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1.5-49 夢を追って

「それで。貴女は行くと言うのね」

「うん。早く、母さん達の夢を叶えたいから」
そういって、静かに羽を広げるアイラ

「でも、レルムは。上位者を従えての国作りはやめたのでしょ?何をするつもりなのかしら」

素朴な疑問を尋ねる。
アイラが羽をはためかせながら、振り向き答える。

「私の母さん達。沢山悪いことをしたよね」

「ええ、そうね」

「重ねた罪は、消える事は無いわ」

「だからといって、貴女自身のせいではな」

「いいの。だけどね」
「母さん達が積み上げてきた幸せも消えない」

「」

「その幸せが私なのだから、私が幸せになるの!」
「レルムを作るより素敵でしょ?」
そこには、ひまわりの様に満面の。
心より微笑むアイラがいた。

「そうね。貴女ならば、過去に積み重ねられた罪を超える幸せをまわりにも、もたらせるわ」
そんな気がする。
そう付け加えるソラナ。

「それと、これ。餞別ですわ」
そう言って、ソラナがポーチからコサージュを取り出しアイラの髪に結う。
漆黒にも等しい光を吸収する様な宝玉を添えた蒼い花は、彼女の燃え上がる様な紅の髪によく映えた。

「これは?」

「貴女のお母様が身につけていたものをアレンジしたものよ」

「アレンジ?」

「少しボロボロになっていたから、修復ついでにね」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「私からも、ソラナさんにこれを」

「真っ赤なリボン」

それをそっとソラナの髪に結っていく。
「はい!おしまい!」
「旅立つ私の代わりに大切にしてくれたら嬉しいなっ!」

「何言っているのかしら、この子は」
「エブモスにも、あげたら?」

「エブモスさんには、もうあげましたよ」

「そ、そう。わかったわ」
「って、ちょっと、これよく見たら貴女の羽じゃない!」

「はい!」
「だから、私の代わりにと」

「重い!重いですわっ!」

「えぇっ?こんなにも軽いのに?」
自らの羽を掬い上げるように前に差し出す。
丸で絹で出来た帯の様にたなびくそれは、重さを感じさせず揺らめいていた。

「そういう事じゃないのですわっ!」
「自らの身体の一部をプレゼント。なんて、貴女、正気!?」

「正気かどうかで言ったならば、くるっているのかも。少しばかり、ソラナさん達に」
そう言って、ウィンクをする。
長いまつ毛が、上下に合わさる。

「冒険譚、とても良かったわ」
「私も、負けないくらいの体験してきます」
「帰ってきたら、また」

「わかりましたわ」
「その時は、わたくし自ら茶会を主催します」
「だから、一番に聞かせなさい」

「はい!」

———-
「じゃーね!アイラちゃん!」
エブモスが手を振り送り出す。

アイラの帯の様なヒラヒラとした羽が彼女のコントラクトを纏いスタビライザーの様に変形する。

「では、ソラナさん、エブモスさん。また、お会い出来ること、楽しみにしています」

「行ってらっしゃい!」

送り出す声を置き去りに、加速し、その姿は宙へと消えていった。

「さて、帰りますわよ」


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