4.63章 ニトロ頑張る
「これで、3つ目っと!」
そういって、ソラナのスキャニング結果をもとに作成されたマップを片手に大きな丸い球体へとトランザクションを放つニトロ
「しかし、彼女の推測があたっていたら随分大規模なものになるわよね」
そういいながら、カチカチとコントラクトを組んでニトロのトランザクションを通して作用させていくクレセント
「クレセントさん、忙しいところありがとうございます!」
「ほんとよ!こっちはこっちでボットが大量に出たんだから!」
もう大変と、言いたげなテンションで答えるクレセント
「でも、可愛い妹のピンチよ。助けないわけにはいかないじゃない」
「クレセントさん」
「それに、彼の弔いもあるし」
「ええ、許しておけないわ。例え、同期生だとしてもね」
「クレセントさん、」
「まぁ、ニトロちゃんが気に病む必要はないわ」
「彼だって、意地を通したのよ」
「恐らくね」
「逃げれば、逃がしてくれた。ジノはそういう子よ」
「でも、それを自身が倒れるという結果を彼がとったのならば」
「彼にも逃げられない何かがあった。彼はそれを通したということなのよ」
「クレセントさん」
「なんか、湿っぽくなってしまったわね」
「ほら、オペレーションはまだ続いているのよ。あと3つあるのだから、キリキリ動く!」
「悲しむのは、後にしましょ」
「はい!」
高速でGNOタワー内を跳躍するニトロ
クレセントは、ニトロの放ったトランザクションを経由してコントラクトを打ち込んでいく
謎の球体に。
「これで、最後!」
そういって、トランザクションの作用とともに打ち込まれたコントラクトを見守り、彼女は肩で息をする。
「がんばったわね。ニトロちゃん。後は任せなさい」
クレセントが端末を取り出し、コントラクトを起点に6つの球体にハッキングを仕掛ける。
モニターでモニタリングしている球体
そのそれぞれが銀色の光を放っていたが、次第にその光を弱めていくのが目で見てわかった。
「ニトロちゃん、ごめん。ちょっとだけ現場対処よろしく!」
「ふぇ?」
クレセントの声とともに、GNO-タワーの中心部に大きな支援型ボットの様なものがせり上がってきた。
「これは?」
「それが、おそらくGNO-LANDのリソースを制御していた制御装置の中枢よ」
「あなたには、その中枢へとアクセスしてもらうわ」
「アクセスって!?」
「簡単よ。その分厚い装甲があるでしょ?」
「それを破壊して、中にあるコアに接触すれば終わり」
「簡単でしょ」
「簡単って、あれ、頑丈なんてもんじゃないかも」
「そうね。あなたの目測は正しいわ」
「でも、その為にあなたがもっているものがあるわ」
「これが?」
それは、ソラナから渡された一発の銀色の弾丸だった。
もとは、インジェを地面へと縫い付けていた槍だったもの。
インジェの遺体が、ジノのトランザクションにより灰にされたときにソラナがニトロにお願いして回収し、加工したものだった。
(ニトロちゃんもニトロちゃんなら、ソラナちゃんもソラナちゃんね)
(2人して、仕事が早いというか)
(いえ、この場合は、ソラナちゃんね。何であれ、勝利を決定する為には、どんな要素すらも組み込んでいく)
(その貪欲さかしら)
「ニトロちゃんとソラナちゃんの愛の結晶を打ち込めば、なんとかなるわ!」
「愛の結晶って、クレセントさんっ!ソラナちゃんとは、まだ、そんな仲じゃ」
「あら、少し早かったかしら」
「でも、秘密の場所に案内してあげたのでしょ?」
「私達も知らない様な。あなただけの場所」
「なっ、なんでそれを!」
「あら、ほんとにそうだったのね」
「よきかなよきかな」
そういって、ニマニマとモニターの向こうでほほ笑むクレセント
背後から近づいてきたボットを支援機で打ち落としながら、頬に手を当ててニマニマとしていた。
「カマかけたんですね!」
「そうよー、でも、いいわね。秘密の場所、思い出の共有」
うっとりしながら、目を細めるクレセント
「ちょっと!そういうのは、プライバシーの侵害ですよっ!」
「私の知らない間にニトロちゃんは大人になって」
仕舞には、歌い始めるクレセント
「おいおい、そうじゃないだろ。それ、さっさとどうにかしなきゃいけないんだろ」
そういいながら、モニターを覗き込んで、ツッコミを入れるアカッシュ
「アカッシュさん!」
「おう!ニトロ、こいつのことは任せろ。あとでシバいておいてやる。だから、遠慮なく、それを破壊するんだ」
今は、そこが大切だろと、付け加えた。
「はい!」
「アカッシュさん、お任せしました!」
そういって、正面を向き、視界に分厚い装甲を捉える。
「ねぇ、何をお任せされたのかしら?ってちょっと、アカッシュ痛い痛い!」
そんなクレセントの声を無視して、自身の内に意識を向けるニトロ。
手を翳しコントラクトを励起させ、トランザクションを空間に作用させる。
目に見えない力場の展開と共に、周囲の計器が振り切れる。
銀色の弾丸を目に見えない力場で作られた装置に装填するように宙へと指で弾く
弾丸は、空中へと弾かれると同時に固定され彼女のトランザクション発動と共に放たれた。
極限まで加速された弾丸は、装甲へと放たれた。
それは、途中で分解されただの銀色の光へとなり装甲へと突き刺さった。
突き刺さった箇所から、ほのかな灰色の光が漏れる。
光が漏れる面積が次々と増える。
貫かれた一か所を起点に装甲が消滅しているように見えた。
やがて、すべての装甲が粒子へと還ったのか見えなくなり、代わりに灰色の球体が姿を現した。
それこそが、制御装置のコアであることが見て感じ取れた。
「今よ、ニトロちゃん!」
「はい!」
そういうと、勢いよく走りだし、右手のSVMという模様が浮かび上がった手でそれにふれた。