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1.5-36 遮断
思考にモヤがかかったような感じだ。
巨大なロボに乗せられて、モニターが曇っていたらこんな感じなのだろう。
まるで自分の身体ではない何かが、巨大な剣を振って戦っていた。
よく見えないから、わからないが複数の兵士がいる。
彼らに敵意を感じた自分がいた。
敵意を感じるものは、排除しなければならない。
そう、頭の中で思考が形成される。
思考に促される様に巨大なロボを操縦する。
一振りで、複数の兵士が消え去る。
デジタル信号の様に消滅していく。
円盤を巻きつけられて、そこに銃撃を受けた。
相手側の『操作』が上手い。
僅かな痛みのフィードバックがあった。
痛みを頼りに、感覚で割り出した方向に斬撃を放つ。
手ごたえは、無かった。
だが、相手の体力ゲージが削れたのが見てとれた。
効いてる。
ふと、自身の一撃は、重いのだと確信する。
(ならば)
暴風の様に剣を振り回す。
(直接当てる必要なんて、ない)
(擦りさえすれば)
その思考は、概ね正解だった。
目に見えて、標的の動きが鈍っていく。
(あとは)
止めとばかりに放つ一撃
放つ瞬間に、手を激痛が襲う
武器が地面に転がっていた。
(なぜ?)
そう思考する間、標的は急加速する。
加速されたのは、動きだけではなかった。
(弾が、見えない?)
先程まで、剣で弾き落とせていた弾丸が見えないのだ。
素早さだけじゃない。
その弾道も、奇妙で、閃光の様に辛うじて目に映った弾丸も次の瞬間、予想外の角度からあたるのだ。
(なんだ、これは)
痛覚も、倍加されている。
自身の表面で止められていた弾丸が、今は、深く突き刺さっている。
コックピット内を確認する。
再生が間に合っていない。
自身の体力ゲージが、減っていく。
(上手だ)
相手の方が遥かに戦いなれている。
そう認識した。
事実、実践経験の差は雲泥だった。
片や「換装の儀」を使用して、戦闘用に体を作り直した実践経験皆無の御子
片や元軍属、私兵部隊Tron Lynxの隊長
踏んだ場数が違いすぎた。
そんな事を認識してかいないか、ゼクスは、解決策を使う。
手放した剣を拾わず、自らに降り注ぐ銃弾を全て無視して、手を伸ばした。
(つかまえた)
避けようと回避行動をとった標的をまるで蚊を潰す様に手で挟んだ。
ぐしゃりと、標的が潰れる。
圧倒的な身体能力が経験と技術を塗りつぶした瞬間だった。
(どうしようか。これ)
標的だったものは、御子の目からはモザイクの様に消え去った。
残ったのは、赤い煙。
「あぁ、ああ」
そこに、敵意の無い白い影が現れる。
動きは、遅く、どうやら、傷ついているようだ。
———
いくら、無事に逃す為とは言え、こんな事になるとは、彼女は、思わなかった。
いや、覚悟が出来ていなかった。
自分達が護るべき対象を返り血に染めてしまったのだから。
神輿は、神聖なる存在は、真っ白で無ければならない。
だからこそ、自分達の存在意義がある。
あらゆる殲滅対象を処理する事が出来る御子。
わざわざ、そこに騎士が存在する理由。
それは、一重に汚さない為だ。
「私は、正しくわかっていなかったようだ」
身体能力を爆発的に強化し、自身を巨大ロボットに乗っている様に感覚を遮断する保護装置。
そのくらいの感覚だった。
しかし、事実は
「御子様を血に染めてしまった」
そう呟き、倒れる。
それが彼女の最後の言葉だった。
————-
敵意の無い白い影
それは、いくつかのノイズを放った後に消えてしまった。
(なんだったのか、あれは)
そう考えている間にも、自身の周りをセンサーが索敵している。
(なるほど)
敵影は、高速で神殿から退避しているよいだった。
(逃しはしない)
巨大な人影、ゼクスと化したゼクセルは剣を振るい道を作り、追跡を始めた。
自らが倒すべき
敵意のある存在
そう、コアが定義した者達を殲滅するべく。
———-
赤い雨が降り注ぐ
0xLSDの大地へと
地へと到達した雨
それらは、揮発し、霧となり国中を覆う
隅々まで
そして、住人たちの記憶を上書きした。