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FFT_律する者たちの剣_EP:7-3

EP7-3:ヴォルマルフの策謀

イヴァリースの空はどこか淀んだ鉛色を帯び、時折吹きつける風が乾いた砂埃を巻き上げていた。遠くでは低く雷鳴が響き、まるで大嵐の前触れのような重苦しい気配が大地を覆い尽くそうとしている。
その風の中を、ミルウーダとラムザ、そしてモーグリ型ロボットのウィーグラフAIが立ち止まっていた。背後には遺跡の外壁がそびえ、荒れ果てた石の階段が眼下へ続いている。風に煽られてマントや髪がはためき、どこか険しい空気が漂う。

――まもなく、世界が大きく変わるかもしれない。
それを示すかのように、ラボから駆けてきたセラフィーナが一同のもとに急ぎ足で現れ、真剣な面持ちで告げる。

「今のままでは、教会がゾディアークを目覚めさせてしまいます。重大な資料を解析した結果、彼らの“最終目的”が見えてきました。」

その言葉は、ミルウーダたちの背筋を凍らせるほどの重みを帯びていた。ゾディアーク――かつて神に反逆したとされる最上位のルカヴィ。その存在が復活すれば、イヴァリースを包む戦乱など比較にならない破壊や絶望をもたらすだろうと言われている。


再び一同は遺跡のラボへ戻り、薄暗いホール中央のコンソールでセラフィーナの報告を聞く。
巨大なモニターには教会の極秘ファイルが投影され、そこに恐ろしい計画の断片がはっきりと記されていた。キーワードは**“ゾディアーク召喚”**。
ルカヴィたちの主とも言われる存在――もし完全に復活すれば、世界が焼け払われても不思議ではない。

「解析した結果、教会はゴルターナ公=キュクレインなど複数のルカヴィを意図的に擁立・暴走させ、その混乱で民衆を恐怖に陥れると同時に、“救いの神”としてゾディアークを迎え入れようとしている可能性が高いです。」

「……なるほどな。人々が絶望の底にあるとき、教会が“神の奇跡”を起こせば、人は盲信して服従する。そこにゾディアークが君臨すれば、イヴァリース全土が事実上奴らの手中に……。ヴォルマルフめ、やりたい放題だな。」

ミルウーダは拳を握り締め、「許せない……。人々の命をルカヴィに喰わせておいて、最終的にはゾディアークで世界を支配するなんて……」と怒りに声を震わせる。革命家として、こうした“民衆の利用”には強い憤りを感じるのだ。
ラムザは剣を抱えるようにしながら下を向き、小さな声で「僕たちが止めなきゃ……」と呟く。先日、アルテマの制御訓練で一歩前進したとはいえ、ゾディアークという絶対的な脅威が相手では心が揺らがないわけがない。


コンソールのホログラムにいくつかの地点がマッピングされる。聖石を中心にした魔法陣の配置や、各ルカヴィが封印を解かれる手順、そして“神殿”と呼ばれる特定の遺跡を舞台にゾディアーク降臨の儀式が行われる見込み――など、断片的ながら教会の本拠地に近い場所が浮かび上がる。

「ゾディアークを召喚するには、複数の聖石を同時に活性化し、その波長を重ねる必要があります。ルカヴィがそれぞれ聖石を所持し、最終的に一点に集まる計画があるようです。」

「つまり、ゴルターナ公のキュクレイン化もその一部……ルカヴィを増やして戦乱を拡大させ、最終的にゾディアークを呼び寄せる算段なのね。」

「ルカヴィを倒すだけでは、教会の計画を阻止できないのか……聖石を無力化しないと、結局ゾディアークが降臨してしまう……」

ここで、ウィーグラフAIが短く舌打ちするようにノイズを響かせながら、通信で声を上げる。

「……奴らが“カウントダウン”しているのは間違いない。複数のルカヴィが既に動いているとなれば、時間はそう多くはない。ゴルターナ公を封じて喜んでいる暇はなさそうだな。」


この情報を受け、ミルウーダとラムザは改めて共闘を誓う。これまでもゴルターナ公=キュクレインを倒す(もしくは無力化する)ために協力してきたが、今度はイヴァリース全体を救うための大きな戦いになる。

「……血を流さない革命、なんて言ってる場合じゃないかもしれない。けど、私は……諦めたくない。もしゾディアークが復活すれば、世界は血に染まるだけじゃなく、すべてを失う。だから、その前に私たちが封じる方法を探す。」

「僕も一緒だよ。アルテマの剣を完成させて、ゾディアークを止める。それこそ、僕らが今できる最大限の答えだと思う……」

二人がうなずき合うと、ウィーグラフAIが冷静な声で結論づける。「教会と正面衝突になるな……いいじゃないか。革命家の妹と、ベオルブの若者が共闘し、ゾディアーク召喚を阻む――まさに大きなクライマックスだ。」


まさにそのとき、遺跡内部に新手の侵入を示すアラートが鳴り響く。夜明け前にも関わらず、教会サイドが大規模な刺客を送り込んだらしい。先述の情報盗難(ハッキング)を逆手に取り、この遺跡そのものを破壊しようとしている可能性がある。
廊下の端末が激しく点滅し、セラフィーナが声を上げる。

「大勢の武装兵が……以前とは比べものにならない数です。魔法使いや聖騎士のような者までいます。遺跡の下層部からも侵入されている……!」

「くっ……下層の通路はずっと閉鎖してたはずじゃ……まさか、奴らがルカヴィの力を使って強引に突破したのか?」

「だろうな。奴らはもう形振り構わないんだ。俺たちがゾディアーク召喚阻止の情報を掴んだと知って、消しに来たに違いない。すぐに迎撃しろ……!」

ここで大きな戦闘シーンが始まる。今度は、教会側が本気で遺跡を攻略しに来ており、かなりの数の敵が一斉に押し寄せる。


先頭には黒いローブの魔法使い数名が魔法陣を展開し、聖騎士が盾を構えて突破口を開こうとする。

ミルウーダが魔銃を構えつつ、チャフグレネードを放り投げて相手の魔法を阻害。ラムザが剣と魔法を併用して前線を抑え、ウィーグラフAIが端末から戦術支援する。

下層回廊でも敵兵が遺跡の自動砲台やトラップを強行突破し、ミルウーダとウィーグラフAIが急ぎ防衛システムを遠隔操作して応対。

エネルギー光線が廊下を走り、爆音と閃光が続く。積年の瓦礫が崩れ落ち、地響きが起きる。

聖騎士の一人が「ヴォルマルフ様の命により、ここに潜む異端を掃討せよ……!」と叫び、神聖力の混じった斬撃を振るう。ラムザが辛うじて剣を受け止めるが衝撃がすさまじく、床にヒビが走る。

ミルウーダは背後から魔銃射撃を加え、チャフとスタングレネードを連携させて敵の詠唱を妨害する。

しかし敵も火炎魔法や稲妻の槍を放ち、遺跡内部がまるで戦場のように爆発音と閃光が続く。

大規模な衝撃でラボの天井がひび割れ、コンクリートや石材が落下し始める。システムの一部がショートし、火花が飛び散る。

セラフィーナが「制御装置が破損すれば、遺跡全体が崩れ落ちます……皆さま、急いでください!」と叫ぶ。


混戦の中、敵の数が多く、追いつめられるミルウーダたち。そこでラムザが苦渋の決断をする。まだ完成していないが、試作のアルテマ剣制御を発動し、一気に敵の猛攻をしのぐしかないと考えたのだ。

ラムザが青白い光を放つ剣を握り、再び魔力を注ぎ込む。敵兵が一斉に斬りかかるが、彼は一瞬で波動を放ち、数メートル先の敵を吹き飛ばす。

しかし、力が不安定で、味方に被害が出る恐れもある。そこをミルウーダがチャフグレネードでフォローし、アグリアスが盾でラムザの後方を守る。

「壊れるかもしれない……でも、ここで使わなきゃ、皆が死ぬかもしれない……破壊ではなく、みんなを守るために……!」

剣先から神秘的な光が奔流のように迸り、周囲の敵を一掃する。轟音と振動が走り、聖騎士や術者たちは呆気なく弾き飛ばされる。

やがて、敵は散り散りに撤退し、危機はひとまず回避。しかし、ラムザの剣はまたしても亀裂が入り、一部が砕けてしまう。肩で息をする彼の表情には安堵と共に苦渋が混じっている。


数十分に及ぶ激戦を終え、教会の刺客は退却。ラボ内部は半壊状態で天井の一部が崩落しているが、セラフィーナやウィーグラフAIがギリギリで制御装置を守ったため、遺跡全体の崩壊は免れる。

ミルウーダは傷つきながらも、捕虜になった数名の教会兵を見下ろし、「私たちは敵を殺さない……あなたたちは、ゾディアークの召喚で何が起こるか本当にわかってるの?」と問いかける。

兵士たちは沈黙したままだが、一部は動揺を隠せない。もしかすると教会の闇を深く知らない者も混じっているのだろう。ここから“情報を伝えて目を覚まさせる”ミルウーダ流の革命が垣間見える。

「誰もが教会に従えば救われるわけじゃない……もしゾディアークが目覚めれば、本当に世界は滅びるかもしれないのに……。」

その言葉を聞いて、捕虜の一人が言葉少なに震える。「……ヴォルマルフ様が神を降臨させて、平民を救うと……聞いていた……まさか……」などと呟き、混乱する様子を見せる。


混乱する捕虜の前で、セラフィーナは遺跡の端末を操作し、さらに深い古代文献を表示。

そこにはゾディアークが古代の反逆神だと記述され、その召喚が世界の破滅をもたらすという確かな記録がある。

淡々と説明するセラフィーナの声がラボに木霊する。

「ゾディアークは本来、神への反逆者とされ、ルカヴィの頂点に立つ存在。彼が復活すれば、世界を覆すほどの力を行使する可能性が高い。少なくとも、救いの神ではありません。」

捕虜の中には動揺を隠せず「そんな馬鹿な……教会は人を導いてくれるはずなのに」と呟いて崩れ落ちる者も。これこそが教会の嘘と闇であると突きつけられ、衝撃を受けているのだ。
ミルウーダとラムザがそれを見守り、「少しは真実を知って考えてくれ……」と心中で思う。殺して黙らせるのではなく、“伝える”ことこそが、彼らの革命の在り方だ。


一方、次にどう行動するかが大きな議題となる。ゴルターナ公=キュクレインを止めるには早急に城へ向かわねばならないが、教会が同時にゾディアーク召喚を進めるなら、そちらにも時間は残されていない。**“カウントダウン”**が始まっているのだ。
ミルウーダは壁の地図を指し示し、厳しい表情で告げる。

「教会の最終目的が“ゾディアーク召喚”だとわかった以上、私たちが迷っている暇はないよ。キュクレインの討伐と同時に、ヴォルマルフの本拠地を叩きたい。けど、戦力が足りない……。」

ラムザも苦悩の色を浮かべ、「僕はアルテマの剣の完成が間に合うかどうかで行動を決めたいけど……正直、完成する前に世界が滅びかねない……」と唇を噛む。
そこで、ウィーグラフAIが作戦を一気に提示する。

  1. **“ミルウーダと一部仲間”**がゴルターナ公の居城へ向かい、ルカヴィ化を阻止する。

  2. **“ラムザとアグリアス”**はアルテマの剣の完成を急ぎつつ、教会本拠への対策を進める。もし間に合えば、教会に攻め込むか、またはゴルターナ公の居城で合流する。

  3. ウィーグラフAIは、遺跡から情報支援と魔力制御の解析を継続。可能なら別ルートでヴォルマルフの本拠地へのハッキングを試み、召喚儀式の場所を突き止める。

これらを同時に進めなければ、ゾディアークが本当に降臨してしまう――時間との戦いだ。


かつては血塗られた革命家だったが、今は人を殺さずに世界を変えようと誓っている。教会と正面衝突することには恐れもあるが、「ゾディアークで世界が滅ぶよりはマシ」と考え、意志を固める。
「私は革命を成し遂げるためなら、何でもする。だけど、もう無意味な殺戮はしたくない……ゴルターナ公を封じ、教会の嘘を暴く。それが私の、兄さんとの約束……」

アルテマの剣が未完成である不安を抱えながらも、ゾディアーク召喚を阻止しないとイヴァリースが滅びると知り、焦りや苛立ちが湧く。
「僕が急がなきゃ……。だけど、アルテマを乱暴に使えば破壊しか生まない。どうしたらいいんだ……アグリアス……皆……」

自身がルカヴィに溺れた過去を思い出し、“ゾディアークなんぞ蘇れば、世界は闇に沈む”と確信している。
「今の俺がいるのは、妹やラムザのおかげだ。ゾディアークなんて許してたまるか……世界を地獄に落とす権利は、教会にはない……」

ラムザを支える立場。「あなたならできる、私がそう信じている」と、一貫して彼の背を押す。だが内心では“もしアルテマが暴走したら、私が命を懸けて止める”くらいの決意を持っているかもしれない。


こうして、**“ゾディアーク召喚阻止作戦”**という決定的な目標が明確になり、教会と正面対決する流れが避けられなくなる。失敗すれば世界が終わるかもしれない。だが成功すれば、ルカヴィと教会の闇を同時に打ち砕く革命的な勝利になるだろう。

最後の情景描写として、遺跡のラボから外を見渡すシーンを挿入する。荒れ狂う風と黒い雲が広がり、その奥には遠くゴルターナ公の城、さらにその先にグレバドス教会の大聖堂の尖塔がうっすら見える――二つの脅威が同時に迫りつつあるのだ。

セラフィーナが小さな声で告げる。

「もしゾディアークが本当に目覚めたら、イヴァリースの大半が失われるかもしれません。――あとどれほどの猶予があるのか、私にも断定できません。」

周囲は息をのむように静まり返る。

ラムザは震える拳を握りしめ、「やるしかないんだ……僕らがこの大地を守る。

アルテマの剣を完成させて……世界を、仲間を失いたくないから……」と呟く。

ミルウーダやウィーグラフAIも、同じ思いで頷いた。

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