消えていく。同時に、カインの肩からじわりと力が抜け、意識がぼんやりしていくのを感じる。廊下を抜けると、狭い個人部屋のドアが見えた。そこに入り、ベッドへ倒れ込めば、まどろむまでそう時間はかからないだろう。


 このようにして、カインは初陣を無事に乗り越えた。
 荒廃した地球の夜空を駆け巡る激戦の中で、銀の小手のポテンシャルと、アリスの“AIとは思えない”解析力を存分に発揮し、The Orderの先遣部隊を撃退することに成功したのだ。
 一方で、この初陣から得られた情報や実戦データが、今後の作戦を左右するかもしれない。敵は本当に小規模で終わるのか――それとも、もっと恐ろしい大軍勢が控えているのか。カインはまだ何も知らない。だが、彼には確かな手応えがある。「自分とアリスならやれる」、という確信だ。
 夜が明ければ、また新たな動きが始まる。アーサー率いる円卓騎士団の他の仲間たちも合流し、本格的にThe Orderの拠点を探ることになるだろう。そこで待ち受けるのは、さらなる謎と脅威、そして――銀の小手が解き明かしていく「アリスの真の力」。

 こうして、カインとアリスの物語は、闇夜を乗り越えた最初の一歩を踏み出したのだった。

いいなと思ったら応援しよう!