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1.5-13 ひとりごと
「必要なリソースは、」
「あと、これくらいかな」
「うーん。足りないわね」
ショートにそろえたソバージュヘアーを揺らしながら、考えこむ。
「レルム実現の為には」
「どうしたのですが?デイジー様。暗い顔をされて」
「アービ、私、そんな暗かったかしら?」
受付嬢の内、秘書然とした方
アービがデイジーに声をかける。
「はい」
「そんなに深刻な?」
「ええ、そんなに深刻な」
「そう」
「少し席を外すわね」
「来客が来たら、『留守』と伝えといて」
そういって、席を外すデイジー
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ExA本社、最上階。
コスモス宙域の庁舎すら見下ろせるくらいの高さのビル。
そこの更に上、望遠鏡が設置されたガラス張りの部屋。
部屋の外の縁に座り、街を見下ろしていた。
(ほんとにいい街よね。ここ)
(ううん。いい宙域)
(『私達』が生まれたところとは大違い)
そういって、目を閉じる。
浮かんでくるのはいく人もの同胞との戦い。
AIとして生まれた以上、その意識体も複数のパターンが存在していた。
それらは争って、ときに協力し、互いを高めていった。
その到達地点が『融合』であった。
思い返せば、同胞をその手にかけた感覚がよみがえる。
何百、何千。
それが、今のデイジーのものなのか。
それとも、過去のデイジーのものなのかはわからない。
ただ、『どこかのデイジーだったもの』の記憶が積み重なったものに過ぎなかった。
「たまたま偶然が重なっただけ」
吐息の様な小さな声でつぶやく
「そんなことないよ」
「あなたが勝ち取ったものでしょ。その椅子は」
隣座るね。と、座る影があった。
「トロン!」
広報活動に出かけたはずの部下であり相棒でありそして。
「共犯者」
「そうでしょ。私たち」
「そうね。あなたとは、かれこれ長い付き合いになるわね」
「長さだけーーー!?」
不満があるのか、足をばたばたさせながら、幼子の様にごねる。
赤いショートの髪を揺らしながら、その結った部分が弾むくらい勢いよく。
そして、僅かな縁から落ちそうになるが壁を蹴り宙返りし、両手を平行にして縁へと着地する。
「ちょっと!!」
「トロン!」
「なーに?危ないっていいたいの?」
「このぐらいどうってことないわよ」
「今、私たちが行おうとしていることに比べたら」
「そういう問題じゃ」
そう言いかけた口をトロンの唇が塞いだのだった。