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1.5-44 再来

「エブモス、やりましたわね!」
賞賛を送りながらも、リックへと合わせた照準は、逸らさない。

「どうしたんだい?ほら、あとは僕を撃ったらチェックだ。やらないのかい?」
武器を手放し、両手を上げながらも、そんなことを聞くリック

「ゼクセルは、いいの?エブモスに完膚なきまでに消されたのよ?」

「反応がある。それにエブモスちゃんの事だ。どこかに飛ばしたのだろう?」
「それより、どうしたんだい?やらないのかい?」

「気が変わりましたわ」
「貴方には、協力して頂きます」
「一連の騒動の一旦を担ったものとして」

「何を協力すると言うんだい」
不思議そうな顔で尋ねるリック
正直、これ以上する事があるとは思えなかった。

ExAは、解体が決定
ゼクセルは、行方不明
トロンは、出資者により殺害
デイジーは、行方不明
トロンとデイジーの娘と名乗ったアイラトリックスは、自分達が始末したのだから。

「さぁ、やりますわよ!全力でサポートしなさい!」
そう言うや、リックに銃弾の雨を浴びせた。

「なっ」
焦るリックの目の前の空間が歪む。
空間から真っ赤なコードが生える。
パリパリと、飴細工の様に周辺の空間が剥がれ落ち真っ赤な頭髪の少女が現れた。
ソラナの銃撃を他所にリックへと手を伸ばす。

リックは、勢い良く身を引き、自然な姿勢で伸ばされた少女の手を躱す。

少女の手が掴んだ場所が燃え上がる。

「燃やし損なったわ」

「貴女!わたくしは、ソラナよ。名を名乗りなさい」
そう言うと、巨大な盾型の銃器を変形させパイルバンカーを形成。
それをもって少女へと接近
コア部分を撃ち抜かんと光輝く鉄心を打ち込む。
踏み込みの勢いにソラナの足元の白い床が砕け散り、破片を巻き上げ煙を生んだ。

煙が晴れると、ピシリと音がした。
硬い何かが砕け散る音
ソラナは、パイルバンカーから手を離し後方へと飛ぶ。
それまでソラナがいた空間を赤いコードの様な翼が薙ぎ払った。

燃え上がる空間
何を燃やしているのか
何も無い空間を永遠と焼き尽くす

「随分とせっかちね!そして油断ならないわ」
手をかざす赤い髪の少女
攻撃を交わした後、空間から銃器を取り出し砲火するソラナ
爆音を上げながら放たれた徹甲弾にも似たそれは、彼女の前で止まるとぐにゃりとひしゃげ爆砕した。

「せっかく初めてお会いしたのだから、お話ししましょ。ソラナさん」
そう言って、その少女は微笑んだ。

(邪気が全く感じられませんわ)
(でも、この予感は、何?)

矛盾する直感がソラナの頭を交錯する。

「私の名前、まだ名乗っていなかったわね」
「アイラトリックスよ。母さん達は、アイラと呼んでくれたわ。貴女達なら、アイラと呼んでくれて構わないわよ」
髪をかき上げながら、ソラナとエブモスを見てそう宣言する。

「アイラ!君は、僕達が消滅させたはず。何を今度は取り込んだんだ!?」
険しい表情をして刀を構えるリック
それを不可視のちからが縛り付け、彼の手から刀を取り上げた。

「黙りなさい!上位者達の犬。貴方には、アイラ呼びは許してないわ!」
アイラが手を強く握りしめると、リックの刀は砕け散った。

「っつ!」
砕け散る破片がリックに突き刺さる。

「貴方も、握りつぶしてあげてもよかったのだけど。リソースの無駄だから今は勘弁してあげる」
「さぁ、貴方がした事をソラナさん達に話しなさい」
にっこりと微笑みを浮かべながらも、語尾を強めた彼女のセリフは、まるでリックに罪の告白を促している様に見えた。

「リック。話してくれないかしら?」
アイコンタクトをとり、話を促すソラナ

「わかったよ。どこから話そうか」
仕方ないと、リックは、疲れた口調で引き受けた。


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