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Symphony No. 9 :EP7-3

エピソード7-3:戦闘の序盤

東の空が薄明るく染まり、大陸中央の広大な平原が徐々にその姿を現す。夜営を終えた大連合軍が陣を敷き、兵士たちは皆、緊張した面持ちで武器を手にしている。鋼鉄兵の黒光りする装甲と、魔術兵が背負う杖や書物が、薄紅の朝焼けに映えて不気味な美しさを醸し出していた。
 一方、数キロ先にはヤーデ伯が率いるエッグ軍の旗がはためき、怪物の群れがうねるように配置されている。風に乗って不気味な唸り声が微かに届き、兵士の背筋を寒くする。ここが――世界の命運を左右する決戦の地なのだ。

  • 中央平野:かつては豊穣な穀倉地帯だったが、いまは荒廃し、焼け焦げた土が広がる。草木は枯れ、そこかしこにクレーター状の窪みが残っていて、先の小競り合いの痕跡を感じさせる。

  • ヤーデ伯軍:高々と掲げられた紋章と、幾重にも連なる怪物の影。周囲には強化された術師たちの姿もちらほら確認でき、まるで紫色の霧を引きずるようにして行軍している。

 ヌヴィエムは馬上で双眼鏡を覗き込みながら、小さく息を吐く。「これが……ヤーデ伯の本軍……想像以上に多いね。怪物の数が……」と背筋を震わせる。ユリウスがギュスターヴの剣を握りしめ、「大丈夫、姉上。怖いけど、僕らには皆の力がある。絶対に負けない……」と声を張る。

 フィリップ3世や王都代表、各国の使節も指揮官テントに集まり、「ここが正念場だ……」と囁きあう。ベルトランの姿は未だなく、どこかで傍観しているのか、それとも……。いずれにせよ、戦闘の序盤がまもなく幕を開けようとしていた。


 大連合軍の指揮官らが声を上げ、部隊を配置していく。今回の作戦は以下の通り:

  1. 中央:鋼鉄兵と魔術兵の混成部隊

    • ギュスターヴの剣を持つユリウスを前線に、鋼鉄兵が防御壁となり、魔術兵が火力支援を行う。ヌヴィエムがリズムを維持し、隊の秩序を保つ。

  2. 左右:槍兵・騎兵・火術師

    • フィリップ3世が左翼を率い、騎兵隊の突撃で相手の脇腹を狙う。右翼には槍兵と火術師が展開し、怪物の突撃に備える。

  3. 後衛:民衆兵と弓隊

    • 民衆兵が遠距離から弓で支援し、必要に応じて補給や救護活動を行う。ヌヴィエムの声によるリズムサイレンが後衛にも届くよう工夫が施されている。

 王都代表が意気込んで言う。「この布陣なら、怪物の大軍が正面から押し寄せても、鋼鉄兵がまず耐え、魔術兵が破壊力を発揮する形を取れる。民衆兵がリズムで弓を合わせてくれれば、射撃も有効だろう……」

 ヌヴィエムは深く頷き、「あたしが先頭付近で声を出す。王都代表やフィリップ3世、各国の将がそれを合図に部隊へ伝えてください……あとは、一人でも多く生き残るために、みんなで気を引き締めましょう」と声を震わせる。伝令が飛び回り、大連合がついに開戦の構えを整える。


 向こう側のヤーデ伯軍も動きを見せ、前衛の怪物が列を成して進みだす。その背後には、ヤーデ伯本人らしき姿が確認できるが、濃い霧のような術障壁に守られているのか、その姿ははっきり見えない。

 突如として、遠くから黒い渦が空に昇り、雷鳴が轟く。エッグの影響か、空気がビリビリと震え、兵士の心を萎えさせるような圧迫感が全軍を覆う。前線に立つ鋼鉄兵の操縦士が「うっ……何だ、頭が痛くなるぞ……」と呻く。エッグの精神汚染が本格的に広域で発動している可能性が高い。

ユリウス「くそ……エッグの力がこんなに広がってるなんて……! 姉上、リズムで兵の混乱を抑えられないかな……?」

ヌヴィエム「試してみる……! みんな、怖いと思うけど、あたしの声を聞いて……落ち着いて……1、2、3……深呼吸……!」

 彼女は大声でカウントを取り、同時にリズムサイレンを作動させる。
甲高い笛のような音が合図となり、兵士たちが「落ち着け……」と自分に言い聞かせるように呼吸を整える。
恐怖が完全に消えるわけではないが、パニックを抑える効果がある程度発揮される。


 空気が張り詰めた瞬間、エッグ軍の前衛怪物が雄叫びを上げ、一気に突進を開始する。重たい足音が地面を揺らし、紫の霧が尾を引いて迫ってくる。戦闘の序盤、まずは怪物の波をどう受け止めるかが勝負だ。

 ヌヴィエムが吼えるように指示する。
「鋼鉄兵、前に……魔術兵、後ろで準備……民衆兵、弓を構えて!」。
ユリウスが最前線を駆け、「僕が斬り込む。皆は後ろからカバーを……!」と剣を掲げる。
 怪物の群れが金切り声を上げ、先頭の巨体が鋼鉄兵へ衝突。金属が軋む音が響き、操縦士が歯を食いしばりながら機体を必死に支える。
「くそっ……やっぱり重い! でも、これに耐えなきゃ……」
 魔術兵が火矢や衝撃波を放ち、怪物の装甲を割ろうとするが、敵の数が多く、すぐに押し返されそうになる。
そこにユリウスが横から切り込み、ギュスターヴの剣で怪物の術的防御を削ぎ、魔術のダメージが通りやすくなる。

操縦士A「助かった……ギュスターヴの剣があると、怪物が弱体化するな……!」

ユリウス「みんな、焦らずリズムを――姉上の声に合わせて動いて……!」

 ヌヴィエムは声を枯らしながら「1、2、3……! いまだ、魔術兵……撃って!」と合図する。
火球や雷撃が一斉に怪物を焼き、悲鳴が上がる。血と炎が夜明け前の平原を彩り、戦闘の幕が本格的に開く。


 中央の鋼鉄兵・魔術兵が激しい交戦を続ける一方、左翼ではフィリップ3世が騎兵隊を率いて機動力を活かし、怪物の横腹を突こうと躍起になっている。だが、ヤーデ伯軍も騎兵隊や術師を配置し、簡単には突破させない構えだ。
 フィリップ3世は馬上から士官へ指示を飛ばす。
「騎兵隊、散開して一度敵を翻弄し、突出した怪物や兵を狙え。密集を避けるんだ……!」。
しかし敵側も戦術を理解しており、火術師が散開する騎兵に炎を放ち、何人かが落馬してしまう。

兵士A(フィリップ側)「殿、火が……馬が焼かれ……!」

フィリップ3世「怯むな! ユリウスたちが中央で押しとどめてくれる間に、こちらは横合いを削るんだ……!」

 彼が槍を掲げて突撃合図を出すと、騎兵たちが一斉に馬腹を叩き、土煙を上げながら敵陣に切り込む。鋼の甲冑と槍がズガンとぶつかる音を響かせ、怪物や敵兵が次々と飛ばされるが、一部の怪物は騎馬の足を引きちぎる勢いで反撃し、悲鳴が上がる。

 血と金属が朝陽を浴びて赤く染まり、白い息が混ざる。フィリップ3世はその光景を目に焼きつけながらも、**“今こそ勝負”**と気合を入れる。「ここで踏みとどまれば、中央が活きる……皆、続け!」


 右翼には槍兵が密集しており、火術師が後衛を務めていた。しかし、敵術師が風術を駆使して槍陣を乱そうとし、怪物が風の刃をまとって突撃してくる。恐怖で足がすくむ槍兵も出始めるが、ヌヴィエムのリズムサイレンが遠くから響き、「1、2、3……防御……!」の合図が入ると、彼らは息を合わせて槍を突き出し、怪物を掬い上げるように迎撃する。

 火術師がそのタイミングで火球を放てば、槍に刺さった怪物が一気に焼け焦げ、悶絶して倒れる。風術師を狙った攻撃もあり、徐々に右翼が優勢を取り戻す。しかし、敵も簡単には崩れず、また新たに強化怪物が投入され、押し合いが続く。

槍兵A「はあ、はあ……まだ数が多い。もう少し火術のカバーを……!」

火術師B「わかってる。でも魔力が尽きる……早くヌヴィエム様かユリウス様がフォローに回ってくれないと……」

 こうして右翼も苦しい戦いが続いているが、陣形はまだ維持できている。ヌヴィエムのリズム指揮が波及しているおかげで、無秩序に崩壊せずに済んでいるのだ。


 一方、中央ではユリウスと鋼鉄兵がまさに激闘を繰り広げている。怪物の主力が次々と突っ込んできて、鋼鉄兵が装甲で耐え、魔術兵が援護射撃を放ち、ユリウスがギュスターヴの剣で術的防御を削る流れを何度も繰り返す。

 だが、敵術師も黙って見てはいない。闇や雷、毒霧など多彩な呪文を振りまき、鋼鉄兵の機構を破壊しようとしてくる。
操縦士が「また毒霧だ……視界が悪い!」と悲鳴を上げ、うまく動けずに背後から怪物の爪を受ける場面も。

 そこでヌヴィエムが前に進み、声によるリズムで毒霧の混乱を抑える形を取り始める。「大丈夫、慌てず……1、2、3……左右に一歩、下がって……!」と指示。兵たちがその通りに動くと、毒霧の範囲から外れ、魔術兵が風術を使って霧を吹き飛ばす。
危機一髪で死を免れるケースが何度も起こる。

操縦士A「ありがとう……! まさか、リズムで毒霧を回避できるなんて……」

ヌヴィエム「気を抜かないで。怪物の波はまだ続くわ……!」

 連合軍が踏み止まり、怪物を殺し、術師を追い返す。そのたびに地面が震え、血と泥が混じって足場が不安定になる。
だが、ユリウスの剣は光を失わず、鋼鉄兵と魔術兵が連携を続ける限り、中央は崩れない。


 激戦がしばらく続くうち、ヤーデ伯軍の後方から数名の精鋭術師らしき存在が姿を現す。
全身に奇怪な文様を纏い、紫と黒の風をまとっている。どうやらエッグの力を大きく取り込んだ者たちらしく、ヤーデ伯の意志で動く特別部隊という噂があった連中だ。
 彼らは一斉に呪文を唱え始め、大気を裂く衝撃波を発生させる。鋼鉄兵がその震動に晒され、装甲が共鳴して耳をつんざくようなノイズを発する。
操縦席が揺れ、「うわっ……耳が割れる!」と兵士が叫ぶ。
 魔術兵が火術や氷術で迎撃を試みるが、相手も強烈な結界を展開し、一筋縄では崩れない。ユリウスが剣を構えて近づこうとするが、衝撃波で足元が揺れ、簡単に突撃できない。
 **“このままでは中央が崩れる”**という危機感が走ったそのとき、フィリップ3世が左翼をほぼ制圧した騎兵隊を引き連れ、中央へ合流してくる。「皆、耐えてくれ……ここは私が騎兵の機動力で精鋭術師を抑える!」と叫び、騎兵が弧を描くように突撃する。

フィリップ3世「ヤーデ伯の精鋭術師が相手でも、我らが数で翻弄できれば……!」

 騎兵が術師の周囲を旋回し、槍や弓で遠巻きに攻撃する。
術師たちが防御結界を集中させ、その隙にユリウスが剣を掲げて駆け込み、ギュスターヴの力で結界を割ろうと試みる。
連携が成って少しずつ術師を追い詰めるが、敵の抵抗も激しく、容易ではない。


 そんな中、ヌヴィエムは戦場全体を見渡し、左右前後で火柱や悲鳴が渦巻くのを感じ取る。右翼の槍兵が怪物の増援に苦戦している報告が入り、後衛の民衆兵が毒矢を受けて混乱しているとも伝わる。
 しかし中央ではユリウスが精鋭術師と激突中で、ここを離れるとリズム指揮が途切れ、崩壊しかねない。
どこへ行くべきか――ヌヴィエムの頭には迷いが走る。
 そこにエレノアが駆け寄り、「姉さん、右翼が危ない。あなたが行ってリズムで支えてくれれば、槍兵が立ち直るかもしれないわ。
ここはユリウスとフィリップ3世がいるし……どうする?」と尋ねる。
 ヌヴィエムは決断し、「わかった……ユリウスを信じて、あたしは右翼を回る。民衆兵が崩れたら、全体が巻き込まれるかもしれない。そこはリズムが必要……」と回答。
戦場を駆ける覚悟を固める。

エレノア「じゃあ私が中央でユリウスをサポートする。あなたは必ず帰ってきて。
戦闘はまだ序盤……この先、何が起こるかわからないわ。」

 ヌヴィエムは馬に鞭を入れ、右翼を目指して地面を蹴り飛ばす。
砂煙が舞い上がり、背中でリズムサイレンの低い音が響いていた。


 右翼へ到着すると、そこは怪物の増援に加えて、ヤーデ伯の弓術師が毒矢を放っており、槍兵が瓦解寸前になっていた。
火術師も魔力切れを起こす者が増え、一部が崩れかけて民衆兵と入り乱れる形だ。
混沌とした惨状が広がっている。
 ヌヴィエムは咄嗟に声を張り上げ、「落ち着いて、足を止めないで……1、2、3……槍を出して……!」と指示を送り、リズムサイレンの合図で位置を再調整させる。
槍兵が真ん中に復帰し、火術師が後方へ下がり、民衆兵が横から矢を撃つ形を作る。
 敵の毒矢が再び飛来し、ヌヴィエムが「しゃがんで! 1、2……」と合図した瞬間、兵たちが身を伏せ、矢が頭上をかすめる形で無駄になる。
見事なタイミングに兵士が「すごい、今の合図で回避できた……!」と声を上げる。

ヌヴィエム「火術師、あたしがリズムを刻むから、矢が飛んでくる瞬間に一斉射を。そこで敵の弓術師を狙って……!」

火術師A「わ、わかった! リズムに乗せて……燃え盛る火矢を放ってやる……!」

 こうして、ヌヴィエムの音術指揮が右翼でも功を奏し、毒矢に悩まされていた部隊が反撃のリズムを得る。
火術師が大規模な火矢を空に放ち、敵の弓術師たちを灼熱に巻き込む。槍兵も怪物を押し返す形で少しずつ前へ進み、陣形を取り戻していく。


 戦場全体が泥沼化する中、ヤーデ伯軍の本陣が妙な動きを見せる。遠方で深紫の閃光がいくつも放たれ、巨大な魔力のうねりが感じられる。
エッグの力がここでさらに強化されるのかもしれない。

 王都代表の部隊が中央後方でそれを確認し、警鐘を鳴らす。「何か嫌な感じだ……この光は、もっと強力な怪物や術師を呼び出す儀式ではないのか?」と焦りをにじませる。

 ヌヴィエムも遠目にそれを見て、「やばい……あれが完成したら、中央が持たないかも……。今のうちにヤーデ伯本隊を突き崩す必要がある」と悟るが、まだ左右・中央ともに戦闘の序盤で押し引きが激しく、直接ヤーデ伯本隊まで届かない。

 そんな中、ユリウスが敵精鋭術師を何とか撃破したという報告が入り、**「中央が前進可能」**と口々に叫ぶ声が広がる。まさに戦場が大きく動こうとする前触れだった。


 右翼で民衆兵を立て直したヌヴィエムに、新たな報せが飛び込む。「ユリウス殿が中央で精鋭術師を倒したが、エッグ本隊の力が増してるようで、中央はこれからさらに激戦になる見込み……」という内容だ。

 ヌヴィエムは咄嗟に考える――「右翼はもう安定してきた。そろそろ中央に戻ってユリウスと連携するべきか。それとも、このまま右翼で支援を続けるべきか……」と。

 一瞬逡巡するが、右翼の指揮官が「こちらはもう大丈夫だ。あなたがいなくても持ちこたえられます。どうかユリウス殿と合流して、エッグ本隊へ道を開いてください!」と促す。

 ヌヴィエムは決意を固め、「わかった……そちらを頼む。敵本隊を崩せば、全体が楽になるはず……!」と馬を返す。
民衆兵が「ヌヴィエム様、気をつけて!」と手を振る。彼女も微笑み返し、再び中央へ疾走する。


 中央へ戻る途中、ヌヴィエムは凄まじい光景を目にする。
ヤーデ伯の術師団が毒霧や闇の刃、雷の衝撃などを連発し、鋼鉄兵や魔術兵を苦しめている。

装甲が砕け、火術師が魔力消耗で倒れる姿が散見され、悲鳴が絶えない。
 その一角で、ユリウスがギュスターヴの剣を振るい、何とか術師の結界を割っているが、怪物の波が継続して押し寄せてくるため、持久戦になっているようだ。「はあっ、はあっ……」というユリウスの息遣いが荒く響き、血糊で剣が鈍く光る。

 ヌヴィエムが「ユリウス!」と叫びながら馬を駆け下り、前線に飛び込む。ユリウスが顔を上げて安堵の表情を見せる。
「姉上、来てくれたか……!」と。
周囲の兵が「ヌヴィエム様だ……」と嬉しそうに声を上げる。

ユリウス「中央がなかなか崩せない……術師が多すぎて、ギュスターヴの剣で全員はカバーしきれない。
姉上がリズムで兵を動かしてくれれば、もう少しスムーズに前進できそうなんだけど……」

 ヌヴィエムは頷き、「わかった。じゃああたしが音頭をとるから、一気に術師を倒して怪物を崩すのよ!」と即座に策を練る。
ここが勝負――そう直感している。


 ヌヴィエムは大きく息を吸い込み、声を張り上げる。
「皆、リズムサイレンに合わせて……1、2、3……前へ進んで、魔術兵は詠唱を合わせて! 鋼鉄兵は少し後ろで防御を固めて……!」

 サイレンが高い音を鳴らし、兵士たちが呼吸を揃えて動き出す。
魔術兵が一斉に呪文を詠唱し、火や雷、氷が複合した攻撃を術師団へ放つ。敵術師が結界を張るが、ユリウスがギュスターヴの剣で結界を斬り裂き、さらにフィリップ3世の騎兵隊が横合いから突っ込んで術師の体制を崩す。

 連合側の攻撃が一気に通り始め、術師たちが悲鳴を上げて血飛沫を散らす。怪物も結界が崩れた途端、魔術兵の連撃に焼かれ、鋼鉄兵が体当たりして押し倒す。まさに怒涛の連携だ。

術師(敵)A「くっ……こんな短時間で、これほどの連携を……!」

ヌヴィエム「今がチャンス……一気に押し返すわよ!」

 戦線の中央部が崩れ、ヤーデ伯軍の怪物が退き始める。
大連合軍が勢いづいて前へ進む姿は、戦闘の序盤とは思えないほど活気に満ちているが、戦場の広範囲には未だ激しい戦いが続く。
どこを突破するか――次なる決断が迫っていた。


 こうして、大連合軍はヤーデ伯軍の最初の攻勢を耐え、逆に中央部分を突き崩す形で優位を得たかのように見える。
しかし、戦いはまだ序盤に過ぎない。空には依然として紫の霧が漂い、ヤーデ伯の本拠地から放たれる深黒の術式が脈動している。

 ヌヴィエムとユリウスが仲間たちの無事を確認していると、遠方で大きな爆発が起こり、怪物の新たな部隊が投入された気配が伝わる。
「まだ増援が来るの……!?」と兵士たちが絶望の声を上げるが、ヌヴィエムが必死に声を上げて奮い立たせる。
「落ち着いて……みんな、あたしたちの力を信じて。まだ終わってない!」
 まさに**“決戦前夜”が終わり、今こそ本格的な死闘**が幕を上げた瞬間だった。
戦闘の序盤にして、これほどの犠牲と血が流れる戦い――だが、エッグ軍との最終決戦はまだまだ深淵を抱え、先は見えない。
ベルトランの動向やエッグの完全覚醒がどのように絡むのか、物語はいよいよクライマックスへ加速する。

 中央平原で火と血が交錯し、鋼鉄兵と魔術兵の連携が勇敢に怪物を撃退し、ヌヴィエムとユリウスがギュスターヴの剣とリズム指揮を駆使して激しい戦場を駆け回る。
一方で、ヤーデ伯軍の本格的な攻勢はまだまだ容赦ない。次なる局面では、戦闘がさらに深まり、エッグの恐るべき力やベルトランの行方が大きな鍵となるだろう。

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